怪人百面相の「ジャズ入門の入門」 その4

今回は、また、ジャズ・シリーズの続きにしましょう。
「好きな曲をジャズで聴こう」シリーズの番外として、私たちになじみ の深い日本の曲をジャズで演奏したものを紹介しましょう。
本格的
な ジャズになっているものから、イージーリスニング的なものまでいろ いろあります。
最初は有名な「月の砂漠」です。
●「リー・モーガン/ザ・ランプローラー」 1965
恐らく「月の砂漠」をジャズで演奏したのはこれが最初ではないでし ょうか。とても元気でにぎやかです。
リー・モーガンはトランペットです。
 彼は名曲「アイ・リメンバー・クリフォード」のバラードプレイで有名な「リー・モーガン Vol 3」や60年代のジャズ・ロックの名盤
「ザ・サイドワインダー」
が有名です。
ここでの「月の砂漠」も元気のいいノリです。
彼は、1972年、愛人の女性に拳銃で撃ち殺されました。33歳でし た。
●「ケニー・ドリュー/ムーン・リット・デザート」 1982
● 「ケニー・ドリュー/クレオパトラの夢」 1992
ケニー・ドリューはもともと50年代の典型的なハード・バップ・ピアニ ストとしてスタートしました。
ケニー・ドリューには「ケニー・ドリュー・トリオ」、「アンダーカレント」という名盤があります。
機会があれば聴いてみてください。
 61年にフランスに渡り、その後、ベースのニールス・ペデルセンとピ アノ・トリオを組み、80年代、90年代に日本人のプロデュ
ース
でス ダンダード曲を中心としたスイートなテイストのアルバムを数多く出 し、人気を博します。
私はリー・モーガンの「月の砂漠」よりも、しんみりと聴かせるケニ ー・ドリューのほうが好きですね。上記の2枚ともそれぞれに
いい
です。

次はガラッとイメージを変えて、美空ひばりの「りんご追分」にいきましょうか。
●「大西順子/ライブ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガードⅡ」1994
大西順子は86年に渡米し、バークリー音楽院をトップの成績で卒業した後、ニューヨークのジャズスポットに飛び入りして一躍
注目
を浴びます。
92年に帰国し、名作「WOW」を出します。  94年に日本人で初めてNYのヴィレッジ・ヴァンガードで6日間の公演を行い、その
とき のライブ版がI,IIとしてリリースされています。そのⅡが、こ
の推薦盤です。
その後、活躍を続けますが、ある日忽然と失踪。
いまだにどこにいるかも分かっていません。早く出て来てくれるといいですね。
ところで、この「りんご追分」は、ものすごいアドリブ演奏が長く続いた後に、しっとりと、あのメロディーに戻ってきたときジワッ
きますよ。


●「ケニー・バロン/ランド・スケープ」 1984
現代のピアノのトッププレーヤー・ケニー・バロンの演奏です。こ のアルバムもすごくオーソドックスなジャズ演奏で、いわゆる
商業
主義的な企画ものではありません。
また、このアルバムには「荒城の月」や私の大好きな「ディア・オー ルド・ストックホルム」も入っていて愛聴盤です。
ケニー・バロンにはスタン・ゲッツの最後のアルバム「ピープル・タイム」という名作 があります。これは絶品です。

さて、次は何にしましょうか。民謡の「五木の子守唄」はどうですか。
●「バルネ・ウイラン/五木の子守唄(タリズマン)」 1993
バルネ・ウイランはジャズには珍しいフランスのサックス・プレーヤーで、一部に熱狂的なファンのいるプレーヤーです。
1959年の「barney」という名盤には、私の好きな「ベサメムーチョ」と「エブリシング・ハップ ン・トゥ・ミー」が入っています。
1989年の「フレンチ・ストーリー」には「男と女」、「シェルブールの雨傘」、「危険な関係」 などのフランス映画音楽が入っていて
とても楽しいアルバムです。
どちらも愛聴盤です。
少し古い曲ですが、あと2枚ほど紹介しておきましょうか。
●「エディ・ヒギンス/アゲイン」1998
これには、「祇園小唄」が入っています。
ピアノのエディ・ヒギンスのピアノ・トリオの作品。
彼は、埋もれたピ アニストでしたが、90年代日本のヴィーナス・レコードが発掘して、いまやヴィーナスからアルバムを出せば
必ずベストセラーとい
う大スターです。
2003年に出た彼のピアノ・ソロ「あなたは恋を知らない」は最近の愛聴盤です。

●「秋吉敏子/ザ・トシコ・トリオ」 1956
これに「蘇州夜曲」が入っています。
アルバムの最後から2曲目 にこれがあって、最後は名曲「朝日のようにさわやかに」で締めく くってあります。名盤です。
最後に商業主義的な企画なので、コアなジャズファンなら絶対に 手を出さないであろうと思われるものを紹介します。
それはアンディ・エズリン・ピアノ・トリオが出している日本のニューミュージックのジャズ 演奏です。
これが意外としっかりジャズを演っていて聴かせてくれます。
井上陽水、ユーミン、桑田佳祐、竹内まりや、中島みゆき、山下達郎・・・などレンタル・ ショップにたくさんありますので、食わず
嫌いをしないでぜひ一度
聴いて見て下さい。
さて、次回からはジャズの王道の話に入って行きます。