9/9 2001

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<<ヨーロッパ歴史ロマン バイエルンの青と白>>

ミュンヘンの新市庁舎はゴシック風でいかにも古そうですが、実際にはフランダ
ース風ゴシック(別名ネオゴシック)様式にて1908年竣工した、やっと100年に
なろうかという新しいものでございます。

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# ミュンヘン市 新市庁舎の仕掛け人形(グロッケンシュピールGlockenspiel )

  右上の緑青の噴いている人形が毎時15分に1鼓、30分に2鼓、45分に3鼓、毎
正時には4鼓と続いて左の人形がその時刻の数の時報を打ちます。
午前11時には時報の鐘に続いて仕掛け人形が動きます。市庁舎前のマリエン広場
にはそれを見ようと、夏期には一万人にも達そうかという観光客が集まって、立
錐の余地無く時計塔を見上げています。(夏期には午後5時にも仕掛けが動きます)

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  まず鐘による前奏曲が奏でられます。十数個の鐘を並べて自動演奏します。
動力は何か調べてません。今は電動でしょうが、100年前出来たときは多分カッ
コウ時計のような”おもり”か、シリンダー・オルゴールに見られるようなゼン
マイに、速度を一定させるエアブレーキを組み合わせたものだったでしょう。鐘
はとても澄んだ音色で響きわたり、アルプスに届けとばかり朗々と演奏されま
す。拍子が遅れ気味で、音階もわずかに外れ気味なのがまたものすごく味があり
ます。曲目はその時々で変わりますが、私はバイエルンの民謡ではないけれど
「ローレライ」が一番好きです。

  前奏が終わると、曲が変わっていよいよ中央上段の人形群が動き出します。
これは1568年バイエルン公爵ヴィルヘルム4世とロートリンゲン(ロレーヌ、現
フランス)から嫁いできた王妃レナーテの結婚を祝って催された馬上試合を再現
したものです。左から登場するのがバイエルン、右から登場するのがハプスブル
クの一団です。最初に道化、それにラッパ吹き、露払い、旗持ちなどが続きま
す。そして最後に双方の騎士が登場します。バイエルンの旗には青と白の斜め市
松模様が、ハプスブルクの旗には双頭の鷲が描かれていますし、馬の掛布はバイ
エルンは青と白、ハプスブルクは赤と白になっていますので、その辺の歴史を少
しでも知っていればどことどこの試合か、すぐわかる仕組みになっています。

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双方の騎士がすれ違う時何事も起こらず、一行は二周目に入ります。そして二度
目に騎士が出会った時、バイエルンの騎士の槍がみごとに相手の甲冑の胸板を突
き、ハプスブルクの騎士はもんどり打って後方へ倒れます。この瞬間マリエン広
場を埋め尽くす観光客の口から一斉にオオーッというどよめきが漏れ、アメリカ
人観光客からは歓声や拍手が上がります。ただ一人、1904年にこの仕掛け時計が
出来て以来100年近く、ざっと5万回ほども胸を突かれて倒れたハプスブルクの騎
士だけはうんざりしていることでしょう。

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(Munich4)

  馬上試合が終わると下段の人形がくるくる回りながら踊り出します。これは
樽屋ギルドの踊りです。Schaeffler-Tanz と言いますが、Schaeffler はバイエ
ルン方言らしく、Y.O嬢さんお勧めのアドモント修道院の写真の付いた独和辞
典には載っていません。
  ペストの恐怖に人々が怯えていたとき、彼らが楽しい踊りを踊ってミュンヘ
ン市民に新たな生きる勇気を与えたという故事を讃えています。この樽屋ギルド
の踊りは今でも7年毎に催されています。私も一度テレビで見ました。オクトバ
ー・フェスト(十月祭、別名ビール祭り)の時ではなかったかと思います。でも
ひょっとしたらメイ・ポール・ダンスが踊られる五月だったかもしれません。
手に持っているのはおそらく樽桶の”たが”でしょう。竹のないこの国では柳な
どの柔らかい木で作ります。

  樽屋ギルドの踊りが終わると余韻を残した結びの曲が演奏され、それが終わ
ると最上段の金色の鳥が、たぶん平和の象徴、鳩でしょうが、「ホッホホー、ホ
ッホホー、ホッホホー」と三度、羽を広げて鳴きます。(フッフフーなら、Y.O嬢サンです)
  これで一通り仕掛けが上演されました。気が付くと15,6分経っています。

  しかしドイツ最大の仕掛け時計はこれが全てではありません。もう一つ別の
仕掛けが動くのです。だがもう一つの仕掛けのほうはあまり皆さん見たことない
でしょう。何故かと言えば、、、その時刻皆さん方は世界最大級のビアホール、
ホーフ・ブロイハウスで1リットル・ジョッキを片手に浮かれているでしょうから。

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(Munich5)
  夜警の仕掛け:夏の間はまだまだ明るい夜9時、鐘が9鼓打ち終えると金色
の鳩の両側、時計塔の右角にある回廊にカンテラを下げた夜警が現れ、あたかも
「よい子は寝る時間だぞー」と言ってるように静かに奥に消えて行きます。今度
は左側の回廊に夜着に着替えた子供達が現れ、促されるように去って行きます。
この仕掛けは短く、1分足らずで終わります。

