岡部 弘 貼り絵展   2024.10.02~10.07

近畿修猷会の先輩が初めての個展を開きました。
場所は阪急池田駅ビルの中にある”市立ギャラリーIKEDA”


岡部さんが貼り絵を覚えたのは修猷館高校時代に美術の田中先生に教わったからだそうで、その後70
年経つ今も貼り絵を造り続けているのは岡部さんだけだそうです。
下の画像は個展の入り口入ったところに飾られていたのですが、修猷館高校時代にヨット部で一緒だっ
た生徒作製のもので、この生徒はヨットの事故で修猷館高校在学中に亡くなっているそうです。

修猷館高校の教師はあだ名で呼ばれることが多いのですが、この田中先生は”からす”とうあだ名だ
そうで、何かの式典のときに燕尾服を着てお辞儀する姿がカラスにそっくりだったことからの命名だそ
うです。
岡部さんは”からす”先生の娘さんのことも”こがらす”と呼ぶのですが、”こがらす”さんは何十年も貼
り絵を続けている岡部さんに感謝の意を表しに会いこられたことがあるそうです。

ゴッホの模写が多いです。


貼り絵は色紙を使わず、新聞の色刷りチラシや週刊誌のグラビアページなどを材料としており、色紙だ
ったら単調な色彩になるのを防いで独特の味わいを出しています。


下の教会も、次の吊り橋も岡部さんは現地に赴いてスケッチをしてきています。





吊り橋は合計、3枚作製されています。



新約聖書の”良きサマリア人”


ゴーギャンの模写


モジリアニの模写
裸体は作成中も気恥ずかしを感じられるようで、陰部のところは特にその感が強いそうです。


ネプチューンとアンビトリテ N.ブッサン作
この作品を前にすると圧倒されます。
ギリシャ神話が題材ですから空中で舞うのはエンジェルではなく、キューピッドでしょうが、活き活きと
描かれています。



これは一部を拡大した別の作品です。


姫路城


この姫路城は、何かムンクの絵画の雰囲気を漂わせていませんか?


博多山笠


青森のねぶた祭り1



青森のねぶた祭り2


青森のねぶた祭り3
黒い背景は絵画だったらべた塗りなのに、一つ一つの破片を貼った集合なのです。気の遠くなるよう
な作業のように感じてしまいます。


諏訪の御柱


唐津くんち祭り1


唐津くんち鯛2


阿波踊り1


阿波踊り2

葵祭り


アルプスで


岡部さん長女の作品(アクリル画)


友情出品した近畿修猷会の百田潤一さんの作品


岡部さんのちょっと素敵なエピソード
岡部さんはご自身の作品がいくつか展示される創元展を見るためにこの今年の4月に東京へ行かれました。
地下鉄赤坂見附駅の乗換え通路の段差で難儀しているとき、一人の妙齢の女性から声をかけられ、助
けられたのです。
関西から来たことを知ると何の用事で?と尋ねられ、明日初日の創元展に自分の作品を出る話をしたら
興味を感じたのでしょう、観たいとその女性は言うのです。
岡部さんが「入場券を用意しておくので電話下さい」と名刺を渡したところ、翌日本当に来場したので会場
を案内したのです。
行きずりの岡部さんの雰囲気に何か感じるものがあったのでしょうね。
そして岡部さんの貼り絵に感銘を受けたのでしょうね、その岡部さんの個展が大阪で予定されていること
を知ってそれも見に行きたいと言うので、岡部さんは個展の期間のことも知らせたところ、半年後の私たち
が訪れた翌日に彼女は見に来るという連絡が入ったそうです。

岡部さんの個展を見に来た私たち百田さんとChakoさんに私は個展閉館後、岡部さんをお誘いして近所
の中華料理店で会食したのですが、その話を聞くなり「ちょっと話がうますぎません?行きずりの人の作
品に惹かれたといって新幹線に乗ってわざわざ大阪まで見にきますか?何か下心があるのでは」と言い
ますと岡部さんは「私も一瞬、そう思ったけれどとても真面目で誠実そうな女性だった」と言われます。
「岡部さんの毅然とした風貌に惹かれてその作品があんなに手の込んだ力作だったのでその女性は感
銘を受けられたのでは」とこれはChakoさんの感想でした。
「その女性がやってきても画廊内だけで対応し、決して一緒に外に出ることはしないように」と私はアドバ
イスし、一同、別れたのです。
右から百田さん、岡部さん、Chakoさん、リワキーノ


翌日気になった私は岡部さんの携帯電話に電話しても通じないのでショートメールを送ったところ、画廊に
ずっと詰めているお嬢さんからメールをもらいました。
「父の東京のマドンナがやってこられ、父の作品を見ていただき、父とも歓談して去って行かれました。
今日は関西の実家に泊まられるそうです。父は舞い上がっていました」
添付されたそのマドンナと岡部さんとのツーショットの画像を見て、86歳に寄り添う40代の魅力的な女性の
姿に「まるでオー・ヘンリーの短編の世界ではないか!」と私は何とも言えぬ至福感に浸ったものでした。
その女性の画像をここに紹介できないのがとても残念です。