関西シティフィルハーモニー交響楽団の素晴らしさ。 2026年5月24日

関西シティフィルハーモニー交響楽団はアマチュアのオーケストラです。
私の仕事上の顧客がこのオーケストラの団員であり、5年前に演奏会に招待されたことからこのオーケ
ストラのことを知りました。

最初に聞いた2021年1月のコンサートのときの感想を顧客にメールで伝えたのが下記の記述です。
ホールは音響のいいことで知られる豊中市立文化芸術センター 大ホールです。
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演奏ですが、アマチュアのオーケストラと思っていた私の予想を遙かに上回る高い水準の演奏に強い
驚きと感動を覚えました。
特にショスタコーヴィチのシンフォニー9番は初めて聞く曲なのですが、私にとっては有名な第5シンフォ
ニーよりももっと魅力に富んだ内容で、団員一同が一体となっているようなアンサンブルの統制がとれ
ていたこと、そして弦楽器群、金管楽器群、木管楽器群のいずれも高い水準を保ち、金管、木管の独奏
者たちのソロの素晴らしさ、どれ一つとってもアマチュアというレベルでは無いと思いました。
私は27年前まで森ノ宮ピロティホールで調律を担当していたころ、関西フィルや大阪シンフォニカなどの
演奏によく立ち会いましたが、関西シティフィルの演奏はこの二つのプロの楽団に引けを取るようなもの
ではないどころか、より多くの感動を与えてくれたことを断言できます。
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そして今年5月24日の公演です。
ホールは池田市民文化会館アゼリアホール。

1月25日(日)の大阪シンフォニーホールにおける同交響楽団の演奏を聞いたあとだったせいか、1曲目
のショスタコーヴィチの祝典序曲はオーケストラの響きが固く感じられたのですが、次のチャイコフスキー
のヴァイオリン協奏曲の演奏には圧倒されました。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は演奏技法の難しい難曲として知られているのですが、どんな風
に難しいかとAIで調べると、ヴァイオリン協奏曲の中でも“最難関クラス”に位置づけられる超難曲とのこと。
その細かい説明を判りやすくするために箇条書きで紹介します。

1. 技術・体力・音楽性のすべてが極限まで要求され、初演を依頼された名手アウアーでさえ「演奏不可
  能」と断言した。
2.技術的難易度が極めて高い(最大の理由)
  高速パッセージ、重音、アルペジオ、スタッカート、スピッカートなど超絶技巧の連続
  第1・第3楽章は特に難所が多く、ヴァイオリンのあらゆる技術が総動員される。
3.第1楽章カデンツァは特に難関
   ハイポジションでの重音移動や広い音域のアルペジオが続き、音程の精度が極限まで試される。
4. 体力的に非常にきつい
   全曲は約30分、第1楽章だけで約20分。
   ほぼ休みなく弾き続けるため、マラソンのような持久力が必要。
5.第2楽章《カンツォネッタ》では、技巧よりも深い歌心が求められる。

このような難曲でしかも超有名なこの協奏曲を高校2年生の富樫音葉さんが演奏するのです。

その奏でるヴァイオリンの音の美しさ、表現力の素晴らしさはアゼリアホールがシンフォニーホールにくら
べて音響がやや乏しいかなと思わせたことも忘れさせ、通常、交響曲や協奏曲、ソナタなどの楽曲は全楽
章が終わるまで拍手はしないのですが、第1楽章が終わった時、拍手が鳴り響いたのです。
2007年のチャイコフスキーコンクールで優勝した神尾真由子さんが本選で第1楽章を弾き終えた時、モスク
ワの聴衆たちが拍手したのをテレビで見たことを思い出しました。

そして5の記述「第2楽章《カンツォネッタ》では、技巧よりも深い歌心が求められる」ですが、彼女はこの楽章
を弱い音色で弾きだし、それをオーケストラの音に消されること無く、抒情的に演奏していくのですが、あれだ
け緊張感を保ったまま終わりまで持続できることよ、と驚嘆の思いで聞き惚れ、最近、こんなに引き込まれる
演奏会に出会ったことが無いと思うくらいの感動でした。
その抒情性の素晴らしさは息を呑むような思いでした。

2楽章から3楽章は切り目なく続くのですが、弱音から大きな音量へと演奏をクライマックスへ持って行くオーケ
ストラのダイナミックレンジの広さに指揮者、東尾多聞氏の力量を感じさせられ、とにかく私の感動を表現する
のに適切な語彙が見つからないような演奏会でした。

終楽章を演奏し終えて、鳴りやまない拍手に応えて富樫さんは無伴奏のアンコール曲を演奏するのですが、
ここで私はこの難曲を演奏する大変さを目撃したのです。
本番の演奏前に彼女は調弦を驚くほどの速さでやったのですが、アンコール曲を弾く前に調弦する時はかなり
手間がかかったのです。
ある5度を調弦するのに何度も繰り返してました。
それは調弦が得意でないヴァイオリニストのもののように映ったのです。
この時、私は箇条書き4の「ほぼ休みなく弾き続けるため、マラソンのような持久力が必要」という記述を思い
出し、彼女は疲労困憊の中にいるのだなと思ったのでした。

3曲目のバレエ組曲「くるみ割り人形」も素晴らしかったです。
特にハープとチェレスターの前奏で始まる曲の美しいこと。
ハープ演奏の美しさに聴き惚れましたね。

そして圧巻はプログラムの全曲演奏が終わったあとのアンコールの曲でした。
バレエ組曲「白鳥の湖」の「情景」の音楽をアップテンポで演奏しだすのです。
同バレエの最終シーンの大団円の場で演奏されるバージョンと思うのですが、白鳥の湖では最も知られたこの曲
が抒情的ではなく、追い立てるように奏でられるその迫力は凄いものがあり、最後のクライマックスで東尾多聞氏
の指揮棒が振り下ろされて終わったときの聴衆の爆発したような拍手は凄かったです。
しかし、指揮者及びオーケストラ団員の疲労感を聴衆も理解していたようで、しつこい拍手はなく、自然のかたちで
止まり、心地よい雰囲気を感じました。

それにしても今年1月には70分にも及ぶマーラーの交響曲5番を演奏したばかりの関西シティフィルがわずか4ヵ月
でこのような濃厚なコンサート実現できるのを見てほとほと感心します。

富樫音葉さんに強い関心を持った私たち夫婦は帰宅するなり彼女のことを調べたら、驚いたことに彼女は富樫美玲
さんと双子の姉妹で、どちらもヴァイオリニストなのです。
その二人の10歳のころの演奏をお聞きください。
チャルダーシュ