3/14 2005掲載

乳頭温泉冬景色
 
東京発のあきたこまち 降りたときから
田沢湖町は 雪の中 温泉に向かう 
旅人の群れは 誰も無口で・・・
 
3月の中旬になったというのにまだまだ秋田・田沢湖は
真冬の情景でした。
目指す温泉は乳頭温泉「孫六旅館」です。バスの終点
で降りてから更に雪道を15分ほど歩きます。出発直前
に靴を使い古しのゴルフシューズに替えたのが正解で、
ゆるい上り坂を壺坂霊験記よろしく「妻は夫を慕いつつ、
夫は妻をいたわりつ・・・べんべん」で少し難儀しながらの
道行き?でした。
しかし苦労した甲斐があってお風呂は最高でした。
特に川沿いにある露天風呂は2メートルくらいに積もった雪
に囲まれ、その向こうはブナの森です。
 ブナの枝は節くれ立っているものですから所々中空に雪の固まり
が丁度雪だるまのようにまん丸になって残っています。夕暮れ
の中、聞こえるのは下に流れる川音だけです。
 
ブナの木や 残る忘友似(ともに)の 雪達磨
 
お風呂がいいと誰でも詩人になれるようです。
 テレビ・パソコンがないため食事が終わった後は本を読むくらい
しかすることがありません。ただ夕ご飯の時に頼んだ「イワナ酒」が
ものすごく美味ですっかり酔ってしまい、部屋に戻って2〜3ページ
文芸春秋をめくっているといつもまにか寝入ってしまいました。
あとで聞くと7時過ぎにはぐっすりだったそうです。
 そんなに早く寝たものですから夜中には目が覚めてしまい、雪が
降っていましたがまた露天風呂に向かいました。ところどころに裸電球が
点っているだけで空も廻りも漆黒の闇です。昼間は見えたブナ林も
何も見えません。露天風呂に浸かりながら、冬眠中の熊が出てきたら
どうしようかなどどとくだらないことを考えます。お風呂が熱くなったときに
雪を入れるためのスコップがありますからまずは一発反撃して・・・しかし
こちらは裸だから大事な所をキックされたら困るなあなどと1人で呟いて
ニヤニヤしています。
 知らない人が見たらバカだと思うでしょう。(知っている人もやっぱりバカ
だと思うでしょう)。どうも夜の漆黒の露天風呂は詩人を俗人に戻すよう
です。
早春の乳頭温泉、思わぬ冬の寒さの中でしたが雪の壁に囲まれたお風呂
は間違いなく「一級品」でした。

では又・・・

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