アレクサンダー大王とカエサルのどちらが偉大か?
これは過去のメモ帳をいろいろ見ていたときに見つけた2009年7月の談話室の投稿記録のファイル名
から内容を探しだし、表題の件に関するもののみ抜粋、編集したものです。

8572 アレクサンダー大王 投稿者:リワキーノ 投稿日:2009年 7月26日(日)16時29分10秒
編集済
 すみません。
再び、アレクサンダー大王の話をさせてください。
こんな話題が好きなのです。
興味ない方は遠慮は要りませんから他の話題をどんどん投稿してください。

歴史好きで世界史に深い関心を持つ人の間でのアレクサンダー大王の存在は特別なものがあ
ります。
わずか33年の短い生涯でヨーロッパとアフリカ、アジアにまたがる大帝国を築き上げ、ヘ
レニズム文化が形成される基を作った人なのです。
つまり、アレクサンダー大王の大遠征によってギリシア文明の影響が同じ地中海世界のエジ
プトやペルシアだけでなく、遠くインドまで及ぶことになったのです。
ヘレニズム文化はやがて時代を経て極東の島国日本にも伝搬し、法隆寺の柱にまで影響(エ
ンタシス様式)を与えています。もっともこれについては最近、パルテノン神殿の柱と法隆
寺の回廊の柱との間に関連性はない、という学説も出ているようですが。

ルーブル美術館の至宝、ミロのヴィーナスとサモトラケのニケ像はヘレニズム文化が残した
のです。

最近、私が紹介した『新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか』の本の問いかけも、実はヘ
レニズム文化の影響を大きな起因としていることを答えのなかに挙げているのです。

これらの元をつくったアレクサンドロス3世(大王のギリシア語読み)はもっとも大王の名
にふさわしい人です。
プルターク英雄伝(正式の書名はプルタルコスの「対比列伝」)は古代ギリシアとローマの
英雄たち48人をそれぞれ似たような者同士で二人を組み合わせ、ギリシア方とローマ方と
交互に紹介する文字通りの対比列伝なのですが、アレクサンダー大王と対になっているロー
マ方英雄はユリウス・カエサルなのです。
二人が古代地中海世界で最大の英雄と誰しもが認めるところの証左ではないかと思います。

k.mitikoさんと宝塚歌劇の観劇の合間にアレクサンダー大王とカエサルはどちらがより偉大
であろうかと論議したのですが、それについてはまた別の機会に。

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8573 私はアレキサンダー大王です 投稿者:k.mitiko 投稿日:2009年 7月26日(日)19時31分28秒

 リワさん

先日車中で話していました「アレクサンドロスの征服と神話」
(興亡の世界史)を今朝から読み始めまだ途中ですが、39歳の
カエサルが「今の私の年齢で、アレクサンドロスはすでにあれほどの
多くの民族の王となっていたのに、自分はまだ何一つ華々しいことを
成し遂げていない」とアレクサンドロスの伝記を読んで涙していたと
言うエピソードや、フランスのモンテーニュが最も偉大な男性として
3人のギリシャ人を挙げ、その2番目をアレクサンドロスとしている
など私にとっては初めて知る内容に夢中で読みふけっています。

ちなみに他の二人はホメロスとテーベの将軍エパメイノンダスだそうです。
モンテーニュはどいう基準で選んだのかわかりませんが、面白い

ですね。伝記の枠を超えた内容に惹かれます。アレクサンドロスと
カエサル、どちらが偉大か私には判断がつきません。塩野七生さんは
カエサルがお好きなようですが、私はアレクサンドロスの方が好きです。 

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8577 Re:私はアレキサンダー大王です 投稿者:リワキーノ 投稿日:2009年 7月27日(月)19時18分39秒

 「アレクサンドロスの征服と神話」(興亡の世界史)は面白そうな本ですね。
私も読んでみようかと思ってます。

>カエサルが「今の私の年齢で、アレクサンドロスはすでにあれほどの
>多くの民族の王となっていたのに、自分はまだ何一つ華々しいことを
>成し遂げていない」とアレクサンドロスの伝記を読んで涙していたと
>言うエピソードや、

