大峯の田中美津さん
私の大峯に関する手記をいくつか読まれた田中美津さんは、特に下記の手記に感銘を受けてくださった
ようで「あなたは大切に思うことについては命を懸ける人なのね」と言われました。
http://hmpiano.net/riwakino/
命を懸ける、は私にしては分不相応なお言葉ですが、彼女はそのように取ってくださり、大峯に強い関心
をいだき、実際に訪れたいと思われたのでした。
その美津さんの要望に応えて私が撰んだのは和佐又山ヒュッテから大普賢岳に登る、もっとも大峯らしさ
が満喫できるコースでした。
2000年10月23日に近鉄大和上市駅で美津さんたちを車に乗せ、一路、和佐又山ヒュッテを目指します。
和佐又山ヒュッテで。
同席している男性はたまたま居た泊まり客で、一人ならご一緒にいかがですか、と美津さんが誘ったので
同じテーブルに来たのです。
右端の女性は美津さんを信奉する方で名前はもう覚えていませんが、穏やかで終始笑みを絶やさないと
いう雰囲気の女性です。
この女性は東大大学院で上野千鶴子さんのゼミにいる日系アメリカ人。
フェミニストの上野千鶴子さんは美津さんと交流があり、上野さんの紹介でこの女性は美津さんの仲間
に加わったのです。
とても聡明な女性でした。
翌日の朝、和佐又山ヒュッテを出発。
後ろは和佐又山。
大峯に多く植生するブナの木
笙ノ窟までは比較的なだらなか道が続きます。
ちょっとした登りを登り切ると笙ノ窟に着きます。
古来、山伏が籠もって修行をしたところで千年の歴史があり、大峯でも特に有名な窟です。
奥にコップ類が置いているのが見えますが、水がしたたるのです。
ここからが急激な登りとなります。
続くハシゴ場。回りに樹木が茂っているので怖くはありません。
扁平足の私でも大丈夫かしら?と言ってた美津さんもまったく問題なし。
大普賢岳中腹にある「岩の鼻」
山腹から飛び出したような岩場なので鼻と名付けたようです。
抜群の展望です。
背後には大普賢岳とそれに続く尾根。
岩の鼻からは急峻な崖坂に付けられたハシゴを登っていきます。
このあたりはまだ安全性が高いのですが、この先に待っている2段のハシゴ場は間のテラスが狭くて
絶壁の上にあり、転落しようものなら命は無いです。
大普賢岳登山中に転落死亡という事故のほとんどがこの2段ハシゴ場で起きています。
ですからとても写真撮影などしてる余裕は無く、画像はありません。
ザイルを一人一人、身体にしばってもらって上から私が確保するかたちで3人に登ってもらったのです
が、3人ともまったく落ち着いていて恐れる雰囲気が無かったのには感心しました。
美津さんとそのお仲間たちは肝が据わっています。
登り切ったところで一息。
このハシゴ場は安全なところで、ここから頂上までは危険なところは無いです。
大普賢岳の頂上です。
近くに見える三角形ピークが行者還岳。
奥駈の尾根は行者還岳から左に延び、そして右に延びていきます。
遠くにぼんやりと見える大きな山塊は近畿最高峰の八経ヶ岳と弥山です。
頂上をあとにして危険地帯も過ぎて岩の鼻まで降りてきました。
皆さんのリラックスした表情が素敵ですね。
笙ノ窟も過ぎてなだらかな道を通りますが、谷は深いのでクサリが設けられています。
和佐又山との分岐に来たらもうヒュッテまで5分の距離。
美津さんたちはベンチに寝そべります。
無事に大峯登山を終えて私もホッとする思いです。
美津さんたちとはこのあと、大和八木駅で別れました。