奥駈第3日目 行仙宿〜前鬼


朝4時に起床、5時に行仙宿小屋を出発しました。
見送ってくれるサポート隊の人達は午前3時に起きて我々の朝食の用意をしてくれた
のです。
小屋そばからいきなりの急登で、身体がまだ充分目覚めていないのであえぎあえぎ登
っていきます。後ろの山は笠捨山です。



  
先発隊の待つ持経宿まで、行仙岳(1226m)、倶利伽藍岳(1252m)、転法輪岳(1281m
と越えて行きます。
どの登りも楽ではないのですが、特に倶利伽藍岳への登りは長く、昨日ここを登った
持経宿組はさぞかし辛かったことだろうな、という思いが脳裏をよぎります。
倶利伽藍岳は岩峰のピークなので、頂上直下は尾根通しに行けず、狭い岩盤の間を山
腹の道へと降りていきます。
岩尾根に咲く習性のシャクナゲが心を和ませてくれます。

  
千年ヒノキが現れてくると持経宿小屋も間近です。
持経宿組の生熊行者、ハナイ行者が迎えに来てくれてました。


持経宿小屋に着いたのは8時50分。
朝6時に起きたという持経宿組はいかにも待ちくたびれたという感じでした。

大峯山脈は林道が尾根を横切っているところが3箇所ありますが、その一つがここ持
経宿で(あとは熊野の山在峠、吉野の百丁茶屋近く)、そのため、ここの小屋には物資
を車で運び込むことが出来ます。持経宿小屋には4人のサポート隊が入って全員の弁
当はここで作られました。
ここで紅茶の接待を受け、弁当をもらって9時20分、全員勢揃いして出発。
アキレス腱の切れそうな気がするくらい急な坂道を阿須迦利岳へと登っていきます。
ここから、最終的に奥駈尾根から下山していく太古ノ辻まで、阿須迦利岳(1251m)、
証誠無漏岳(1301m)、涅槃岳(1375m)、般若岳、子守岳(1464m)、奥守岳、天狗
山(1536m)、石楠花岳(1472m)、蘇莫岳といくつものピークを越えていくのですが、
どのピークも登った分だけきっちり下りて次の登りに入るという、まるで数学の正弦
曲線の上をたどっているかのような歩行で、本当に疲れます。
目の前にこちらと同じ高さのピークがあるのに谷へ向かって降りていくというのは実
に複雑な気持ちになります。全奥駈中、一番アップダウンの多いコースです。

  
狭い岩場を乗り越え、                                                     勤行もし、

 
倒木を乗り越え、                                汗を拭き拭き登り、


良すぎる天気に悩まされ、


休憩は1時間に10分、昼食時間はわずか20分ではみんな、いい加減イヤにもなる
でしょう。
出発用意!という声をかける私も辛かった。


私もデジカメで写してもらいました。笠は雨具としてだけでなく、日除けとしても大
変助かります。


南部大峯最高峰の天狗山に到着すると素晴らしい絶景が広がっております。
奥に並ぶ二つの山は左が釈迦ヶ岳(1799m)、右が孔雀岳(1779m)。
釈迦ヶ岳は大峯山脈の丁度真ん中に位置し、山のたたずまい、植生の素晴らしさ、登
山路の厳しさから実質的大峯の盟主とでもいえる存在です。
(多くの人は女人禁制の山上ヶ岳を盟主と思っているようですが)
次回の9月の奥駈は釈迦ヶ岳の左側の尾根を登って釈迦を越え、吉野に向かうのです。
今回は、釈迦ヶ岳と孔雀岳の手前のとんがったピーク(大日岳)の下(太古ノ辻)ま
で行き、そこから山伏の村、前鬼へと下山していきます。


太古ノ辻。
新宮山彦ぐるーぷの古株でもあるスズコさんが体調不良と膝を痛めたので小田行者が
腰の貝緒をほどとき、彼女の体を縛って後ろからサポートしながら下山していきます。
「まるで猿回しやのう」とみんなが笑います。
しかし、山伏装束のなかでは飾りもののように思っていた貝緒がこのようにザイル代
わりに使われるのを見たのは初めてでした。


「大峯名物、聖宝の登りに前鬼の降り」と山伏達の間で言われるくらい、大岩のゴロ
ゴロする前鬼への下りは険しく、長いのです。
途中の両童子岩のところでの勤行です。
両童子岩は不動明王の2人の従者、セイタカ童子とコンガラ童子に模した岩です。
熊野修験はやりませんが、この岩のてっぺん付近にへばりついて、隣の岩に飛び移る
(へばりつく)という行もあります。
(ここでデジカメのバッテリーが尽きました)

前鬼に着いたのは午後6時丁度。
昨日は10時間弱、今日は13時間の歩行、やはり疲れました。
腰掛けるともう立つのが嫌になるくらいです。
初日だけの予定だったまるいちさんと体調不良で行仙宿小屋でリタイアした1人を除
く46人が前鬼まで走破しました。
住む人がいなくなった前鬼にかつて5つあった宿坊のうち唯一残っている小仲坊で最
後の勤行をし、熊野修験団は解散式をいたしました。
1300年の歴史を誇る山伏の村、前鬼の写真を撮れなかったのは残念でしたが、ま
た写す機会もあるでしょう。