カエサルは涙したとき、羨望の的だったアレクサンダー大王がプルタルコス
によって自分と同格で伝記が記され、二千年にもわたって読み継がれている
ことなんか想像だにしなかったでしょうね。

>フランスのモンテーニュが最も偉大な男性として
>3人のギリシャ人を挙げ、その2番目をアレクサンドロスとしている
>など私にとっては初めて知る内容に夢中で読みふけっています。

モンテニューのエセーですね。懐かしい。

>ちなみに他の二人はホメロスとテーベの将軍エパメイノンダスだそう
>です。モンテーニュはどいう基準で選んだのかわかりませんが、面白い

モンテニューはカエサルの独裁政治への野望を警戒し、徹底して敵対した共
和派の領袖マーカス・カトーが大好きなのです。カエサルの実力を認めては
いますが、神々がカエサルにつこうと、自分はカトーと共にいたい、とエセ
ーに記してます。
清廉潔白・質実剛健のマーカス・カトーが大好きなのですから同じような気
質のエパメインノンダスをアレクサンダー大王と比肩するのは解るような気
がします。
実は私も塩野七生の「ローマ人の物語・カエサル」を読むまではモンテニュ
ーさんと同じような好みを持っておりました。

しかしホメロスを持ってくるとは(きっとアレクサンダー大王を差し置いて
もっとも偉大なギリシア人として挙げたのだと思うのですが)モンテニュー
さん、どういう思惑なのでしょうかね。

>伝記の枠を超えた内容に惹かれます。アレクサンドロスと
>カエサル、どちらが偉大か私には判断がつきません。塩野七生さんは
>カエサルがお好きなようですが、私はアレクサンドロスの方が好きです。

これについては項を改めて記させてもらいます。 

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8578 カエサル Vs. アレキサンダー 投稿者:Eguchi 投稿日:2009年 7月27日(月)19時24分9秒
編集済
 カエサルは宝塚で作品になってますが、アレキサンダーは
まだ作品になってません。

と、いうことでカエサルに軍配。

という、ミーハーな結論でした。 

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8580 Re:カエサル Vs. アレキサンダー 投稿者:リワキーノ 投稿日:2009年 7月27日(月)19時38分0秒
編集済
 >カエサルは宝塚で作品になってますが、アレキサンダーは
>まだ作品になってません。

え、そうなんですか?
それは意外。
宝塚で上演されたカエサルの作品ってシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」?
私の記憶違いでなければあの作品には重要な女性役はほとんど出てこないのですよね。

>と、いうことでカエサルに軍配。
>という、ミーハーな結論でした

いやいや、参考になりますぞ。宝塚歌劇の認める価値観はあなどれません。 

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8581 モンテニューのエセー 投稿者:リワキーノ 投稿日:2009年 7月27日(月)22時38分20秒

 私がうろ覚えでモンテニューの言葉として先に記した下記のこと、

「神々がカエサルにつこうと、自分はカトーと共にいたい」
は、
「神々が勝者カエサルにつこうと、自分は敗者カトーと共にいたい」

と言う風のニュアンスの言葉だったと思います。
我が書庫からモンテニューのエセーを探し出すのは大変な手間であり、ネット
検索では様々なキーワードを使ってもこの類の記事が出てこないので私の記憶
を信じてこの訂正記事を載せます。

ガリア遠征から帰国するカエサルに対して武装解除して単独で帰国することを
条件とする元老院案に最後まで固執して、ついにはカエサルをして”ルビコン
川を渡る”というローマへの反逆を決断させた事件にまで発展させた人なので
す。
共和制ローマにおいてもっとも有名な政敵同士だったのがカトーとカエサルで
した。

頑なにカエサルを忌避したカトーに比べてカエサルは人格高潔で真の愛国者で
あったカトーを尊敬していたようで、アフリカでカエサルの軍に包囲されて降
伏を迫られたのを拒否して自刃したカトーに「カトーよ、何故、君は私に助け
させてくれなかったのか」とカエサルは嘆いたそうです。 

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8588 シーザーとカエサル 投稿者:k.mitiko 投稿日:2009年 7月30日(木)13時38分32秒

