日本を深く愛するフランス人女性・桜麗里(オーレリー)さん


桜麗里さんと知りあったのはまさに「袖振り合うも多生の縁をそのままいったものでした。
昨年夏、宝塚歌劇「スカーレット・ピンパーネル」を家族で観に行ったときのことです。
それぞれ用事を持った我が家族は当日、大劇場入り口で待ち合わせることにしていたのですが、
時間ぎりぎりになって現れた家内が二人の若い外国人女性を連れているではないですか。
今津線の電車の中で知りあったそうで、きっかけは日差しが強いので車窓のブラインドを下ろそ
うとしたら隣り合わせたその外国人女性がすぐさま代わって降ろしてくれ、「有り難うございます」
と日本語でお礼を言ったら「どういたしまして」と流ちょうな日本語で返してこられたのでそれから
会話が弾み、宝塚歌劇を鑑賞しに行くというのでをそれならご一緒しましょう、ということになった
そうです。
フランス人だそうで妹の桜麗里さんは4年前に来日、大阪外大で日本語を1年間勉強し、今は神
戸大学国際文化学部でアートマネージメントを学んでいるそうです。
英国に住むお姉さんが来日したのを機会に阪急電車や駅構内でよく見るポスターから大変関心
を抱いていた宝塚歌劇をその日、初めて姉妹で観劇にきたとのこと。
この日は休憩時間にお茶を一緒する程度で再会を約して別れたのですが、それが8ヶ月後の今
年3月、桜麗里さんとの再会がかない、私ら家族3人は彼女と夕食を共にしながら実に有意義な
ひとときを過ごしたのです。
このとき、私たちは何故桜麗里さんが日本にやってきたかの理由を知ったのでした。

桜麗里さんはフランスはストラスブールの出身で大学に入ったとき、第二外国語をドイツ語か日本
語をするかで迷ったとき、お母様が村上春樹の小説のファンで日本に強い関心を持っていることが
影響したのか日本語を取ったそうです。
大学の日本語教師(フランス人)が大変良い教師であり、その人の影響で日本に興味を持ちだし
たところに同じ日本語科の学生が紹介してくれた日本の漫画に魅了され、それ以来、漫画だけで
なく、漫画を通じて日本文化に深い興味まで抱くようになったのです。
彼女は大学を中退し、大使館を通じて日本の受け入れ先の大学を探したときに、まず、大阪外大
で日本語をマスターし、次に神戸大学の国際文化学部に入るという道筋を見つけ、4年前に来日し
て現在に至っているのです。
彼女は日本文化に深く傾倒していくようになってから日本と日本人にすっかり惚れ込み、外国人が
最も苦手とする漢字の学習も愉しくてしょうがないというくらい、日本文化を学ぶことにひたすら精進
したのです。
私や家内と娘が共通して驚くのが彼女の日本語能力の素晴らしさで、今どき日本人でこんな尊敬語、
丁寧語を交えて奇麗に喋れる若い女性なんてあまりいないと娘も言いますし、なまりが無かったら
外国人と喋っているという感じがしないというのが私たち家族の共通した印象です。

そして嬉しいことに宝塚歌劇も彼女は一目惚れし、以後5回公演に行き、初めて観たときの星組公演
「スカーレット・ピンバーネル」の敵役だった柚希礼音のファンを自認するまでになっているのです。
一緒に観たお姉さんも以来ファンになったと聞いたので、日本語が全然分からないお姉さんが?と
思いましたが、「スカーレット・ピンバーネル」のストリーを小説で読んで知っているお姉さんは言葉が
分からなくてもドラマの展開が理解できとても楽しめたとのこと。
また、その後に来日した両親もお連れしたそうですが、あまり気乗りしない風だった父親も観た後に
すっかりはまってしまい、DVDなどを購入して帰国してからも宝塚歌劇を楽しむという風に、桜麗里
一家はみんながヅカファンとなったそうです。
安蘭けい退団後の星組の男役トップに柚希礼音が決まったことを我が事のように喜んで熱っぽく語る
彼女を見ていると宝塚歌劇が欧米人にも評価され得る立派な文化であることの証左を見るようで私
も嬉しくてならなかったです。
オーレリーさんが自分のフランス名の音に似せて作った日本名、桜麗里もタカラジェンヌのような響き
があり、「桜、麗しき里」とも読み取れ、何と素敵な命名なんだろうと思いました。
桜麗里さんは生涯日本で過ごしたい、と決意しているようで大学を出たあとの就職のことを今、彼女
は頭を悩ましているようです。

