怪人百面相の「ジャズ入門の入門」 その8(最終回)
チック・コリア
「入門の入門」の割には連載が長くなってしまいましたが、今回で終了になります。
長い間お付き合いいただいて、ありがとうございました。
それでは最終回をどうぞ。
60年代に起こったロックの嵐は大きくジャズの世界を飲み込んで行きます。
エレクトリック・ジャズ~フュージョン時代の到来
60年代後半になると、マイルスはロックの8ビート、16ビート、エレクトリック・サウンドを 取り入れた新しい
試みを始めました。
エレクトリック・マイルスともいわれます。 この流れが70年代~80年代にかけてのあの、フュージョンの嵐に
なっていきます。
フュージョンにはたくさんありますが、代表的なものを選んで見ます。
なお、私個人的にはこのフュージョン以来ジャズを聴かなくなり、90年代に入っての4 ビートジャズの復活
から再度聴き出しました。
●「マイルス・デイビス/ビッチェズ・ブリュー」1969
エレクトリック・マイルスの高らかな宣言のアルバムです。
これを認めるか認めないかで、その人のジャズに対する姿勢がよく判る踏み絵にもなりま す。
これ以降、70年代に入りジャズ界は一気に電気音やロック・リズムと融合したフュー ジョンの時代に入って
いきます。
●「チック・コリア/リターン・トゥー・フォー・エヴァー」1972
毎日、ジャズ喫茶でフリー・ジャズの騒音を浴びるように聴いてい た中で、これが流れてきたときは、本当
に目の前に青い空と海が 見えたように思いました。
しかし、当時はこれをジャズだとは思えませんでした。
●「ウェザー・リポート/ヘビー・ウェザー」1977
マイルスのもとから独立したジョー・ザビヌルとウェイン・ショーターが 作ったウェザー・リポートを初めて聴い
たときには「新しいことが始まったなあ」、という感じを受けたものでした。
ウェザー・リポートの傑作がこれです。 しかし、やっぱり、ノリは悪かったような・・
●「マイルス・デイビス/オン・ザ・コーナー」1972
この時代に、なんとヒップ・ホップの先取りです。
近年、ジャズを知らない若者たちから熱狂的な支持を受け ているアルバムです。
少し長くなりましたが、以上で「世界一簡単なジャズの歴史」を終了させていただきます。
80年以降、ジャズはウイントン・マルサリスなどの出現により、一種の「伝統への回帰」の時代に入って
いるように見えます。さらに現在の売れ行きとしては、癒し系の音楽とかBG Mとして聴かれることも多く、
革新的な音楽という面は薄れているようですね。
ところで、チャーリー・パーカーの超人的アドリブ表現によって始まったモダン・ジャズの歴史の転換には
必ずマイルス・デイビスの名前が出てきたのに気づかれたと思います。
以上で私のジャズのお話しはおしまいです。 後はドンドン自分で聴いていって下さい。
以上の経験をしたあとに参考書を選ぶ際、自分の好みが、
○即興演奏による自己実現の音楽をさらに深めたい人は
・・・四ツ谷の先生(後藤雅洋氏)著作
○やはり、美しいメロディーの曲が好きだという人
・・・吉祥寺の先生(寺島靖国氏)の著作
○マイルスの軌跡でジャズの鑑賞を極めたいという人は
・・・もとSJ誌編集長(中山康樹)の著作
などがよいガイドになるでしょう。
最後に注意事項を2,3.
1、ジャズ喫茶の効用
ジャズのほとんどの演奏はかなりボリュームをあげないと、その良さ が分かりません。家庭の中では
おのずと限界があります。
昨今、ピ アノ・トリオや軽いジャズが主流になっている要因の一部はここにも あります。
今は数少なくなりましたが、やはり、ジャズ喫茶の大音量で聴くのが一番だと思います。
2、ハイエンド・オーディオの世界
音にこだわりだすと、やはりオーディオの世界に入ります。
スピーカーにしろアンプにしろ、1台、1本ですぐにン百万の世界ですから、これは地獄 になります。
3、オリジナル・レコードの魅力
ジャズを聴いていくと、プレーヤーによる演奏の違い、臨場感といったものに強いこだわり。 を持つよ
うになります。
さらに、レコード・ジャケットの持つ独特の魅力にも取り付かれます。
そうすると、CDでは なくアナログ・レコードの、しかも再プレス盤ではなくオリジナル盤を欲しくなります。
このオ リジナル盤がここ何年かのブームで数万円から数十万円という相場になっています。ここ に
はまり込むとこれまた地獄になります。
以上のようなことに注意しながらジャズを楽しんでください。
それでは、また。