1/27 2006掲載

ヨンフルエンザと隠れキリシタン
 
                   冬のソナタに想う Part2
 
 by K.mitiko



昨年のお盆明けから5回も見てしまった「冬のソナタ」については、こんなにも
人の心をとらえるドラマはどうしてうまれたのか、何故韓国なのか等さまざまなことを知りたい
と思うようになりました。友人の貸してくれたDVDや写真集、本を通して「冬のソナタ」を
生みだした韓国の風土や背景を知るようになり、その過程でペ・ヨンジュンの魅力に惹き
つけられていきました。この状況をインフルエンザならぬヨンフルエンザにかかったと言うそうで
友人から慢性化して完治しませんから覚悟した方がいいですね、と言われています。

「冬のソナタ」の魅力はM.V.Kさんもおっしゃっていました美しい映像、美しい音楽
美しいセリフにつきると思います。私も最初に惹きつけられたのは会話と音楽の魅力、
そして主役の二人の絵のように美しいヒーロー、ヒロインぶりでした。
私は二人の男性に思はれ、悩みながらも毅然として生きるヒロインを演じたチエ・ジュの
方が印象に残っていましたが、このドラマが生まれた背景などを知るようになって今では
「冬のソナタ」=ペ・ヨンジュンとなり、彼の謙虚さや志の高さなどその人間性に大ファンと
なりました。
 
「冬のソナタ」が2003年4月NHKで初めて放映されて以来、爆発的な人気を呼び多くの
中高年の女性の圧倒的な支持を得ました。その支持はペ・ヨンジュンに集中して彼の度々の
来日の際の様子はニュースなどで話題になり、一部の突出したファンの行動とそれを興味本位に
報道したマスメデイアの影響もあって、多くのファンたちは隠れキリシタンのようにひっそりと楽しむ
状況に置かれてしまいました。ファンの多くは大人になってから誰か特定のファンになったり、
のめり込んだりすることもなく家族を愛し、家庭を大事にする真面目な女性たちで、ごく普通の
いい奥さん、良いお母さんとしてくらしている人々でした。
 
そのことは私の身近にいるペ・ヨンジュンの熱烈なファンである友人を見ていても
共通していました。その友人とは長い付き合いでしたが私が「冬のソナタ」のファン
であることを表明したときから彼女との関係は一変し、CDに始まりDVD、写真集や
本と彼女の家庭のヨンゲル係数(エンゲル係数のこと)を高めた資料を惜しげもなく
提供してくれ、そのお陰で私も熱烈なペ・ヨンジュンのファンとなりました。
 
「冬のソナタ」の魅力に言葉の力や韓国の俳優の志の高さや人間性の魅力が
あげられていますが、言葉の力については「冬のソナタ名セリフ特集」が頻繁に
くまれるほどその会話には言葉の魅力があり、また韓国の俳優はフアンに対して
礼儀と優しさのこもった誠実な姿勢や、自分の考えるところをきちんとした言葉で
伝えられる能力、前向きに真っ直ぐに努力してゆく爽やかさがあり、それが人間的な
魅力になっていると言われています。その典型がペ・ヨンジュンで私の友人は
「見るものをこれほど幸せにしてくれる人はなかなかいないです。インタビュー記事を
読んでも、本人の言葉を聴いても、原理原則がはっきりしていて自分の言葉をもっている、
哲学があるといつも感じます。そこがイチローにも通じる超一流と言われるひと独自の
ものだと思います。」と言っていますが私も同感です。彼は自分を無条件に支持してくれる
ファンを「家族」と呼び謙虚に誠実に向き合う姿勢にファンも感動し、一俳優とファンとの
関係を超えた人間同士の交流となっています。
 
