教室前には10人ほどの父兄がいる中、マスミさんは親しげに皆さんに挨拶するのですが、父兄たちは見知らぬ私の存在には好意的なまなざしを向けてくださいました。
マスミさんの父親と思われたのかも知れません。
オイリュトミーの授業は素晴らしいものでした。
ピアノの演奏で30人ほどいたでしょうか、生徒たちがダンスをするのです。
ダンスと言っても跳んだり跳ねたりなのではなく、左右、前後に移動しながら手でパフォーマンス表すのです。
最初、4人だけのときはいささかインパクトに欠けるところがありましたが、人数が増え、いくつかのグループに別れてピアノ演奏に沿って左右前後に整然と移動しながら列の位置が変わっていくのを見るのはとても見ごたえのあるものでした。
そしてその中でピアノがエンリケ・グラナドスのスペイン舞曲を奏でられだした時は愕然とする思いになりました。
若き日の浜松における調律の修行時代、同じ寮で過ごした仲間の1人が紹介してくれ、何度もLPレコードを聞いたその曲で、その哀愁のこもったメロディーは私の心を強く捉えていたのです。
まさか、北海道の学園の授業でこの曲を聞くことができるとは、と総勢でパフォーマンスを繰り広げるオイリュトミーと相まって強い感動を私に起こさせたのです。
それはとっても凄い感動でして、これを見聞きしただけでも北海道に来た甲斐があったと思ったくらいでした。
授業が終わったとき、マスミさんはじめ他の父兄たちが教室を去って行くのを後目に最後まで残って指導の先生とピアニストに私の感動のことを伝えたら、お二人はとても喜んでくださったのですが、ピアニスト(父兄だそうです)の女性は譜面台の楽譜をめくって「本当だ!スパイン舞曲と記されている」と言われたのです。曲のタイトルは「オリエンタル」なのですが、スペイン舞曲の表題は楽譜の端っこの方に記されているので私が指摘するまでピアニストも認識されていなかったようです。
「音楽関係の方ですか?」と尋ねられたのですが、「いえ、ただこの曲が好きなだけなのです」と答えました。
この素晴らしい演技を録画できなかったのは本当に残念な思いでした。
「ペイン舞曲第2番オリエンタル」
https://www.youtube.com/watch?
校舎を出たところで、父兄たちとまた会ったのですが、親子ほど歳の離れた私のことをどのように紹介しようかと思ったらしく、マスミさんは修験道の世界で知り合ったことを皆さんに伝えたのです。
そこで私が紀伊半島の背骨である大峯山脈を縦走する修行の山伏の一団であることを話し、マスミさんがその熱心な信奉者で何度もその修行にやって来ていることを伝えたら、1人の方が「羽黒山の山伏みたいなものですね」と言われ、すぐに理解してくれたようです。
別の女性が「私は北海道で生まれ育ったので、そのような文化を持っていません」と言われた言葉が何かひどく心に響きました。
皆さんはマスミさんがそんな経験をしてきていることにかなり驚かれたのではないでしょうか。