映画「朱鷺島 創作能『トキ』の誕生」を見てきました。 by リワキーノ 2010.10.25
一昨日の23日に映画「朱鷺島 創作能『トキ』の誕生」を家内と一緒に観てきたのですが、それは期待を大きく
上回る素晴らしいものでした。
創作能がどのようにしてできあがっていくのか、佐渡の鼓童や花結(女性の舞踊団)の協力を得た創作能が古
典能にはない斬新さを持っていることか、そしてまたこの佐渡に深く関わる創作能に多くの地元の人たちの尽
力があったことか、そして日本の伝統的芸能の能楽が如何に芸術的な奥深い表現手段を持っていることか等
々を如実に描いており、深い感動の中、見続けていて、いよいよ本番を迎えるときの私の緊張感というものは
いや増しに高まるものがありました。
佐渡に渡る船上で創作能「朱鷺島」について語る津村禮次郎さん(画像はいずれもパンフレットからの複写)
佐渡の古い能楽堂
佐渡には、30以上もの能舞台が残っていて、これは日本全国の能舞台の3分の1にあたるそうです。
佐渡の小学校の生徒達にトキへの想いをつづってもらった原稿
これらをもとに津村さんら能楽師たちは謡の文言を考えるのです。
できあがった謡曲を拍子をとりながら謡う津村さん
花結の女性3人と鼓童の男性1人を交えての稽古
裏方のボランティアに励む地元の人たち。
能楽堂の戸はずしに始まって、橋掛かりの手前に植え付ける赤松の枝木の採取から植え付け、大太鼓の台座をス
ムーズに移動できるよう、舞台下の地面に板で作られた渡り廊下の制作、敷き詰めや、かがり火の台および薪の
準備、神社近辺の灯りとなる木製の灯籠作りとすべての裏方の作業は地元の人たちの手弁当で行われます。
通し稽古
他の舞台芸術と違って古典能ではプロの能楽師たちは要所の打ち合わせをする以外、本番と同じ通し稽古、いわ
ゆるゲネプロをしないのが普通だそうですが、鼓童や花結などの普段なされない組み合わせのせいでしょう、通し
稽古をしました。
鼓童の太鼓は朱鷺を演じるシテが舞台上で衣替えをする間をとりもつ役割です。
本番が始まり、舞台に出る直前にシテの津村さんは能面を付けます。
恐らくもっとも緊張するときなのではないでしょうか。
笛、小鼓、大鼓の三拍子による囃子方の発する囃しの中をしずしずと登場するシテ。
私はどんな演目でも能楽が始まったときの最初のこの瞬間にいつも背筋がゾクゾクとする戦慄のような感動に襲
われます。
能楽の厳かさ、崇高さを最も感じるときです。
衣装替えをした後のこの薄い桃色の衣装をまとった朱鷺の姿の何と美しく、気高かかったことでしょうか。
1時間半の上映が終わったあと、しばらく呆然とした想いで私は席に貼り付けとなってしまいました。
私や私の娘に比べて能楽にはさほど関心の無い家内が深い感銘を受け、終演後、急いでパンフレットを買い求
め、舞台での挨拶を終えてロビーに出て来ていた能楽師津村禮次郎さんに「大阪での公演は無いのですか?」
と尋ね、「この創作能は佐渡でのみ行われるのです」との津村さんの返事を聞いてひどくがっかりしたくらいの
惹かれようでした。
この話からも能楽に馴染みのない人にも絶好の能楽の世界への誘いとなるべき作品なのですが、残念ながら、
監督、能楽師が舞台挨拶に立つこの日の土曜日でも90人収容の劇場にはわずか3分の1しか観客は集まらず、
それで私は少しでも多くの人にこの映画を見てもらいたく、私の関西在住の知己で芸術に深い関心をよせる方達
へ案内を送らせてもらいました。
「朱鷺島」は今までに4回公演されており、その都度新しい演出が試みられているようですが、「朱鷺島」がやが
て古典能となり、後世まで残っていくことを私は願っております。
また、私はこの創作能を見るためにいつか佐渡に行きたく思っております。
下記のURLで予告編が見られます。
http://www.nagaru-miyake.com/trailer_flv_page/tokijima_flv_trailer.html
映画「朱鷺島 創作能『トキ』の誕生
10月16日(土)〜10月29日(金)
連日朝10:00〜 11:30
一般1,500円 (60歳以上1,000円)
専門・大学生1,300円
中・高・シニア1,000円
大阪第七藝術劇場
http://www.nanagei.com/
大阪市淀川区十三本町1-7-27
サンポードシティ6F
TEL:06-6302-2073
阪急十三駅で下車。西口改札口を出て商店街を通り抜けると大きな通りに出るので信号を渡って左の方に行き、
サカエマチ商店街に入って行くと、左手に屋上にボーリングのビンが立っている建物があり、そこの6階。