八十五の詩(うた)  喜多内 十三造

何時の頃からだろうか
来る日を熱く迎えるより
去る日を静かに見送ることに
 馴染んでしまったのは

朝日より夕日が好きになって
夕焼け空に立ち止まっている自分がいる
登る石段が過ぎて仕舞って
目の前には下る石段が続いている

歳を重ねるとは
過ぎる時間を束ねることか
・・誰に聞くでもなく独り呟いている
  八十五の詩(うた)

これでいいんだ
これがいいんだ
過ぎた時間がこの日を作ってくれたんだ
夕焼けに向かって進む
これを勇気と言い換えて
振り返れば何と長い後ろ影
人よ 美しく生きよ!
友よ 悔いなく生きよ!
君よ 振り向くまい!
一日一日が再び返らない人生だから