8/19 2007掲載

想い出の映画スター
 
エリザベス・テイラー   Part2
 
 
エリザベス・テイラーは子役として映画に出演していますので、
その作品数は膨大なものになります。少女期から撮影所と両親の
厳しい監督、庇護のもとで過ごすうちに、リズは9歳にして
一人の人間としてのエリザベス・テイラーと、商品としての
エリザベス・テイラーという二人の別々の人間として見るように
なりました。そしてイメージとしての自分と、本来の自分が同一
でないことを悟り、そのことを考えながら映画に出演していきました。
 
 
 
1949年の「若草物語」は、ルイザ・メイ・オルコットの自伝的
要素をもつ作品を映画化したものです。オルコットの原作に馴れ
親しんできた思春期の私にとって、メグ(ジャネット・リイ)
ジョウ(ジューン・アリスン)エミイ(エリザベス・テイラー)ベス
(マーガレット・オブライエン)の四姉妹を中心に展開する物語は、
心をうばわれてしまうものでした。お洒落なエミイが鼻が高くなるようにと
洗濯はさみで鼻をつまんで寝る姿は今も印象にのこっています。
 
 
 
1950年の「花嫁の父」は、いつの時代も変わらない一人娘を嫁がせる
父親の複雑な気持ちを、ユーモアを交えながら描いた作品で、当時18歳の
エリザベス・テイラーの花嫁姿の美しさは伝説的なものになっています。
 
 
右 スペンサー・トレイシイ
エリザベス・テーラーの10代とは思えない完璧な美貌と、名優スペンサー・
トレーシーの抑えた演技で、ユーモアとペーソスにあふれる作品になり
ハリウッド黄金期の秀作といえます。息を飲む美しさとはこのエリザベス・
テイラーの花嫁姿ではないでしょうか。
 
 
右 モンゴメリ・クリフト
1951年の「陽のあたる場所」は実際にあった事件を基にした、
セオドア・ドライサーの小説「アメリカの悲劇」を映画化したものです。
貧しい環境で育った青年が、「陽のあたる場所」をもとめてあがき、やがて
悲劇的な結末をむかえるというストーリーです。成功をめざした野心のために
破滅に至った男の物語に、狂おしい恋愛感情がないまぜになって描かれている
作品は、見るものに強い印象をあたえました。
 
 
 
この作品の成功はモンゴメリ・クリフトの思いつめたような表情、繊細な
抑えた演技に、エリザベス・テイラーの可憐な美しさと豊かな表現力という
キャストの魅力が効果をあげていました。このころのモンゴメリ・クリフトは
演技力のある美男俳優として日本でも非常に人気がありました。またこの映画の
エリザベス・テイラーの美貌には、清純さにしなやかさと強さがかもし出されて、
リズの演技の転機になりました。私はリズの作品を数多く見てきましたが、
この映画のリズが一番好きです。
 
 
 
主人公の悲劇的な死で終るこのドラマに救いがあるとすれば、「陽のあたる場所」
に咲いたエリザベス・テイラーの匂うような美しさ、純情が光を投げかけていた
からだと思います。アメリカの暗部を描いた作品ですが、この二人の青春の輝きは、
いつまでも色褪せることがないのではないでしょうか。この作品はアカデミー賞の
監督、脚色、撮影、衣装デザイン編集、劇音楽と6部門に輝きました。
 
 
左 ジョン・エリクソン
1954年の「ラプソディ」は、全篇クラシック音楽がちりばめられていて、
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲や、ラフマニノフのピアノ協奏曲
2番などをこの映画で初めて知りました。美しいスイスの風景を背景に
クラシック音楽の素晴らしさが印象にのこりました。
 
 
左 ヴァン・ジョンスン
1954年「雨の朝巴里に死す」は、愛し合い結婚したものの、なにか
あきたらず享楽を求めつづけ、火遊びする女性のドラマです。
 
 
 
1954年の「巨象の道」は、ヴィヴィアン・リーの病気でリズは代役として
出演しました。セイロンの紅茶王の妻となったものの、夫と技術者との
間をゆれ動く女性の物語です。
 
 
 
右がヴィヴィアン・リー
「陽のあたる場所」の成功のあと「可愛い配当」「黒騎士」「ラプソディ」
「雨の朝巴里に死す」や「巨象の道」など5本の映画に出ていますが、いずれも
会社の方針や経済的理由などのために出演したもので、リズにとっては不本意な
作品でした。
 
 
 
1956年の「ジャイアンツ」は、「陽のあたる場所」のジョージ・スティー
ブンソンの監督でつくられました。
 
 
右 ロック・ハドスン
テキサスの保守的な大農場に嫁いだ女性の一生を描いた大河ドラマで、育った環境に
よる価値観の違い、人種差別、金と成功、そして愛情など、そこにかかわる様々な
人々を描いて一篇の叙事詩のようなドラマになっています。
 
 
右 ジェームス・ディーン
大農場主の妻となったヒロインにひそかに愛情をよせ、見果てぬ夢を事業に死に物狂い
でつぎ込み、成功してもむなしさを感じる人物を演じたジェームス・ディーンは、
この作品の完成直後にオートバイ事故で亡くなり、この作品が遺作になりました。
 
 
中央 ロック・ハドスン 右 ジェームス・ディーン
リズは東部の洒落た都会的環境に育った娘から、土ぼこりの舞う西部の
大牧場の妻となり、やがて祖母となる女性を演じていて存在感を示しました。
あの独特の太い眉を塗りつぶし、細い灰色の眉を書き、黒髪をシルバーグレイに
染めての大熱演は、スクリーンにかける一人の女優のけなげなさを感じました。
エリザベス・テイラー、ロック・ハドスン、ジェームス・ディーンの組み合わせは、
古き良き時代のアメリカ映画の雰囲気を感じさせます。この作品で
ジョージ・スティーブンソンは再度アカデミー賞の監督賞を受賞しました。
 
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