「しかし、現実的にはこのように役割を完全に区別して患者さんに
関わっているわけではありません。当院では身体運動機能の獲得のため
PT・OT同様に行っていきます。その中で違うところといえばOTではよく
作業(道具)を利用し訓練を行います。
作業療法室には様々な日常生活に関する道具が揃えられており、
患者さんの状態に合わせそれらを使い訓練を行っていくわけです。
そのように病院においても日常生活を想定して訓練を行うことで、
患者さんの自信にも繋がり在宅復帰のイメージができると思います」
カード
私の場合は骨折した箇所の状況をレントゲンで確認しながら、三角巾を
つけたりはずしたりして、腕の運動を徐々にレベルアップしていきました。
肩をホットパットで20分ほど温め、動かせる範囲の関節を動かしたり筋肉を
もみほぐす治療を、午前は理学療法士のK先生、午後は作業療法士の
O先生で行われていきました。やがて骨折箇所の改善とともに横臥したまま
腕を上げるリハビリがゆっくりと進んで行きましたが、長期間固定していたため
筋肉の衰えや関節のこわばりが響いて時間がかかりました。
作業療法士のO先生の指導のもと通称ぞうきんがけ
道具を利用したリハビリでは一定の高さに設定された机を、タオルや布で
両手で拭く動作は通称雑巾がけと言われ、私も一生懸命頑張りました。
ある時点まではリハビリが進み腕も上がるようになりましたが限界が出て
きましたので、肩の骨と骨との間のクッションの役割を果たしている箇所に
注射をすることになりました。周りの方の口ぶりからかなり痛そうな印象を
受けていましたが、その痛みは涙が出るほどでした。
私には注射は効果があったようで退院するまで4回しました。そのお陰で
薄紙を剥がすようにして腕が動くようになり、入院の初めは体に密着していた
左手が、少しづつ上がるようになりました。骨折がつながるのに8週間かかる
と言われますが2月下旬には亜脱臼の方も改良されて、やっと三角巾がとれ
自由の身になりました。長期間三角巾で固定していたため関節の柔軟さや
筋肉の衰えが出て後に影響がでました。
同時期ぐらいに衣服の着替えを作業療法士のO先生から習い、パジャマ
から日常の服に着替えるようにしたことでて、生活にメリハリをつけられるように
なりました。これは私にとって精神的に効果があり大事なことでした。
横臥してリハビリを受けている間、お二人の先生との会話はいろんな
分野に及び私はリラックスして治療を受けることができました。
治療は身体的なものだけでなく患者の気持ちをリラックスさせることにも
注意が向けられ、叱咤激励するのではなく共感と励ましが患者の気持ちを
前向きなものにして効果があがるように、先生方の努力がなされました。
チューブを使った運動
リハビリの内容も腕の機能が回復するにつれ、幅1cm、長さ1mぐらいの
ゴムチューブやおもりなどを使った負荷をかけたトレーニングになり、横臥
した状態でしたら、右腕と同じぐらい左腕もあがるようになりました。
このことは座ったままでは自力では肩までしか上がらない状態でしたが、
回復する可能性が見え私には大きな希望となりました。
滑車の上げ下げ
リハビリも1階のリハビリセンターで午前1時間から1時間半、夕方1時間、
お風呂のない日は間に自主リハビリ、病室にいる時も時間さえあればリハビリ、
それに後半に入りますと外での運動と、病室に居る時間がないほど忙しくなりました。
入浴も洗髪も一人でできるようになった3月の中旬、4月に京都で行われる
父の13回忌に出席のため退院の希望を出しました。
理学療法士のK先生は家事もリハビリになるというのが持論でいらっしゃい
ましたので、作業療法士のK先生ともども私の希望を了解してくださり
主治医のM先生の許可が出て私の110日の入院生活は終わりました。
明日は退院
一瞬の不注意がもとで4ケ月近い入院となり家族をはじめ、妹夫婦にも迷惑を
かけてしまいました。その長い入院生活を支えてくれたのは肉親や友人の方たちでした。
一方で怪我の治療に当たられた、リハビリセンターのお二人の先生方の辛抱強い
手当てのお陰で日常生活が送れるまで回復でき心から感謝しております。