 私も大縄跳びです。
私の知っているジュリアス・シーザーは子ども時代に読んだプルターク
英雄伝とシェクスピアの作品からのもので、後は1953年のアメリカ
映画「ジュリアス・シーザー」(シェクスピア)やバーナード・ショウの作品を映画化した
「シーザーとクレオパトラ」によってでした。どちらもシーザーは渋い脇役の初老の男
優が演じていた影響もあって、

シーザーの印象は薄くあまり関心がありませんでした。

その後塩野七生さんの「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル」を読んでカエサルの
人物像に引き込まれ、カエサルに開眼しました。塩野七生さんがあれだけ心酔した
カエサルは、アレクサンドロス、ナポレオンともに西洋の三大英雄と言われていま
すが、あのガリア戦記の作者であり、数々の名言を残し、洞察力に優れ、対立する
敵をも受け入れた寛容さ、古代ローマ帝国の基礎を築いた人物でありながら、女
には弱いなど、多様さと多面性を持つカエサルには私も惹かれました。


子ども時代の記憶とその後の映像から受けた印象、そして塩野七生
さんの描いたカエサル像によって私の中ではジュリアス・シーザーと
ユリウス・カエサルは分離した状態でしたが、次第に一つになってきています。
それはカエサルの複雑な人間性の反映ではと思うようになりました。カエサルとア
レクサンドロス、どちらが偉大かの論議は興味深深です。 

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8592 Re:シーザーとカエサル 投稿者:リワキーノ 投稿日:2009年 7月30日(木)22時13分24秒

 k.mitikoさん

>その後塩野七生さんの「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル」を読んで
>カエサルの人物像に引き込まれ、カエサルに開眼しました。

私もまさに一緒でした。
プルタルコスや映画で受けた若き日の印象と塩野七生の著作によって感じた
「私の中ではジュリアス・シーザーとユリウス・カエサルは分離した状態」
のk.mitikoさんのお言葉は印象深いです。
塩野七生の「カエサル」(ローマ人の物語)が著されるまではジュリアス・
シーザーの評価というのかイメージはシェークスピアやモンテニューの価値
観で現されたものを日本人を含む世界中の人が受け入れていたものだと思い
ます。
それが塩野七生さんによって180度と言っていいほどカエサルの評価は高
まったのです。

>カエサルとアレクサンドロス、どちらが偉大かの論議は興味深深です。

難しい論議ですね。
ヘレニズム帝国はアレクサンドロス一人の遠征の力で成し遂げられ、その後
のヨーロッパ、アフリカ、アジアへの政治的、文化的影響に計り知れない貢
献をしました。
一方、カエサルは史上最長の帝国、ローマ帝国を築く礎となった人ですが、
その前に500年近くにわたっての共和制ローマの帝国主義的領土の版図拡
大の蓄積があったのですからカエサル一人の功績に帰するわけにはいかない
面があります。

そうなると個人の人間的魅力にどうしても目が向いてしまいます。
ここに有名なエピソードがあります。
アレクサンドロスがペルシア王ダレイオス3世との戦の最中にダレイオス王
の母と妃を捕虜にしたとき、アレクサンドロスは二人の婦人を丁重に扱い、
貞節を汚すことなくダレイオス王のもとに送り届けます。
これがカエサルだったらどうでしょう。k.mitikoさんも指摘されているよう
に女によわいカエサルのこと、きっと二人の高貴なペルシア婦人は無事だっ
たとは思われません。

しかしここで大急ぎで言いたいのですが、その二人の女性は手籠めではなく、
”言い寄ってきた”カエサルに対して承諾のもとに身を任せたに違いないと
私は思うのです。
塩野七生の「カエサル」を読めばそのような解釈を誰もがするでしょう。
ここが史上最大の大王と言われたアレクサンドロスも及ばないカエサルの魅
力の真骨頂ではないかと私は思うのです。
しかし、こうなると生き方、性分の好みの問題になりますね。

カエサルとアレクサンドロス、どちらが偉大かの論議、
歴史に詳しい手打ち庵殿のご意見も拝聴したいところです。