9/2 2004掲載

小生ばかり掲載して頂いて申し訳ありませんが、
またまた駄文を作ってみました。
あまり出来はよくありませんが、何卒よろしく・・・渡辺耕士


「ウナセラディ−東京」

 高校時代に聞いた歌謡曲で一番インパクトが強かったのが
「ウナセラディー東京」という唄です。確かマヒナスターズの曲
だと思いますが、その甘い歌声となによりも大都会のやるせ
ない頽廃的なメロディーに参りました。九州から一歩も外へ
出たことのない田舎物にとって、「東京」とはなんとすごか所か、
なんと甘いムードが漂うところなのかといっぺんに憧れの街に
なりました。
 このへんが田舎で育った人間の常なのでしょうが「東京は
ロマンチックな男と女が、ロマンチックな出会いと別れを繰り
返している街」というイメージが焼き付いたのです。作詞家・作曲家
の「私の履歴書」は、皆さん田舎町を飛び出してその憧れの大都会
で苦労しながらもやがて成功を収めるというものですが、
いかんせん小生その方面の才能も度胸もありません。
くやしいながらもこの憧れは胸の中に仕舞っておくしかありません
でした。
やっと思いがかなって上京できたのはそれから2年後、ある大学を
受験するためです。
不出来ながらも答案用紙を一応埋めて提出しました。
 さあ銀座だ。なんといっても東京は銀座です。行き方は勿論わかり
ませんから適当に「銀座」と名前がある駅で降りました。(今から
考えるとどうも渋谷から銀座線に乗ったみたいです)
地下鉄の駅ですから、階段を上っていくと、なんということはない
普通の繁華街が広がっているだけです。そんなことはない、
銀座ならもっと洗練されたそれこそウナセラディー東京のような
甘いムードの女性がたくさん歩いているはずだ。もしかしたらその中
の女性が声を掛けてくれるかも知れない。
 おかしい、降りる駅を間違えたのかも知れないと急に自信がなくなり
ました。当時は皆さんもそうでしょうが九州弁は得意ですが、標準語は
まるっきり苦手です。あまり口を開きたくはなかったのですが、
思い切ってお菓子屋に飛び込んで聞いてみました。
「スンマシェン。銀座はどっちにいったらよかとでしょうか」。店の女店員
は一瞬ポカンとしていましたが、微笑みながら「ここが銀座ですよ」と丁寧
に答えてくれたものでした。甘いムード一杯の都会的な方では
ありませんでしたが、その健康的な素朴な笑顔に接し本当にほっとしました。
東京の銀座は今も昔も素敵なところです。
 こんなことをやっていたわけですから、勿論入試は見事失敗でした。
ただ青春時代の胸をかきむしられるようなあのメロディー、今も深く
心に刻み込まれていますので、音程を少しずらしながら(一緒に行く友人が
そう断定します)カラオケで時々口ずさんでいます。
では又・・・
 
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