10/1 2002掲載

haruサン

<アクエリアスの航海〜夜空の向こう〜>


今年は台風が多い夏でした。
発生数は例年と比べてどうだか知りませんが、土曜・日曜に襲来したので、特に多かったと感じます。
例年、五島クルージングの帰りにハウステンボスにヨットをいったん置いて福岡に戻り、あとで回航
するのが恒例になっていますが、今年は台風のため出航できず、車で海岸線を巡って、ただただ、大き
な波が押し寄せるのを見つめていました。

その翌週に二人で回航したのですが、やはり台風の影響で強烈な向かい風と襲いかかる波のため疲れ果てました

 それでも航海に出るのは“なぜ”?

 やはり楽しいから。

空の向こうにはどんな出来事が待っているか・・・と。

 長距離の航海に出るときはほとんどが夜なので、星空を見ながらの航海です

   乙女座宮(山口百恵)

♪♪さあ 流星に乗って 銀河大陸横断鉄道
     そう 夜空にきらめく星の星の世界ね
    そう この世に散らばる星の 星の中から

    ペガサス経由で牡牛座廻り  山羊座に恋してさそり座ふって
      蟹座と戯れ  魚座に初恋 今は獅子座のあなたと一緒に
    今は獅子座のあなたに夢中よ

 満天の星空のもと夜光虫がキラキラ光る航跡を引きずりながら、夜空の向こうを目指して船が滑っていくときは
 本当にわくわくします。

 今回は、アクエリアスで訪れた夜空の向こうの島々などを紹介しようと思います。

夜空ノムコウ(SMAP)

♪♪ あれからぼくたちは  何かを信じて来れたかなぁ
     夜空のむこうには   明日がもう待っている
         
・・・・・・・・・・・・・・

 あのころの未来に 僕らは立っているのかなぁ
      すべてが思うほど うまくはいかないみたいだ
      このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ
      雲のない星空が マドのむこうに続いている
      あれからぼくたちは 何かを信じて来れたかなぁ
      夜空のむこうには もう明日が待っている

 <地図>



1週間〜10日くらいのの航海で行って帰ってこれるのはこの範囲くらい。この10年間でこの範囲を出て鹿児島以南に行ったのは2回だけです。



遙かに西の海を望む。芥屋の大門、姫島の彼方に唐津の沖



<七ツ釜>

七ツ釜は唐津の北にある海蝕洞窟が並んだ断崖です。
ジャック・マイヨールは少年のころ、ここでイルカと遭遇しました。
ジャック・マイヨール・・・ご存知でしょうか?
フランス人で、映画「グラン・ブルー」のモデル、世界最高の素潜りの達人、4分近くまで
息を止めることができて素潜りの世界記録を次々と塗り替え、水深105メートルの深度ま
で自分の息だけ到達した。

泳ぎ方をイルカから習いイルカと会話が出来ると言われた伝説の人。

彼の生まれは、なぜか上海。海を越えたら上海、海の向こうは上海。
 陽水の歌で遊んでみましたが、上海生まれは父親の勤め先が上海にある会社だったからです。
 休暇は日本で過ごすことが多く、夏休みには両親に連れられ唐津で過ごすことが多かった。
 10歳のとき、唐津の北にある七ツ釜で泳いでいて、地元の子供の水中眼鏡を借りて魚と遊ん
 でいるときイルカの大群に遭遇しました。

 その群れのなかの一頭が恐れる様子もなく彼に興味を示すように寄ってきて、彼と目と目が合った。

 この時の感動が彼の人生を大きく変えていくことになります。
 30歳のとき、マイアミの水族館員となっていたマイヨールは、クラウンという雌のイルカと出会います。
 彼と彼女とは初対面のときから会話が出来たと言われています。
 彼女は同じ時間、プールの同じ場所で彼を待って、彼が嬉しいときは一緒にはしゃぎ、哀しいときには励ました・・・・
 呼吸方法、泳ぎ方もこのプールで彼女から会得しました。
 その後は世界第一のダイバーとなって世界記録へと挑戦していきました。
 人間も潜水中はイルカや鯨と同じく主要な臓器(心臓や肺)にのみ血液を送る(ブラッド・シフト)ことを限界
 まで挑戦して実証したのもジャック・マイヨールです。


玄武岩、柱状節理の七ツ釜。10歳のジャック・マイヨールはこの岬でイルカと出会う


洞窟の奥行きは最大100メートルにもなる


のどかなススキの平原の下には何本もの洞窟が走り岩が波を砕いている。亀裂はそんなもの


昨年、20011223日、ジャック・マイヨール、イタリア・エルバ島の自宅で自殺、74歳。
原因は年をとって自由に潜れなくなったからとも言われているが、晩年、周囲には
“孤独だ。”
と、しきりに漏らしていたらしい。
世界一のダイバーとして高名をはせ、世界中に友人知己の多い彼の孤独感は、普通の人の孤独
感とは違うのだろう。

道を究めた人は孤高になりやすい。達した領域の深さを理解する人がいないからであるが、普通
の人からみると、それは“ないものねだり”に過ぎない。

キューバをつけて海のなかに潜っていると陸上とは比較にならないくらい、ものすごい孤独感
に襲われる。人との関わりでの皮膚感覚がまったくなくなるから。

ジャック・マイヨールの孤独感の深淵はどんなものだったのだろうか。

世界中の海を潜ってきた彼が非常に愛着を持ち、年に数回も訪れていた唐津や七ツ釜の海。
今年の夏、僕は格別の感慨を持って七ツ釜の断崖を見ながら沖を通り過ぎて行った。

いい日旅立ち(山口百恵)

2番

♪♪ 岬のはずれに 少年は魚釣り

    青いススキの小道を 帰るのか

    私は今から 思い出を作るため

    砂に枯木で書くつもり さよならと

    ああ 日本のどこかに

    私を待ってる 人がいる

    いい日旅立ち ひつじ雲を探しに

    父が教えてくれた 歌を道連れに

 

続く

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