11/21 2004掲載

渡辺 耕士

「学年で一番」(高校生編)
 
高校時代何か一つでも「学年で一番だった」というものを
持っている人を羨ましく思います。
それが短距離競走でも、物理の試験(私はこの物理と化学
一番の苦手でした。試験の時には、前の席の淀川さんが
身体をずらして答案用紙を見せてくれたものです。淀川さ
あのときはありがとう)でも、バリトンの声量でも。
 今でこそこうして皆さんと楽しく会話ができますが、高校時
代は鳴かず飛ばずで「その他大勢組」の一人だった小生、
元気そうに振る舞っていましたが、内心はさまざまな場面
でコンプレックスを感じていたものです。そんな私が「これは
間違いなく学年NO1」だと自負しているものがあります。
あまりにばかばかしい話なので、今まで誰にも話していま
んでしたが、恥を忍んでご紹介しましょう。
 毎朝登校したあと、トイレに駆け込みしゃがんで用を足
すのが日課でしたが、ある朝使い切ったトイレットペーパー
の芯を何の気無しに転がしていましたら、弾みでストンと立
ち上がったのです。
 10cm位の高さから少し斜めに角度をつけて落とすと、
落ちる反動で立つことがわかりました。
その日は10回トライして1回くらいの成功でしたが、二日
目からは少しずつ打率アップです。
ゴルフのドライバーと違ってスナップをあまり利かせると失敗
します。落下スピードの制御はあくまでも自然に任せたほう
が良いようです。今日は打率2割5分だ、3割だと「物理」と
違ってこちらは日々成績が向上します。毎朝登校するのが
楽しくなってきました。
そしてある日のこと、2回連続、3回連続の成功が続いたあと、
なんと「7回連続成功」という前人未踏の大記録を打ち立て
たのです。ふだんは冷静な(?)小生もそのときには興奮して、
トイレの中でこう思いました。
「物理の試験がなんだ、オレにはトイレットペーパー芯立てと
いう物理学応用の特殊技能があるのだ。くやしかったら堂々と
このオレに挑戦してみろ」
ただ、さすがに教室でこのことを広言することは憚られました
ので、家に帰り近所の仲良しの犬に語りかけて自らを慰め
した。
 しかし「7回連続」はこのときの1回きりでした。その後は
どう頑張っても、3回連続が精一杯で、そのうち興味も薄
らいでしまいました。
人生頂点に立てる時間はほんの一瞬のようです。
「驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し」青春の
一こまです。
では又・・・

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