ナチスに隷属を強いられた精神医学「小児安楽死の犯罪」   by 舩津邦比古

私のホームページで v.kのハンドルネームでお馴染みの精神医学の医師、舩津君が2021年11月17日
に福岡市精神科医会で講演した内容です。
見るのが本当に辛い内容ですが、このような犯罪が行われたことを決して忘れてはならないと思い、舩津
君の了解を得てここに紹介します。

精神科医会34_84.pdf へのリンク







この画像は本当に見るに忍びないものがあり、ここに載せるのがはばかられます。
見たく無い人は画像をクリックしないでください。
このような子どもたちの画像がPDF版には他にも出てきます。



”生きるに値しない”と断定された小児科医グロス。







 

ドイツ以外の国々では否定的に見られている小児科医アスペルガー。

しかし、舩津君は下記のようなことを記しています。

Aspergerは世に紹介された始めはナチスに抵抗して自閉症児を守った善意の英雄のように言われ、
それが瞬く間にナチスに迎合して障害のある子供を安楽死に追いやった悪人と非難され、日本では
アメリカ人が英語で書いたAsperger にかなり批判的な本が出回り、その本の内容を照査する研究者
も出てこず、結局Aspergerはクロの烙印が定着しました。


その大きな理由の一つはドイツ語を読める人でこの問題に興味を持った人がいなかったからです。
私は直感的におかしいと思う部分があったので、拙いドイツ語で原資料を読みました。その結果Asp
ergerは何をするにも困難と危険が伴う戦時下に、態度を明らかにせぬまま逃げ切ったと結論しました。
そのためには1940年代オーストリアドイツ語の婉曲話法を正しく理解する知識が必要でした。


そして舩津君は下記のように記しています。

アスペルガーのこともシュピーゲルグルントの小児安楽死のことも、悪魔の神経科学者ハインリッヒ・
グロスのことも、ほとんどドイツ語の文献から発掘しました。そしてアスペルガーについて下した私の
判断はほぼ正しいと思っています。普通の日本人には出来ないことを私は達成したと、密かに満足
しています。


舩津君がこの結論に達した内容は下記のとおりです。

アスペルガー障害を論分で発表したハンス・アスペルガーの精神鑑定書が残っています。正確には
タイピストが書き写した控えです。
エリイの家は二部屋の小さな家でそこに母親と子供たち8人が暮らしている。
父親は兵士となって家には居ない。
エリイは理解力が低く、大声を上げ、騒ぎ、火を使う家の中は火傷と火災の危険が満ちている。
母親はそう思う時が休まることがない。エリイが居なかったら少しでも家の中は落ち着くだろう、エリ
イさえ居なかったら、、。
母親の苦労を鑑定にこの家を訪れた医師達は直ぐに悟った。
Mekula医師の鑑定結果は 「法に従ってエリイをシュピーゲルグルント(小児安楽死が密かに行われ
ていた施設)に引き渡すことを求める」というものだった。同医師は母親の苦境を察したのかも知れ
ない。

アスペルガー医師の鑑定書はやや異なっていた。
「(母親がエリイを施設に預けることを一日でも早くと願うのであれば)シュピーゲルグルントは考慮
の対象になるかも知れない。」 明らかに曖昧な言葉で結び、 慎重に結論めいた言い方を避けて
います。
Am ehestend käme der Spiegelgrund in Frage. 急ぐのであれば,シュピーゲルグルントは考慮の
対象になるかも知れない。
ehesten は現代ドイツ語では schnellsten というところです。käme は英語の come にあたり、その
仮定法的話法です。Frage は疑問とか問題とかの意味。
The Spiegelgrund might come into the consideration. とでも言うところでしょうか?
つまり、選択肢の一つとして挙げてもいいだろうと言っているのです。上手な責任逃れです。しかし
同時に母親の苦境を考えると言及はするでしょう。
エリイの問題はナチスと関連付ける問題ではない、むしろ世界の至る所で障害児を持つ貧困家
庭にあり得る問題だと思うのです。ナチスとの関連付けて言うのならば、Mekula医師の方がナチス
協力者と言えるように思います。

アスペルガー医師は乱暴な言葉遣い、粗暴な振る舞いがあった人のようですが、でもそれでナチス
の協力者というのはあまりにも乱暴な偏見でしょう。つまり、言いたかったことは、日本ではよく調べ
もしない付和雷同者によってナチス協力者と決めつけられたと言うことです。これはいじめの問題で
うんざりするくらいよくあることです。