不思議な玉手箱Ⅱルワンダ編・その10  by もりぞのとしこ

2月17日
ルワンダ滞在10日目となった。旅行も最終ステージだ。
友人夫妻とともに、ニュングウェ・フォレスト国立公園(Nyungwe Forest National Park)への長
いドライブに出発。友人の運転。

ニュングウェ・フォレスト国立公園は2004年に国立公園となる。
熱帯雨林、竹林、草原、沼地、ボグ(泥炭地)の起伏にとんだ地形、その面積は1000平方キロ
メートルに及び、高度は1600メートルから2950メートル。
キガリより250キロ南西に位置する。南に下ればブルンジだ。

この熱帯雨林の歴史は氷河期後期までさかのぼるが、ガイドの話では2000年くらい前から森
の形態が崩れ始めている。それは人が行う農業のためだ。
植生が豊かで、樹木は200種以上、100種以上の植物が自生している。代表的なものではジャ
イアント・ロベリア(ロベリアの原種)や野生のランなど。霊長類はチンパンジーやアンゴラ・コロバ
スなど13種みられる。鳥類は300種、そのうち25種はこの森だけの固有種である。
2006年、イギリスの探検隊がこの森の北側、標高2950メートルのビググ山にナイル川のもっと
も遠い源流があるのを発見した。(かつては別の場所だと思われていた。)ビググ山はニュング
ウェ公園で一番高い山である。
その頂きには
これらの山々の西側に流れる水流はコンゴ川に流れ
東側に流れる水流はナイル川に流れる 
という立札が立っている。もちろん私はその源流をこの目で確かめてはいないが。
ニュングウェの雨林が、ルワンダの70%の水量を供給しているという。

ニュングウェに向かう道路は幹線道路である。カーブの多い道だが、ここも他と同様、中国の援
助により殆ど舗装が完成している。まだ未舗装の部分では、中国人が操る大型のブルドーザー
が忙しそうに動いていた。
さらに進むにつれて、目の前に次々と現れる丘全体が茶畑である。青々とした新芽が、きれい
に刈り込まれている。

夕方に近くなって、やっとニュングウェ熱帯雨林国立公園の入口に到着。公園内を走ること
30分ほどすると、広大なギサクラ茶園がある。茶園では20~30人の労働者が、その日に収穫
した茶葉をまとめて布袋に詰め、大きな束にしたものをトラックに積み込んでいるところだった。

ギサクラ茶園で働く人々


茶園のはずれにあるホテルが、今日と明日の宿泊場所である。このホテルはアラブの資本が
入っているのだそうだ。ゴージャスであるだけではなく、徹底的に洗練されている。熱帯雨林の
山々に囲まれた茶畑の中に、赤い屋根をした10棟足らずの宿泊エリアが点在している。
私たちのロッジに入ると、バス、トイレが左手に、数段下がったところにはストーブのあるリビン
グルームがあり、ゆったりしたソファ、アースカラーのシャギーのカーペット、磨き上げられた鏡。
大きなガラスの扉を開けるとベランダである。椅子とテーブルを配した広いベランダのすぐ向こう
は、苔むした木々に熱帯性の蔓が絡み合う深い森だ。
夜のとばりが下りると、真っ暗な森に雨がしとしと降りだした。雨が木々の葉にあたる乾いた音
がパリパリと聞こえ、あわてるサルたちのキーッ、キーッと鳴き騒ぐ声が甲高く響き渡る。
熱帯雨林といえども、標高があるために雨が降るとかなり肌寒い。しかも雨はしょっちゅう降る
ようだ。厚いセーターを着込んで夕食に行く。レストランは茶畑の中の細い小道を歩いて2分ほ
どのところ。
中では大きな暖炉が紅々と炎をあげ、ホテルの客はそれぞれが歓談しながらゆったりと食事を
楽しんでいた。
生ハム、チーズ、そしてサラダ、ラムチョップ、ポテトとカリフラワー添え、オニオンスープ、パン。
デザートにはコーヒーとフルーツカクテルを頼んだ。
ここでも友人持参のワインを開けてもらう。
茶畑の中を歩いて星を見ながら部屋に帰る。さっきの小雨は止んで、天の川がはっきりと見え
る。今更ながら、空にこんなにたくさんの星があるのかと思う。

2月18日
午前中、手始めに身近なトレッキングからということで、近場の霊長類の観察に出かける。友
人の手配のとおり、時間ちょうどにホテルのロビーでガイドのクレバーさんが待っていてくれた。
物静かな人で、こちらから何かを聞かない限り、静かに相手の話を聞いているといったタイプの
人だ。

車で公園オフィスに行き、雨林への入園許可を取った。いよいよギサクラ・アイソレイテッド・フォ
レスト(Gisakura Isolated Forest)へのトレッキングを開始する。
ぬかるみを避けながら森へ入る。

リュック、アノラック、スティックに登山靴、そしてカメラ、と用意は万端。鳥や植物の説明をクレ
バーさんから聞きながら20分ほど歩くと、コロバス・モンキーが数匹、木の枝でじっとしているの
が見えた。雨上がりの朝食後に、のんびりしているところらしい。太く長いしっぽを枝から垂らし
て、眠ったり、ノミ取りしたり。動きがないのでしばらく望遠鏡で観察した。望遠鏡で覗くのはけ
っこう技術が必要。双眼鏡を用意してきたが、ピント合わせが難しくモタモタする。素人には単
眼鏡のほうがよかったのではと思った。

ブルンジからの白人観光客7,8人と一緒になる。彼らは写真クラブのグループなのか、はたま
た霊長類研究者なのか、それぞれが素人というにはあまりにも巨大な望遠レンズを付けたカメ
ラを持っていて、コロバス・モンキーの写真を撮りまくっていた。

いったんロッジに帰り、ガイドを交えてランチをとる。
午後からは中級者向け、大湿原カミランゾヴ・トレイル(Kamiranzovu Trail)に挑戦ということで、少し武者ぶるい。

ロバス・モンキー