エリザベート皇后
                by 森脇久雄 9/21 2000

何を隠そう、小生は小学校低学年のころからこのエリザベート皇后オタクをやり続け
てきた男なのです。
きっかけは、当時、私の父親が購読していたライフ誌に「オールド・ロマンス」とい
うタイトルで例のルドルフ皇太子心中事件を記事にしていたのですが、その中に
掲載されたエリザベート皇后(1879年代写真参照)の美貌にひどく心を惹き付け
られたのです。

年の離れた姉に「この女の人は誰?」と尋ねたところ、無政府主義者に暗殺された
オーストリアの皇后であること、詩人でもあり、その詩がとてもロマンティックなのよ、
と姉がノートに書き取っているのを見せてくれました。
それ以来、私の心の中にこの薄幸の佳人への憧れが始まったのです。
年月がたち、高校生になったころに私はエリザベート関係のことをいろいろ調べよう
としたのですが、その当時、日本の出版物で彼女のことが記載されている書籍は
岩波書店の「西洋人名辞典」ただ一つで、図書館に行ってブリタニカやドイツのブロ
ックハウスなどの百科事典を調べたりしたものでした。
それが今や分厚い伝記や、写真集、コミックまで出版され、宝塚歌劇や東宝ミュージ
カルにまで取り上げられるのですから隔世の感があります。
舩津君が観劇した東宝ミュージカルのルドルフ皇太子役の青年を覚えていますか?
彼は私の友人、井上哲雄さんの子息(写真参照)で、井上さんは修猷館の一級上の先
輩です。


井上さんは西南大学教授であるという学究の徒ですが、息子がミュージカル役者を目
指したとき、大変不安を感じていることを私に打ち明けたことがありました。
本人が強く望んでいる道を閉ざすと後々悪い結果を招くのでは、とアドバイスしたので
すが、今回無名の研修生が一路真輝や高嶋政宏などのスター達の中に混じってルド
ルフ役に抜擢されたことを知ったとき、私はヤッター!と躍り上がる気持ちでしたね。
関西公演は絶対に観ようと思ってます。
この案内は会員便り今年の新春号1/5に載せていたのですが、目に触れなかったで
すか。

しかし、舩津君のエリザベート及び、19世紀のハプスブルグ家の知識の該博なこと
に驚かされます。
「バイエルン・ヴィッテルスバッハ家の血を引く彼女には精神的に病的な一面があっ
たのではなかろうかと、私は仕事柄考えてしまう」のお言葉、私も同感です。
バイエルン王ルードヴィッヒ2世も際だった美形の持ち主ですが、こういうところもよく
似てますね。
「彼にはベルギー王室から迎えた妃シュテファニーがいたのだから、ヴィーンの森の
狩猟の館に隠れ、発作的にピストル自殺しました。
若い人は往々にしてそのように命を粗末にする。娘の両親はたまったものではなか
ったでしょう」も同じく娘を持つ身としてまさに同感です。しかもルドルフとの間に
出来た唯一の娘を放ったらかして遊びまわり、品行もあまり良くないということでベル
ギーの父王も何度も小言を言わずにはおれず、ずいぶん頭を悩ませられたというので
すから、本当に同情しますね。
エリザベート皇后の同名の孫にもあたるこのルドルフの忘れ形見エリザベート(写真
参照)も社会主義者と駆け落ちしたり、社会運動に身を投じてゲシュタポに逮捕される
など祖母にも負けないくらいの自由奔放な生涯を送っております。

フランツ・ヨーゼフ皇帝(左)と弟メキシコ皇帝マクシミリアン


少年時代のルドルフ皇太子


ルドルフ妃ステファニーと心中相手の愛人マリーの写真。


死せるルドルフ皇太子(於葬儀場・頭部に包帯)


上記の写真のうち、皇女エリザベートを除けばいずれも40数年前のライフに掲載されたものです。


エリザベート皇后1860年代の写真。


長々と記させてもらいました。