芦屋釜の里を訪ねて
             2009.10.23 川島道子
 
先日茶の湯の名器として名高い芦屋釜の発祥地でもある
芦屋釜の里に行ってきました。芦屋といえば兵庫県の芦屋が
有名ですが、こちらは福岡の芦屋です。
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芦屋の里の入場門
 
芦屋釜の名前は知っていても詳しいことはほとんど知らず、
ネットで下調べをしてから期待を持って出かけました。
福岡から車で1間半ほどの距離で、お茶仲間との遠出
楽しいひとときでした。
 
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芦屋には、古くから優れた釜を作る鋳物師たちがいました。彼らの
作る釜は芦屋釜と呼ばれ、その優美な形、美しい文様は京の茶人
たちにももてはやされました。
 
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丹生忍冬斎画 芦屋釜を作っている様子
 
芦屋釜は鎌倉時代から製作が始まり、その名声は室町時代には
一世を風靡しましたが、芦屋釜鋳造の歴史は江戸時代初期には
終わったと言われています。しかしその芸術性、技術力に対する
評価は今なお高く、国の重要文化財に指定されている茶の湯釜
九個のうち八個までを芦屋釜がしめています。
 
 
 
04芦屋飛行場付近
 
芦屋釜を作るためには、鉄を溶かすための燃料となる木炭、
釜の鋳型を作るための鋳物土、釜の材料となる鉄があげら
れます。鋳物土は近くの山の土を使いました。
 
 
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夏井ヶ浜
 
鉄の原料となる砂鉄は近くの海岸から得ることができました。
(これについてはまだ解明されてない面もあるようです)
芦屋釜の高い評価は、軽量で堅牢であること、音色が綺麗な
こと、そしてなによりも美しくなめらかな肌に鋳出された繊細
優美な紋様にありました。本来錆び易い鉄の釜がチタンを多量に
含む芦屋釜だからこそ、六百年もの長い間使用に耐えて現在に残っ
ているのではと言われています。それでは芦屋釜の代表的な作品を
紹介します。

 
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芦屋浜松図真形釜(あしやはままつずしんなりがま)重要文化財 
 
今残っている芦屋釜のうちで、もっとも古い時期の作品の一つで、
製作の時期は鎌倉末と言われ芦屋釜を調べるときの手本となる釜
だそうです。真形とは日常の湯沸し釜の自然の形をいうそうです。
 
 
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釜の下方には州浜(川や海の浅い所で、小さな島になっている
砂浜)に生える松の木が、軽い調子で品よく描かれています。
 
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芦屋楓流水鶏図真形釜(あしやかえでりゅうすいにわとりずしん
なりがま)重要文化財  
 
室町時代中期の作で闘鶏が描かれています。
  
 
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反対側には流水、楓の葉(紅葉)が表現されています。小倉百人一首
「ちはやぶる神代も聞かず竜田川 唐紅に水くくるとは」はこの釜
図文と同じ光景をうたったものです。
 
 
 
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芦屋五匹馬図真形釜(あしやごひつばずしんなりがま)
 
室町時代中期ごろの作品で芦屋釜を代表する作品として有名です。
 
 
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胴部には遠山を背景にして、五匹の馬の躍動する姿を描いて
いますが、馬の一瞬の動きを見事にとらえています。
  
 
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東大阪市・角谷工場の製作風景
 
芦屋で釜つくりがなされてきたのは、
*鋳物に使える土や砂(砂鉄)が近くにあったこと。
*鉄を溶かすために使う大量の木炭を遠賀川の船で運び
 やすかったこと。
*芦屋 山鹿の浜には砂鉄が豊富にある。(当時、この砂鉄
 を使ったかどうかは研究中だそうです)
*鉄地金の運び込みと製品の送り出し適した港があったこと。
 余談ですが弥生時代後期には「岡の津」の港として有名。
 
 
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砂鉄から精錬した鉄の断面
 
 
芦屋釜に代表される茶釜は日本刀と並んで日本古来の金工品
であり、すぐれた鉄の芸術品ですが、都にまでも名を轟かせた
芦屋釜も、保護者であった周防の守護大名大内氏の没落とともに、
芦屋での釜つくりも衰退していきました。
 
芦屋釜つくりが途絶えて400年たちますが、いまだそれを超える
茶の湯釜はないといわれます。資料文献の少ないなか芦屋釜復興の
努力が今始まっています。
 
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芦屋復興工房
 
現在においても砂鉄製錬鉄の鋳造は難しいと言われていますが、
優れた芦屋釜をつくった芦屋鋳物師の技術の高さは学ぶべきもの
が多いと言われています。芦屋釜をテーマにした「芦屋釜の里」の
施設内には釜の復興工房や資料館の他、日本情調豊かな庭園内には、
本格的な大小の茶室があり、茶会などに利用されているようです。 
 
 
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吟風亭 露地もある本格的な茶室
 
 
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吟風亭内部
  
 
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蘆庵 池をはさんで吟風亭と向き合っています。
 
 
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くつろぎのひと時
 
 
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「芦屋釜の里」近くの、魚見公園にある展望台から眺めた響灘
 
 
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芦屋は遠賀川の河口に立地しています。近くの芦屋基地から飛び
たった戦闘機らしき飛行機が爆音を響かせて飛び交っていました。
 
 
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我が家には、この春小春ママさんのお母様から頂いたお茶道具
一式があります。茶の湯のかなめとなる釜と風炉によって部屋の
雰囲気が一新し、お茶を楽しむ空間ができました。日常的にお茶を
楽しめる場所ができましたことから夢や希望がひろがりました。
 
 
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私の住む西新町は文教地区であるとともに交通の便がよく、
近くには祖原山という元寇ゆかりのウオーキングに最適の場所や、
博物館、図書館などが歩いていける距離にあり、買い物の便もよく
て私は高齢者の一等地と自称しているところです。後10年はこの
場所で自立して過ごしたいと思っていましたが、このお茶道具
おかげでその目標にむけて希望がわいてきました。地の利を生か
て多くの方たちとの出会いと語らいの場にしていきたいと夢を描い
ています。
 
 
 
参考資料
 
   芦屋釜図録         芦屋町教育委員会
 
   芦屋釜の名品        淡交社