7/26 2004掲載

「夏の思いで」・・・・・渡辺耕士
 
夏が来れば思い出す・・・味が二つあります。
どちらも「ああおいしかった」というレベルのもので、
とりたてて皆さんに紹介するほどの話でもあり
ませんが、徒然なるままに筆を進めてみます。
 
その一。
皆さんご存知の「玉竜旗」争奪剣道大会の時ですが、
それが1年生のときだったのか2年生の時で
あったのかは定かでありません。
 まして、北郷さんはじめ同期の仲間の選手の
誰が出場したのかもよく覚えていませんが、一所懸命
に声をからして応援した事と暑い日だったことだけは
よく覚えています。
 一回戦か二回戦を勝ち抜き休憩時間となりました。 
懐には月々の小遣い「200円」が入っています。
売店に行き、生まれて始めて「ファンタグレープ」なる
飲み物を口にしました。なんという美味、大袈裟に言えば
乾いた身体の中に「冷たさ」と「うまみ」が溶け込んで行く感覚です。
勿論「コカコーラ」は知っていましたし飲んだこともありまし
たが、不思議なことに「ファンタジュース」は少し高かった事も
あったためか始めての経験でした。
 小生が住んでいた馬出町の隣に箱崎宮があり、秋には
「放生会」という大きなお祭りがあります。
(多分今も続いていると思います)
小学生の時には友達と毎日通ったものですが、その屋台
(夜店)に「何杯飲んでも 10円」というジュース屋が出て
いました。ジュース屋と言っても粉末を井戸水で溶かしただけ
のものですから、甘ったるい味がするだけの、今から考えると
健康には極めて良くないジュースだったと思います。
 さてここからが小生の自慢話になって申し訳ありませんが、
その店で仲間と何杯飲めるかの競争をしました。そして見事
チャンピオンに輝いたのです。たしか11杯飲んで少し苦しく
なったことをよく覚えています。その店のご主人に「大丈夫か、
そげん無理してから飲まんでも」と声を掛けられた事も昨日の
ことのように甦ります。
 その粉末ジュースと比べて「ファンタグレープ」の口あたりの
なんと素晴らしいこと。
王さん風に言うと「ファンタグレープはジュースのホームラン王」です。
この思いは今も変わりません。
 
 その二。
小生、今はハローワークで見つけた小さなメーカーで勤務して
いますが、15年くらい前はある大手メーカーの人事マンでした。
 当時バブルの崩壊前兆の影響でどこの会社も厳しい人事
政策が次々と実施に移されていましたが、ご他聞に漏れず
その大手メーカーも同様でした。小生もない知恵を絞り社員
(特に関連子会社社員・子会社出向社員)にとっては厳しい
制度策定に関わったものでした。
 ある夏の日、その人事制度の説明に都心の関連会社を
訪ねました。
当たり前ですが、10時から始まった説明会(その会社の
幹部10人くらい参加)は質問の嵐です。やっと終わった
ときは午後1時半。ほうほうのていで会社を出る事になり
ましたが、勿論誰も食事に誘ってはくれません。憔悴した
頭と身体で「小諸蕎麦」(立ち食い蕎麦屋)ののれんをくぐり
ました。「冷やしたぬき蕎麦 大盛り」(疲れていてもなぜか
大盛りです)を注文し口に入れました。
 うまい!肩を落とした身体にしみこんでくるうまさです。
そのときどういう訳か不覚にも涙が滲んできたことを覚えて
います。今考えてもなぜあのときにと思いますが、普段ボーッと
している小生が久しぶりに緊張を強いられやっと解放された
ためかもわかりません。
のど越しの冷えた蕎麦の感触は今もこの身体が覚えているのだ。
二番煎じですが「小諸蕎麦の冷やしたぬき(大盛り)は、
お蕎麦のホームラン王です」この思いも変わりません。
 
どちらの味も、誰でも、どこでも味わうことが出来るもので
胸を張って紹介できるものではありませんが、もし今度皆さんが
口にするときがありましたら、「ああそういえば」とこの雑文を思い出して
頂ければ幸いです。
では又・・

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