一言で言えば「ダビンチ・コード」のようなスタイルの本です。
しかし私の独断と偏見をもって言わせてもらえば「ダビンチ・コード」よりも
遙かに上質で後味のよい印象を残す内容です。
「ダビンチ・コード」のようにおどろおどろしく、あまりにも思わせぶりなく
どい表現や仕掛けが無く、それでいて随所にさり気なく挿入されているエピソ
ードが全部、物語の謎の解明の手がかりとなっていてそれが不自然さを感じさ
せないのです。
結末が「ダビンチ・コード」の示す真実のあまりの馬鹿馬鹿しさとは違って
「イエスの涙」の示すのはそういう真実もあるのかも知れないと思わせるもの
があるのです。
そしてこれが重要なのですが、カソリックとバチカンというものがどういう世
界か、どういう雰囲気を持つところかということをたいへん上手に伝えており
ます。
「イエスの涙」(ピーター・シャビエル著・アートヴィレッジ社・\1.995)
以下は広告に載っていた内容紹介文です。
十字架を嫌う様々な現象が世界中に増え広がっていた。この「十字架嫌悪シン
ドローム」をキリスト教会の脅威と感じた教理省長官ハンス・ラーナーは秘密
会議を召集したが、謎が多く、会議は難航していた。そんな折、「十字架嫌悪
シンドローム」解明の鍵となる情報が、日本の教会から届いたのである。傍観
者的に会議に参加していた山本神父は、バチカンから、シンドローム発症者で
あるシスター・テレサの調査を命じられ四年ぶりに帰国。調査が進む中で、当
初予想されたものとは全く違う事実が次々と明らかになり、やがて彼は巨大な
運命の渦に巻き込まれてゆく。一方、教皇パックス一世が知った、キリスト教
の歴史を覆す驚愕の真実とは?そして彼の身に一体何が起こるのか…京都からバ
チカンへ、十字架の真実は伝えられてゆく。