12/19 2001掲載

<ゲルマンの 情緒豊かな クリスマス> by 神経科医の舩津邦比古

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(Wh02) アドヴェント・カレンダー
クリスマス前約4週間をアドヴェントと言います。子供達はカレンダーに付いている扉を毎日一つずつ開けて行きます。扉を開けるとお菓子や簡単なプレゼントの絵が描いてあり、今日はどんなお菓子が食べられるか、子供達は楽しみです。Yokoさんの紹介記事にあったアドヴェント・カレンダーは日毎違うお菓子がぶら下げてあるそうで、これも楽しそうですね。
 
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(Wh03) ロイトリンゲン(シュヴァーベン地方)のクリスマス
どの町も都心の歩行者天国はこんなふう。クリスマス・ツリーのイルミネーションは白一色で清楚な印象を与えます。
 
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(Wh04) 古都ニュルンベルク(バイエルン州フランケン地方)のクリスマス
数百年を経た由緒ある建物も現役で使われています。
 
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家の中でも飾り付けが始まります。キットが売ってあるのでさほど難しくありません。
 
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さて、Yokoさんの紹介記事のあったケーテ・ヴォールファートのお店ですが、本店は風光明媚なドイツ・アルプスに囲まれた、上バイエルン県のオーバーアマルガウという小さな町にあります。この町は家々の壁に民族画を描いた壁絵と、7年毎のキリスト受難劇で有名なところで、そのうち稿を改めて紹介します。ローテンブルクのお店はホテル「鉄兜」の隣と向かいに1985年頃開店しました。
上の写真は店の案内パンフレットですが、年がら年中こんな調子でクリスマスをやっています。でもYokoさんがそうだったように、肝心なクリスマスの日には閉店しています。なぜって、、ドイツには店舗閉店法という法律があり、労働者保護とキリスト教の教えから日曜、祝祭日には閉店することが義務づけられているからです。
 
[余談:デパートが日曜日閉まることについて]
クリスマス用品専門店がクリスマスに閉まっているのも妙な話ですが、日曜祭日、福岡天神は買い物客で溢れているのに対し、ドイツの都心はガラーンとして人影がありません。今はだいぶん緩和されましたが私達が初めてドイツに住んだ頃はデパートも専門店も店舗閉店法のおかげで平日は午後6時に、土曜日は午後1時にピタッと閉まり、月に1回午後5時まで開いている土曜日があるにはありましたが、不便でなりませんでした。また、こういうこともありました。北ドイツを旅行し、ミュンヘンに帰ってきたときのことです。ドイツ鉄道は自動車を鉄道で運ぶサービスをしています。ハンブルクで夕食を終えてから愛車を専用貨車に載せ、私たちは寝台車で眠って翌朝ミュンヘンに着きました。スーパーで食料を買って帰って家で食事をしようと思ったところ、なんとどこも閉まっています。この日はカトリックの多いバイエルン州は祭日だったのです。プロテスタントの多い北ドイツにいる間はそれに気付きませんでした。仕方なくミュンヘン中央駅に行って旅行者用の店であり合わせの食べ物を買い、ちょっとわびしい食事で一日が終えました。そういう不便なこともありましたが、しかし慣れれば結構豊かな生活が送れることに気付きます。用事は昼休みや退社後の短時間に手際よく済ませ、日祭日は自宅か郊外でゆっくり休日を楽しむのです。
 
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我が家のクルミ割り人形と聖母子像と、花の壁飾り。小戸棚はバイエルンの民芸家具。英語でトール・ペインティングと呼ばれるこのような装飾画の描き方は最近各国でホビーとして広まっています。家具としての構造はドイツ製が一番頑丈です
。バレエ「クルミ割り人形」はやはりアドヴェント中が一番客を呼ぶようです。歩道に残った凍った雪に足を滑らせないよう注意深く歩きながら、氷点下の晩劇場に行きました。
 
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「バイエルンの天使」と呼ばれる人形達。とても気に入っています。こんなに可愛い格好をしていても天使はドイツ語では男性名詞、「彼」と呼びます。
 
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こんな壁飾りもあります。厚手の麻布に鉛の人形を縫いつけたもの。拡大すると、、
 
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サンタが乗っている気球にもバイエルンの青と白が、、。
因みにサンタクロースはドイツ語圏では聖ニコラウスと称され、12月6日に子供達への贈り物を持って来ます。
 
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(Wh11) シュトーレン
クリスマス・シーズンにはいろいろなお菓子が店先に並び、家庭でも作られます。シュトーレンはその代表的なものです。パン生地に近いケーキ生地の中にリキュール漬けしたドライフルーツを入れ、三枚にたたんで焼き、焼き上がったら粉砂糖をふりかけて2〜4週間室温に放置しておきます。ドライフルーツの味がケーキにしみ込み、しっとりと堅くなった頃食べます。最近日本でも売り出しました。ドイツに注文して取り寄せることもできます。
ドイツ人にとって結構大切なのがロウソク。これはキャンドルと英語風日本語で書く気になれない。パーティにも、二人の愛の語らいにも、独りで一日の疲れを癒すときにも照明を暗くしてロウソクをともします。写真左のロウソクは銅版画のような絵が描いてあります。コーヒーポットを熱く保つのも煙の出ないシリコン製ロウソク。英語でもtea light と言いますが、日本では最近アロマ・テラピーで香料を暖めるのに使われているようです。
 
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(Wh12) ミュンヘン市庁舎前のクリスマス
市庁舎前にはクリスマス市が立っていて、クリスマス用品を売っています。さながら日本のお正月のお宮参りの雰囲気です。薬草入りの暖かいグリューワインで冷えた体を温めます。 Yokoさんのお好みみたい。
 
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(Wh13) 雪のミュンヘンのクリスマス
そしてクリスマスの日、あらゆる店はクリスマス市も含め閉まっています。祭日は仕事せず、買い物せず、休み、楽しむ、、。この伝統は厳格に守られています。クリスマスは2日半で、12月24日を聖前夜、25日を第一聖夜、26日を第二聖夜といいます。25、26日は休日です。クリスマスをドイツ語で通常 Weihnachten (ヴァイーナハテン,聖夜)と複数形で呼ぶのはそのためです。
昨日まで大勢の買い物客で賑わったデパートの前も今夜はひっそりと静まり返っています。ただドイツ人の照明のセンスはすばらしい。左手黄色い建物(衣料品専門店)上部には柔らかい光に浮かび上がるマリア像が、、。
 

(Wh14) ヴァイプリンゲン(シュヴァーベン地方)のクリスマス。
クリスマスの夜は地方都市のほうが美しいようです。でもマルクト広場はひっそり静まり,イルミネーションと雪だけがロマンティックに輝いています。そこに少女の姿をした天使が音もなく舞い降りて来、その町に住む人々に祝福を与えるのかもしれません。
人々は家族や友人とヨハン・セバスティアン・バッハの「マタイ受難曲」やシューベルトの「ドイツ・ミサ」を聴きながら、楽しいクリスマスの夕べを過ごしていることでしょう。
 
それではどちら様も次の写真にて挨拶しますように、

喜ばしいクリスマスと良い新年をお迎えください。