怪人百面相の「ジャズ入門の入門」 その7
ジョン・コルトレーン
1950年代に入ってジャズはいよいよ黄金期を迎えます。
3、ハード・バップの隆盛
いよいよモダン・ジャズの黄金時代・・ハード・バップです。
50年台も半ばになるとビ・バップのあまりに超絶的個人技によるアドリブにも限界が見え 始めました。
ここで、また、マイルスです。
マイルスは、ビ・バップをより洗練させて、アドリブと曲全体のまとまりの双方に意を払っ たスタイルに進ん
でいきました。これがハード・バップです。そういう面で、「ハード」の意 味は「激しい」ではなく「堅牢」に近
いのです。
モダン・ジャズは黄金期を迎えます。
私たちが「ジャズ」といった時に持つイメージはほとんどこの時代の演奏です。
名盤がたくさんありますが、あえて2枚を。
●「マイルス・デイビス/リラクシン」 1956
マイルスのマラソンセッションといわれるing4部作の1枚です。 「ウオーキン」、「クッキン」、「スティーミン」
と合わせて4枚とも全部名盤です。
●「ソニー・クラーク/クール・ストラッティン」 1958
厳密にはファンキー・ジャズという括りかもしれませんが、ハード・バップ・ジャズ黄金期の 雰囲気をよく表
しています。ジャケットの素晴らしさと、1曲目の出だしの軽快なテーマで 日本では一番の人気盤ですが、
本場・米国ではあまり人気がないそうです。 不思議ですね。
そのほか、前回の名盤で紹介した
●「ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス」
ハード・バップを代表する超名盤です。
4、モード・ジャズの誕生
ここでも、また、マイルスが出てきます。
50年代後半になるとコード進行によるアドリブの限界を感じていたマイルスは、モード奏法を取り入れた
アドリブに挑戦をする。
「コード進行ではなくモードによる奏法」などと言われると、楽理を勉強してない私にはつ らいですね。
●「マイルス・デイビス/カインド・オブ・ブルー」1959
マイルスによる、モード・ジャズ誕生の宣言がこのアルバムです。
ハー ド・バップとは違った新時代の到来を感じさせる緊張感があります。
●「ジョン・コルトレーン/マイ・フェバリット・シングス」 1960
私が初めてジャズのレコードを買ったのがこれです。
「サウンド・オブ・ミュージック」の曲がジャズでこんなになるとは・・・
すご いと思いました。
コルトレーンはハード・バップのころは不器用といわれていましたが、 モードになって俄然ブレーク。
60年代になってすごい世界に入ってい きます。
インパルスというレーベルにその足跡が残っています。
5、フリー・ジャズの爆発
50年代後半、マイルスがコード進行のジャズからモード奏法への取り組みを模索している ころ、別の動
きとしてコードやモードなどの制限から全く自由なアドリブ 表現を試みる動きが行なわれていました。
フリー・ジャズの始まりです。
●「オーネット・コールマン/ジャズ来るべきもの」 1959
今の時代に聞くと、そんな驚くような音楽ではないが、当時の4ビートの ハード・バップに聞きなれた耳に
は大変衝撃だったようです。
●「ジョン・コルトレーン/アセンション」 1965
これはコルトレーンの高らかなフリー・ジャズ宣言です。
単なる騒音にしか聞こえない人からは物凄い批判が・・
●「エリック・ドルフィー/ラスト・デイト」1964
エリック・ドルフィーは厳密にはフリー・ジャズとは言われません。
他の誰とも違った孤高のインプロヴァイザーです。
バス・クラリネットの演奏を聴くと、初心者でも「あっ、ドルフィーだ!」とすぐ分かります。
それほど、彼のサウンドは個性的です。
「音楽は演奏とともに空に消え去ってしまい、二度とそれを取り戻すことはできない・・・」
と 言い残して、1964年に36歳で急死しました。
●「アルバート・アイラー/スピリチュアル・ユニティ」 1964
アルバート・アイラーも他の誰にもないサックスの演奏をします。
すぐにアイラーだと分かります。
フリーキーな激しい演奏の途中に、なんとなく懐かしいようなメロディ が入ってきます。
そこがグッときますねえ。
私がフリー・ジャズばかり聞いているころに一番好きだったのがア イラーでした。
彼は1970年11月25日にニューヨークのイーストリヴァーに死体で浮かんでいました。
3 4歳でした。
日本では三島由紀夫が自衛隊に切り込んで自決した同じ日でした。
6、新主流派の台頭
60年代のジャズ・シーンはロックの8ビートを取り入れた「ジャズ・ロック」、それから、あらゆ る束縛からの
解放を目指した「フリー・ジャズ」。
それと、マイルスが始めた「モード・ジャズ の展開」など多様化の時代を迎えました。
このモード・ジャズ系を新主流派といいます。
代表的な作品を2枚ほど紹介します。
ハード・バップまでのノリとは違った新時代の雰囲気を感じると思います。
ジャズの歴史の中でも最も洗練されていると思います。
●「マイルス・デイビス/E. S. P」1965
●「ハービー・ハンコック/処女航海」1965
この後、時代はいよいよ70年代に入っていきます。 60年代に起こってきたロックの世界の波にジャズも
大きく洗われ ていくことになります。
次回は最終回になります。