怪人百面相の「ジャズ入門の入門」 その5

またまた、ジャズ入門に戻ります。
「ウイズ・ストリングス」と「好きな曲」でジャズの入り口をノックしたあなた。次は本格的なジ ャズの体験
をしたくなったでしょう。それにもやはりガイドが必要ですよね。
そこで、有名な評論家の書いた本を頼りにすると、あの落とし穴が待っています・・・・ 今一番人気のある
吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」のマスターのものを読むと・・・・・誰も知らな い隠れ名盤とか、美人ジャケット
とか、最近の輸入版とかマイナーなものばかり薦められ て名盤といわれるものには全く近づけません。
また、四ツ谷のジャズ喫茶「イーグル」のマスターのものを読むと・・・・チャーリー・パーカ 一に始まりチャ
ーリー・パーカーに終わる人なので、「よし、私もパーカーを聴いてみる か」と決心し、名盤といわれる
「チャーリー・パーカー・オン・ダイアル」などを聴くと、音楽 を鑑賞する以前にあまりの録音の悪さに辟易
してしまいます。
また、元スイング・ジャーナル誌の編集長のものを読むと・・「マイルスを聴けばジャズは すべて分かる。
他は聞く必要なし」とマイルス以外は聴かせてくれません。
じゃあ、どうするか。
一般の人気投票あたりで常にベスト10に入るような「永遠の名盤」というものを10枚ほど ザッと聴くのです。
そうすれば自分はどういうものが好きで、どういうプレーヤーが好きなのかが分かります。 そこから広げ
ていけばいいのです。
では、そのような10枚をあげてみます。

ジャズ入門の10枚
1. 「アート・ペッパー/ミーツ・ザ・リズムセクション」 1957
アドリブの天才アート・ペッパー(アルト・サックス)
の代表作。出だしの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トウ・カム・ホー ム・トウ」が実にいい。
私の愛聴版です。

2. 「ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス」1956
豪放なテナー・サックス。ロリンズ節といわれるアドリブが快感。
ハード・バップの名盤としてだけでなくジャズ の歴史の頂点の作品としても有名です。
ージ

3. 「ビル・エバンズ/ワルツ・フォー・デビー」 1961
出ました。人気投票で万年1位のピアノ・トリオ。 女性のファンが多いですねえ。

4. 「マイルス・デイビス/ラウンド・アバウト・ミッドナイト」 1955,56
マイルスはどの時代も名盤です。 このアルバムもマイルス得意のミュートがたまらない。

5. 「ジョン・コルトレーン/バラード」 1962
ジャズの歴史としてのコルトレーンの価値は別のところ にあるが、バラードの名盤としてこれは欠かせ
ない。 身も心もとろけて下さい。

6. 「バド・パウエル・イン・パリ」1963
バドの代表作ならば「クレオパトラの夢」が入った「シーン・チェン ジス」か、「ウン・ポコ・ロコ」の入った
「ジ・アメイジング・バド・パ ウエル第1集」かもしれないが、晩年のバドの「ディア・オールド・ ストックホ
ルム」という曲の哀愁をぜひ聞いて欲しい。

7. 「ゲッツ/ジルベルト」 1963
スタン・ゲッツならクールジャズの名盤が多数あるが、ボサ・ノバを いうことでこのアルバム。 ボサ・ノバ
の女王アストラッド・ジルベルトのデビュー作です。 1曲目の「イパネマの娘」は誰でも知っていますよね。
かけていて実にさわやかなアルバムです。 ボーカルが入るのがいやだという向きには、ゲッツがゲー
リー・ バートンと最初に出したボサ・ノバのアルバム「スタン・ゲッツ/ ジャズ・サンバ」をどうぞ。

8.「マル・ウオルドロン/レフト・アローン」 1960
ビリー・ホリデイのために、歌の伴奏をやっていたマルが作った曲がアルバムのタイトルにもなっている
レフト・アローン。 彼女がなくなった後、万感の思いを込めて作ったのがこのア ルバム。ジャッキー・マ
クリーンのアルトが実に悲しい。1回聴 いたら忘れられない。ホントに。 昨年、京都のYAMATOYA とい
うジャズ喫茶で、マルがこの曲を演奏したとき、都は るみが聴いていて、「この曲いいな。歌いたい・・」
とつぶやいたそうだ。
LEFT ALONE
DEAL VALERION

9. 「アート・テイタム〜ベン・ウエブスター・カルテット」1956
二人ともスイング時代の巨匠ですが、ベンの包み込むような 音はテナー・サックスの醍醐味。サックス
のこういうトーンが大 好きです。アート・テイタムはピアノですね。

10. 「キース・ジャレット/ケルン・コンサート」1975
70年代のピアノ・ソロの大人気盤です。 美しい演奏です。
このアルバムには、演奏中のキースのうなり声がうるさい、とい う批判もありますが、全身全霊を傾けて
即興演奏をするという ことはこういうことなんでしょう。
ARI TATUM

以上の10枚ですが、これだけ聴いても、ジャズの醍醐味は十分感じられるはずです。ど
れも人気の高いものですから、レンタル・ショップにも必ずあります。ザッと聴いて自分の
好みに合うプレーヤーの他のアルバムへと広げていくのがいいでしょう。
それにしても、今はいいですよね、レンタル・ショップですぐに借りられますから。
私のころはジャズ喫茶でリクエストするか、FM放送にかかるのをチェックするしかありま
せんでした。ここにあるような名盤をリクエストすると、マスターから結構バカにしたような
顔をされたりして、つらいものでした。
さあ、このページのプリントを持って今日の帰りに早速レンタル・ショップに行きましょう。