登山路のない尾根を行く 大峯トサカ尾根から弥山へ 1997.10.25〜26 by リワキーノ
樹林の深い大峯とか台高山系に取り憑かれた登山者が最終的に魅了されるのが登山路の無いコー
スの山行。
地形図とコンパスだけを頼りに目指す山に向かってルートファインディングする魅力を一度味わったら
病みつきになるのです。
下記の地形図に記されている二つの黄色の線は大峯第二の標高を誇る弥山への代表的コースです。
左側の線は尾根沿いに登っていく一般向きコース。
右側中央の線は弥山川の渓谷沿いに登っていくやや熟練向きのコース。
そしてそれらの右にオレンジの線が記されていますが、これが登山路のないトサカ尾根のコースであ
り、このコースを行ったのがこの山行レポートです。
※途中、オレンジの線が消えているところは従来のコースを利用したため。
前日の深夜に林道詰めまで車で乗り入れ、そこから徒歩5分ほどのところの弥山川の涸れ沢に野営
します。
左端は和和又山ヒュッテの主人、岩本さん、右側の鉢巻き姿はKO-BUNさん。
このコースで弥山まで行けるのではないかと想定して私たちに山行を提案したのはKO-BUNさんです。
出発。
弥山川はかなり先の方まで水の流れは伏流となって地面の下を流れています。
樹林の向こうに見えるのがトサカ尾根。
伏流の弥山川を遡行しながら、左側のトサカ尾根に登る地点を探るのですが、それについてはKO-
BUNさんがちゃんと分岐点を心得ています。
弥山川からトサカ尾根に登るコースを見つけて順調に登っていくのですが、けものみちみたいな踏み
跡はやがて完全に消え、前進も難しくなってきた頃、私たちは斜面を上に登ることを決めたのです。
急傾斜の斜面を我々は強引に登っていきます。
そして尾根に至る途中でこのような巨大な洞をもった大木に出会うのです。
初めてこの地にたどり着いたとき、ホオの葉っぱが周囲に落ちていたのでこの大木はホオの木と思っ
たのですが、岩本さんは栃の木だと言われます。
過去にも2回、このコースを登りましたが、道無きルートなのに、いつもこの大洞のある樹木のところ
にやってくるのです。
尾根に出るとこのような大峯の山々が見渡されます。
密林の薮こぎを強いられたあとにこのような景観に出会うとき、ルートファインディングの山行の醍醐
味を痛感するのです。
ゆるやかな疎林帯に入ります。密林のあとの疎林帯、これも大峯の自然のこたえられない魅力です。
しばしの休憩が桃源郷にいるような思いにさせてくれます。
弥山川峡谷を隔てた向かいの尾根。明日はあの尾根を伝い、正面の丸いピークの手前から前面の
尾根伝いに下山します。
野営の地に到達しました。
テントを張るとき、斜面は絶対に避けなければなりません。斜面では安眠できないのです。
その点、この疎林帯は平坦なところであり、野営地として最適です。
野営の最初はたき火を作ること。10月下旬の大峯は日がかげるとたちまち冬の世界となります。
対岸の頂仙岳に日没が。
明けて10月26日の朝。
かなりの寒さを感じるのはこの樹氷を見れば当然のこと。
標高が高くなってくると大峯名物のトウヒとシラベ(シラビソ))の針葉樹林帯に突入。
枯れたあとも白骨をさらすかのように立ち続けるトウヒとシラベが植生するのは近畿ではこの大峯と
東側の北山川の対岸に広がる台高山系の山のみ。
そしてついに弥山に到着。
天川弁財天の奥宮である弥山の社に参じるあまたの巡礼者はこの鳥居をくぐって社に参詣するのに
社の背後から詣でるのは我々だけでは・・・
弥山峡谷の最上流部。このような穏やかな渓流となっております。
下山はもっとも一般的な登山コース、天川河合への道を選び、途中から再び、弥山川の今度は左岸
の尾根を降りて行きます。
途中の頂仙岳の頂上に登ると弥山方面のこのような景観が。
昨日登っていったトサカ尾根。
手前、トサカ尾根と奥に大峯奥駈道の尾根。
大普賢岳が正面にそびえ、右側の方に行者還岳が。
「あの尾根を登ってきて今、こちらの尾根にいるのですねぇ・・・」とKO-BUNさんの述懐が聞こえそう。
あれから14年の歳月が・・・
もう一度このコースにアタックできたらと願望します。