まさか! 滋賀県守山市・藤高清二(会社員・54歳)
 6月末に、めいの結婚式に出席した。兄の長女で、生まれた時から知っている。

 20代、30代のころは、毎年宮崎に帰省した。その度に親、きょうだいで宴会が始まる。
子供も集まってくる。好き勝手なことを言ったり、怒ったり、笑ったり、ワイワイガヤガヤ。
子供たちに「結婚する時には、おじちゃんを呼んでな」と言うと、必ず帰ってくる言葉が
「おばちゃんだけでよい、おじちゃんは帰ってこなくてよい」だった。そう笑顔で言ってい
た1人が、このめいだった。

 昨年9月、姉の子供の結婚式で久しぶりに会った。いつものように話していると、「私の
結婚式にも来てね」と言われた。そして、とうとうその時がきた。結婚式の招待状が届いた。
当日、滋賀から福岡へ向かった。なぜか前日よりほとんど眠れなかった。

 結婚式、披露宴と進む。いつも披露宴では余興を頼まれる私だが、今回はなく、ホッとし
ていた。すると、お色直しのための新婦退場の時、司会者が「新婦がぜひ一緒に退場したい
方がいます」と言い、場内に私の名前が響いた。

 「まさか!」。何と私を指名してくれたのだった。招待者の中を2人で歩く。本当の娘の
ような気がして涙が出てきた。私には一生縁のないことだと思っていたので、忘れられない
結婚式になった。

 結婚しても子供のいない私へのプレゼントだったのかもしれない。本心は聞いていない。
ありがとう、真由美。

毎日新聞 2009年8月7日 大阪朝刊