  以上がミュンヘン市庁舎仕掛け時計の全てです。

# 市庁舎の周辺

  この市庁舎は建ってやっと百年足らずなので、正確には新市庁舎といいま
す。写真のように各階バルコニーには花が飾られ、絶えることがありません。

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(Munich6)
市庁舎前の広場をマリエン広場といい、中央に聖母マリアの像があります。南ド
イツはカトリックの多いところです。

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(Munich7)
マリエン広場の一角には、本当のゴシックスタイルの旧市庁舎もあります(戦後
の再建です)。歴史の重みを感じさせる景観ですが、この広場の地下には地下4
階構造の電車駅があり、市営地下鉄とドイツ鉄道近郊電車が十字に立体交差して
います。

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(Munich8,9)

  ところでミュンヘンの公共交通機関は非常に発達していて、上記鉄道路線は
16方向に放射状に広がっています。切符は地下鉄、近郊電車、路面電車、バス共
通で、乗降口は低く広く、車椅子や乳母車も乗せられるなど、弱者に配慮してあ
ります。郊外の駅はパーク・アンド・ライドが徹底しており、電車には自転車も
乗せられるなど、通勤の工夫がなされています。運賃はかなりアバウトです。乗
り物に乗ると必ず写真のような青いボックスがあって、

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(Munich10)
これに自分で切符を差し込んでカチンと乗車場所と時間を刻印します。そして簡
単に言うとその切符で同一方向に、ある距離以内2時間以内なら何回乗り換えて
もよいのです。こういう風で車掌もいなければ、駅に改札口もないのでタダ乗り
も出来ますが、私服の検札に出会うと高い罰金を払う羽目になります。

  その他市庁舎周囲には色々見るもの、食べるところ、買い物するところがい
っぱいあります。ドイツで一番楽しい都市はミュンヘンと、それ以外にはベルリ
ンでしょう。本日は長くなりますのでその内ほんの一部、バイエルンの雰囲気の
伝わるところを選んで紹介します。

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(Munich11)
国立オペラ劇場。ギリシア神殿風を古典主義建築といい、19世紀に盛んでした。

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(Munich12)
都心の恒久歩行者天国。この時は二人の若い女性が器楽演奏していた。

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(Munich13)
皮の半ズボンでキメた、バイエルンのおじさん。

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(Munich14)
高級ブランド店街。長女の背後の建物はアイグナー本店。後方に国立オペラ劇場。

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(Munich15)
前の写真を線路に沿ってカメラ後方に来ると、旧バイエルン連合銀行本店。外観
はローカル且つクラシックだが、合併して現在ドイツ第3位か4位の実力。ここ
のトイレは玄関すぐ脇にあって、よく使った。


# バイエルン(ヴィッテルスバッハ家)の青と白

  馬上試合で、バイエルンの旗には青と白の市松模様が描いてありましたね。
これはヴィッテルスバッハ家がこの地方の領主となって、820年余りなる今日ま
で連綿と続くヴィッテルスバッハの、さらにはバイエルンのシンボル・カラーな
のです。マルに十の字が島津様の家紋と日本人なら誰でも知っているように、青
と白ならバイエルンと、ドイツ人なら誰でも知っているのです。

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(紋章の変遷 Munich16)
  左上は16世紀のバイエルン公国の紋章、右上は18世紀のバイエルン選帝候国の
紋章、左下は19世紀初頭ナポレオン戦争後成立したバイエルン王国の紋章(われ
らのルー君のつけていた紋章)、そして右下は現在の自由州バイエルンの紋章で
す。どの紋章にも青と白の市松模様が中央に組み込まれています。そして、、

  ドイツの自動車BMWをご存じでしょうか?正式の名称は
Bayerische Motoren Werke (バイエルン発動機製作所)

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(Munich17)
  本社はミュンヘン、1972年のオリンピックに合わせて完成した、オリンピア
公園に隣接したところにあります。その社章は写真に見るとおりです。BMWは
戦前航空機を製造していたので、このマークはプロペラの回る様子を図案化した
ものだと、自動車雑誌には紹介されています。でも、それだけでは十分な説明に
はなっていません。もう、おわかりでしょう? BMWはこの青白市松模様のマ
ークで、バイエルンの栄光を世界に知らしめたのです!
そしてご覧なさい、ナンバープレートにもバイエルンの青と白が、、。

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(Munich18)

# ミュンヘン・グルメガイド

(1)新市庁舎地下室(ラーツケラー Ratskeller)

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(Munich19)
ドイツ旅行で美味いものを安く食べようと思ったら、迷わず市庁舎に行きましょ
う。ここミュンヘンのラーツケラーはバイエルンの雰囲気にたっぷりひたれ、お
すすめはロースト・ポークにジャガイモのかるかん様団子です。

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(Munich20,21)
(2)明るい日射しの午後はバラの花と芝生のガーデンに出て、木陰でケーキに生
クリームいっぱいのコーヒータイム。

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(Munich22)
(3)夏の夜はビルの屋上ならぬ本物のビア・ガーデンへ。1リットル・ジョッキでプローシット(乾杯)!

どうです?hikarikoさん、私のミュンヘン観光ガイドご満足頂けたでしょうか?

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_/ Dr. med. Hiko Funatsu
_/ Apfel = apple
_/ 周船寺病院(福岡市)への Carbon Copy は
_/ apfelrot@d2.dion.ne.jp
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