ボードワン国王とファビオラ王妃
8月12日の日曜日、家内の通う宗教法人に付き合いで出かけて行ったところ、元代々木ゼミナールの
名物講師で現在、会社社長をしているM氏とばったり出会いました。
常々、私はこの宗教法人の中で自分が単なるペーパー会員に過ぎないことを表明していたのですが、
M氏は「ペーパー会員と言われるが、リワさんは事典のような分厚いペーパーです」と言われたことが
あるのです。
M氏は奥様と若い外国人と日本人女性を伴っておりまして、「この青年はベルギーから来日して阪大
に留学しているのです」と外国人青年を紹介するのです。
「初めまして」と日本語で挨拶するそのベルギー人青年の礼儀ただしく、流麗な日本語と端正な風貌
に感銘を受け、「ベルギーからいらっしたのですか。私はあなたの国の前の国王のボードワン陛下の
ファンなのですよ」と私は言ったのです。
その青年は驚愕の表情で私を見つめ、「ボードワン国王のことをご存じなのですか?」と言い、M氏も
仰天した表情で「リワさん、ベルギーの前の国王の名前まで知っているのですか?」と個性的なギョロ
目で言われます。その驚きようから多分、M氏は現国王の名前も知らないのではと思いました。
「知らないわけがありません。ボードワン国王ご夫妻は天皇家にとっては家族同然の存在だったので
すから」と言ったところ、そのベルギー人青年は「そうです。そうなんです!」と言い、私に熱い眼差しを
向けるのです。
エリザベス女王夫妻と。
ボードワン国王は今の天皇陛下ご夫妻とは数歳年上の同じ世代の方です。
ヨーロッパの王室の中でも天皇家との親密度が抜群の王様でして、ご夫妻で国賓として日本を訪問され
たときも当時皇太子だった今上陛下の住まいの東宮御所を訪れて団欒をされ、庭の芋掘りに興じたり、
当時、幼かった秋篠宮様とピンポン遊びをされたり、また、ファビオラ王妃がスペイン出身だったので
国王夫妻はスペインに別邸を持っているのですが、高校生のころの今の皇太子殿下や大学生のころ
の清子内親王殿下(現、黒田清子さん)らをそこに招いて長期滞在させるなど、親族のように親しかっ
たのです。
東宮御所で。
昭和天皇が崩御されたとき、欧州の王室でトップを切って出席を表明され、大葬のとき、ボードワン国王
夫妻は数十カ国の元首たちのナンバーワンの席次にするよう日本国も対応しました。
平成5年にボードワン国王が急逝されたとき、その葬儀に天皇皇后両陛下が出席されましたが、歴代
天皇で外国王室の葬儀に出席したのは初めてのことで、このとき天皇皇后両陛下は葬儀の行列の先
頭を歩かれました。
ご夫妻にお子様はおらず、ファビオラ王妃は王の葬儀後、間もなくして清子内親王殿下を呼び寄せられ、
スペインの別邸でお二人だけで亡きボードワン国王を偲ばれたそうですから、ボードワン国王ご夫妻
と天皇家の人々の絆は友人以上の深さが感じられます。
ファビオラ王妃
これらの私のボードワン国王夫妻への思いを逐一語る時間なんかありませんから、私はただ、「日本
とベルギーの友好に大変な尽力をしてくださったボードワン国王がお子様に恵まれず、亡くなられたとき、
王妃さまはどんなにお寂しかっただろうかと思いました」としか言えませんでした。
晩年のファビオラ王妃。アルベール国王(ボードアン国王の弟)ファミリーと。
しかし、そのベルギー人青年は私の言葉に大変な感激を示され、「ファビオラさまは今もお元気で福祉
活動に活躍されてます」と私に言われるのです。
別れの挨拶をしてM氏の一団が去っていくとき、そのベルギー人青年は何度も私の方を振り返ってい
ました。