「冬のソナタ」を見る文学ととらえたファンたちはただ「ヨンさま」と叫ぶだけでなく
韓国語や歴史を学ぼうとしたり、韓国まで出かけたりして真面目に韓国と
向き合おうとしています。私も色々な資料に目を通すうちに韓国社会に根を
下ろす儒教の影響の意外な大きさや、20世紀の韓国の植民地、民族分断、
朝鮮戦争、民主化弾圧と悲劇のくり返しの中で、愛し合いながら
別れざるをえなかった無数の恋愛、その記憶が生々しく残りどんなに純粋に
愛し合っていても当人たちの意思だけでは愛が成就しないというような諦めが、
愛しながらも別れを繰り返す「冬のソナタ」に反映されているように思いました。
 
あるエッセイに「ペ・ヨンジュンにひかれている女性は、果たして生身の
男として彼を見つめているのだろうか、むしろ、多くの人は人間としての
ペ・ヨンジュンが好きなのでは・・・・・。男と女の違いを超えた普遍性が、
女性の心を捉えて離さない。」
ペ・ヨンジュンのファンたちはインターネットの時代にふさわしく、サイトに集い、
さまざまな情報を交流しながら彼の呼びかけに答えて活発な活動を
展開しています。ペ・ヨンジュン自身は「スマトラ沖地震」や「新潟地震」や
日本テレビの24時間TV等への多額の寄付をしていますが、ファンたちも
見習って募金活動をしていて、私の友人もワールド・ビジョン・ジャパンを通して
「スマトラ沖地震」に寄付をするなど社会的な活動の一端を担っているようです。
 
俳優としてのペ・ヨンジュンは自分の変化する多様な姿をファンに見せたいと
「冬のソナタ」の後、初めての映画として出演したのが、朝鮮王朝時代の貴族の
恋愛模様を描いた「スキャンダル」でした。「冬のソナタ」のイメージを覆すようなや
役柄も完璧主義の彼らしく周到な準備とその熱演で高く評価されて演技賞を
受賞し映画は韓国で大ヒットしました。
 
貴族の夫人たちと
 
 
丁寧な時代考証と素晴らしい舞台装置を背景に粒の揃った俳優たちの
演技のアンサンブルは見ごたえのあるものでした。
 
この写真のペ・ヨンジュンの変貌ぶりには驚かされてしまいます。
 
「スキャンダル」の次に出演した映画は「8月のクリスマス」で知られる
ホ・ジノ監督の「四月の雪」でした。
 
交通事故によってお互いの配偶者の不倫がわかり絶望のどん底に落とされた
二人の男女の愛を描いていて、セリフも動きも極端に少ない中ペ・ヨンジュンの
表現は、「冬のソナタ」とも「スキャンダル」とも違う彼の持つ多様性に
驚かされました。
 
「四月の雪」はアジア10ケ国で同時公開されましたが、中国でのの公開が遅れると
わかったとき中国のファンたちは同時公開を求める署名運動を繰り広げました。
それを日本、韓国、台湾などのアジア諸国のファンが応援して実現にこぎつけ、
当初のセリフの吹き替えを覆し中国のファンたちの求める字幕上映になったのは
アジア諸国のファンの連帯の力だと言われています。「冬のソナタ」はエジプトや
アラブ首長国連邦でも上映されて、その人気の高まりとともに日、中、韓の
ペ・ヨンジュンファンの絆は深まり、その連帯の輪はイスラム圏にまで広がりつつ
あるようです。ペ・ヨンジュンの文化交流を通してアジアを一つにと言う思いは
ファンサイトでは国境を越えて広がりつつあるようです。

Part1はこちらです。 
 
あとがき
 
私も「冬のソナタ」とペ・ヨンジュンのファンになったとき隠れきりしたんにならざるを得ない
状況になり、このレポートは小春ママさんや弟の励ましと身近な友人から聞く
ファンたちのいじらしくもけなげな姿に感動してやっとまとめました。黒柳徹子さんや
高野悦子さん(岩波ホール総支配人、東京国立近代美術館、フイルムセンター
初代名誉館長)もファンであることにもはげまされました。
 
参考文献
 
韓流インパクト      小倉紀蔵      講談社
人は何故ペ・ヨンジュンに惹かれるのか    Kang IIibong       角川書店
冬のソナタから考える   高野悦子  山登義明        岩波ブックレット
韓国ドラマ      3号 8号  
 

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