こんな桜麗里さんの話を酒を酌み交わしながら聞く愛国者の私が舞い上がらないわけが無く、私は
すっかり饒舌となって日本の歴史上の人物で彼女もよく知る織田信長がヨーロッパにおいてはルネ
サンス時代のチェザーレ・ボルジアに似たタイプの武将であった話や、仏教とキリスト教の比較、能楽
とギリシャ悲劇の似ている面についての話などをすると、彼女もそれにひたむきに話に付いてきてくれ、
家内や娘も呆れるくらい私たちは意気投合してしまったのです。
特に日本のキリスト教の話からキリシタンの細川ガラシャや高山右近の生き様を話して聞かせたので
すが、当時のヨーロッパの宣教師たちにその聡明さと美貌で強い印象を残した細川ガラシャに彼女も
深い感銘を受けたようでして手帳に細川ガラシャの名前をメモしていました。

彼女が日本に来て大変驚いたのがマリー・アントワネットの人気と、逆にカトリーヌ・ド・メディシスやアン
ヌ・ドートリッシュ等、フランスでは著名な王妃のことを知る日本人が少ないことだったようです。
「アントワネットは日本人女性に大受けし、またフランス革命でギロチンに掛けられたというドラマティック
な面でも有名になったのだと思います」と話すと「確かに断頭台に消えた王妃として有名になるのは判り
ますが夫の善良なルイ16世まで道連れにした軽薄で浪費家の愚かな女としてフランスではこれほど人
気の無い女性はいないのです。日本人のアントワネットへの思い入れは私たちフランス人には理解でき
ません」と言われたので
「桜麗里さんも大好きな漫画という手法で、マリー・アントワネットは悲劇の王妃として美しく描かれ、これ
も桜麗里さんの好きな宝塚歌劇で空前の大ヒットしたことが大きく原因していると思います」
と応えると「確かにそのようですね」と彼女は納得しくれました。

彼女は仏教に深い関心があるようで(信仰の対象としてではなく、日本文化を学んで行く上で仏教の影響
は無視することができないほど大きいためだと思われますが)、仏教は宗教ではないと言う宗教学者の
意見もありますが、とか、キリスト教にはその教理をある程度知る事ができるバイブルというものがありま
すが仏教ではどの宗派でも共有できる仏教を知るためのバイブルに匹敵する教典はないのでしょうか、
とかなかなかに鋭い質問をしてこられ、これがまた私の饒舌を誘うのですが、それについて語り出すとこ
のレポートが限りなく長くなってしまいますので今日はこのあたりで終わりとさせてもらいます。

桜麗里さんは私のような日本の歴史、宗教をヨーロッパのものと比較して話してくれる人は自分の周りに
はいない、これからも色々教えて欲しい、と言われるのです。
こよなく日本を愛する桜麗里さんは今では私にとって娘のように大切な存在となっており、私は自分の身
に付けてきた雑学の知識は惜しみなく伝えたく思ってます。

下記のメールは我が娘が桜麗里さんから初めて頂戴したメールです。
桜麗里さんの日本語能力を知っていただきたく、ご本人の了解のもと載せるものです。

ユミコーモ様、
皆様、 

返事が大変送れてしまい、本当に申し訳ございません。そして、裕美子様とそのお母様が出られる歌唱劇に
お招きを頂き、有難うございます。残念な がら、来月の中旬にクリスマスにフランスに帰り、その分のバイトを
その前にしないといけませんので、それまでの週末はみんな忙しいです。その前もお母様が ご招待してくだ
さったイベントに行けなくて、本当に残念に思います(限れた時間で姉、それから両親に案内しないといけない
場所があまりにも多かったからで す。)今後とも何か面白そうなイベントがあったら、是非お知らせください。
行けたら、喜んで参ります。
また、私も大ファンになった宝塚でもお会いしましょう。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
 
   オーレリー