嬉し、恥ずかしの八甲田の混浴  by リワキーノ 2012.05.31

手打ち庵殿がさらっと触れている八甲田のひば千人風呂の混浴のことでは根が真面目で羞恥心の
強いリワは真剣に悩んだのですぞ。
いえ、高校同窓会仲間の男女が旅先で混浴してよいものか、というそんなモラル的段階の話ではあり
ません。
私たちの同窓会仲間である女性達の裸体が関係ない男どもの目に晒されてもいいのか、と危機意識
をリワは感じたのです。
それでは何故リワが危機意識を持ったかの理由を順を追ってご説明いたしませう。

ひば千人風呂に着いて私はトイレに行ったため、手打ち庵、渡辺君に遅れて脱衣所に入ったのですが、
そのとき、服を着た男性が長椅子に座って煙草を吸ってました。
私はその時点では脱衣所が男女別々にあるということ知らず、男女ともここで着替えをするものと思っ
てました。
「えっ!りんりん&らんらん&歌華人さんが脱衣するとき、この男が居るのか?」と思ったのです。女
性陣は入浴の前にトイレに行ってため、まだ来ていません。
「彼女たちが衣服を脱ぐとき、この男性が居るのか!冗談じゃない、絶対嫌だ。早く煙草を吸って出て
行け!」と内心思いました。

そして私は裸になって浴場への引き戸を開けたら何と、浴槽は階段を数段下りた下にあるのです。
浴槽に浸かっている立場から見ると、引き戸を開けて入ってくる客は舞台の上に出てくる登場人物さ
ながらの位置。その間に遮る物は何も無いのです。
「え〜!らんらんさんたちはこれらの男ども(7人はいた)の視線を浴びながら湯船に降りてくるわけ?!」
私は湯に浸かっている手打ち庵の側に急ぎ行き、言いました。
「これって絶対にまずいよ!僕はこれから脱衣所のドア越しに女性達にバスタオルで身体の上下を隠し
て入ってくるように言いに行ってくる」
手打ち庵殿は奈良の大仏のようなゆったりとした表情で「大丈夫」と言います。
何が大丈夫なんだよ、と思いながらふと手打ち庵殿の後方に視線がいったとき、添付画像のような塀
が目に入ったのです。
(奥の方にある混浴の浴槽の右手)

そうなんです。
男女脱衣室は別々で、しかも女性が湯殿に入ってくるときは画像のような長い塀が脱衣所から湯船ま
で続き、塀から女性達が姿を現すときは首まで浸かっているというわけなのです。
何だ、そういうことか、と私はホッとする反面、一抹の期待はずれの失望感(いえ、それは極わずかな、
極小とでも言うべき微妙なもの)を抱きましたが、「は〜い!」という悪戯っぽい声を挙げながららんら
んさんを先頭に女性達が長い塀の先っちょから姿を現したときは俄然、ワクワクランドと湯殿は雰囲気
が変わりましたね。
黄色いタオルを頭に載せてニコニコ顔の女性陣たちのお顔の何と若々しいこと!
40代の女性が入ってきたと我々以外の男性は思ったことでしょう。
「彼女たちは僕らの仲間だもんねぇ」と私は聞かれもしないのに言いたい衝動に駆られましたぞ。
女性陣は境界線から遠く離れたところにとどまったままでして、湯は不透明な乳白色でしたから、近く
までおいでよ、と言いたかったのですが、さすがに言い出せず、女性陣はその距離を保ったまま湯殿
を後にしました。
でも同じ湯に一緒に浸かったという思いは何とも言えぬ甘美な気持ちにさせてくれ、身体は火照り、
心は浮き浮きする思いでした。