9/27 2004掲載
空よりの糸に吊るされ下がるかに稲穂の上を飛ぶ赤とんぼ
世界遺産の茅葺屋根に住居なす老い人帰り来デイケアより
坂の町を流るる水路水音の聞こえて祭りの前の静けさ
教える人教わる人も楽しみて輪踊りの練習夜更けに果つる
天満宮より踊りの列の出できたる幼等ひきつぐおわらの誇り
口もとに笑みを含みて網笠の乙女は風の盆を踊れり
網笠の乙女の唇しっとりと胡弓の音色の坂道下る
忘れいし胸の高鳴り呼びおこす胡弓の音色に酔う風の盆
川上にむかいて風を受くる人祭りの後のうなじ乱るる
セピア色の灯りの点る橋の上祭りの余韻に風の沁みゆく
留守居する親に聞かさん波の音友は受話機を海に対けいる
塩分の強き温泉の沁みる肌夕陽と共に湯につかりいる