11/21 2004掲載

渡辺 耕士

「コーヒー味の砂糖」(中学生編)
 
毎朝のモーニングサービスを楽しんでいます。その日の気分
でチーズトーストにしたり卵サンドだったりで、メニューが5種
類あり日替わりで注文できるのがその店の魅力です。出勤
前に会社の近くのこの喫茶店に通いだしてかれこれ2年近
くなりますが、おいしいコーヒーをいれてくれるので不思議と飽
がきません。それと元気の良いウェートレスのお嬢さんの笑顔
もまた朝の元気の素です。
 何かの随筆に「馴染みの店を何軒もっているかが男の甲斐
性」とかいうことが書いてありましたが、小生恥ずかしながら「い
らっしゃい」と笑顔で迎えられる店としては今はこの喫茶店と近
くのゴルフ練習場しかありません。昔のことを言ったら笑われます
が10年前くらいは「小料理屋」が2軒にスナックが3軒、考えて
見ればよくお金が続いたものです。今はおとなしく我が家の「小
料理」をゆっくり、それこそ嘗めるように日本酒を味わいながら食
べるのが楽しみです。それと休日の散歩でおいしそうな喫茶店を
見つけて飲むコーヒーもまた気分をゆったりさせてくれます。
 コーヒーと言えば初めて喫茶店で飲んだ中学2年生になった
ばかりの春の日の事は鮮明に覚えています。クラスの仲間数人
と何かの行事に参加した後、博多駅(昔のあの駅です)に降り
立ち、市電の駅に向かっているときでした。目に入ってきたのが
「○○喫茶店本日開店、コーヒー半額でサービス中」の看板で
す。当時は校則がやかましく喫茶店はご法度、しかし「ダメと言
われりゃ・・・」が若者の常です。お互い目で合図しながら学生
服のまま店に飛び込みました。飛び込んだのはいいんですが、
回りは大人ばかりでどこに座っていいのかわかりません。入り口
でうろうろしていると、マスターから「カウンターを指さされ「こちらへ
どうぞ」の声が掛かりました。4〜5人でどやどやと(内心はおず
おずと)カウンターに腰掛け少し落ち着きました。出されたコーヒー
を口にしましたが、その苦いこと。砂糖をたくさん入れて混ぜまし
たが苦さはあまり変わりません。我々があまりにも苦そうに飲んで
いたのでしょう、マスターが「ミルクいれましょうか」声をかけてくれま
した。しかし初めて飲むコーヒーのことですから、ミルクをいれると
まろやかな味になるなど誰も知りません。
お互い顔を見合わせましたがみんなが何を考えているのかは一瞬
で理解できました。「コーヒーが半額だから60円が30円。しかし
ミルクをいれたらミルク代までとられて高くなってしまうのではないだ
ろうか、そうなると小遣いに・・・」そこでみんなの口から出た言葉は
異口同音に「よかです」。なんとか苦いコーヒーを飲み終えるとカップ
の底に砂糖がたくさん残っています。スプーンでゆっくりなめましたが、
コーヒーの香りいっぱいの砂糖、とても美味でした。みんなも同じ動
作で、同じ顔つきでした。これ以来コーヒーに入れた砂糖はゆっくり
と何度も混ぜる事を覚えました。人生、経験して無駄なことは何
もないようです。
「コーヒー味の砂糖」、青春前期の味は今もよく覚えています。
では又・・・

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