万葉集より
わが背子を大和へやると小夜更けて
暁露(あかときつゆ)にわが立ち濡れし
大伯皇女(おおくのひめみこ)
政治的陰謀によって追いつめられた弟、大津皇子(おおつのみこ)が
伊勢神宮の斎宮である姉、大伯皇女に別れを告げに来たあと、大和へ
立ち去るの見送った皇女の悲しみを歌ったものです。
ももづたう磐余(いわれ)の池に泣く鴨を
今日のみ見てや雲隠(かく)りなむ
大津皇子
磐余の池のほとりで大津皇子は処刑されますが、父天武天皇が崩じて
一月もしないその迅速な死刑はなにを物語るのでしょうか。
大津皇子は謀反人として死後も恐れられ、二上山(ふたかみやま)の頂上に
国の守り神として葬られました。
うつそみの人にあるわれや明日よりは
二上山(ふたかみやま)を弟世(いろせ)とわが見む
大伯皇女
無実の罪で政権争いの犠牲になった弟へのいいようのない悲しみと
怨みを歌ったものです。