ブルガリア演奏旅行記   by 田中正美

2009年4月、ブルガリアで行われたコンサートに出演しました。
コンサートに出演するのは、初めて。そして、オーケストラを指揮するのも初めて。
そんな作曲家、田中正美のブルガリア演奏旅行記です。

4月2日
午後五時ごろ、ブルガリアの首都、ソフィアの空港に到着しました。

このコンサートの為に6ヶ月程の時間をかけて準備してきた私。
初めてオーケストラを指揮をするチャンスをいただき、「田中さんは、自作自演(自分で
作曲したものを、自分で指揮すること)でもいいよ!」
と、先生に声をかけていただいたときには、嬉しさのあまり、言葉が出ませんでした・・・。

それから、6ヶ月・・・

何度も、「もう、間に合わないかも・・・」「何か、この音違う・・・?」
などと思いながらも、自分の曲に対してのイメージを大切にしながら、そして、ブルガリ
アでの観客を想像しながら、書き上げました。(この曲が実は、クラシックでのオーケス
トラ作品1作目なのです。)

空港に到着する前、飛行機の中から見下ろしたソフィアは、自然が広がり、すこし黄土
色の靄の掛かった、今までに見たことのない種類の景色でした。「黄土色」というのは
たぶん、土埃の色です。

飛行機を降りると、空港は閑散としていました。
出口を見つけて外に出ると、現地の会社の方が笑顔で出迎えてくださいました。
温かいお出迎えに、私の緊張も少しほぐれたかな・・?

「よく眠れましたか?」などのちょっとした会話を交わしながら、空港の駐車場まで行き、
車でホテルへ送っていただきました。







ホテルに到着すると、今回私をブルガリアに連れてきてくださった、指揮者の守山俊吾
先生からのメモがあり、同じコンサートに出演する他のメンバーは、ソフィアフィルの定
期演奏会を聴きに行ったとのこと。私は、ひとり部屋でゆっくりすることにしました。

4月3日
リハーサル1日目。
朝食は皆と一緒に食べました。バイキング形式になっていて、日本とほぼ変わりません。
パン、果物、野菜、コーヒー、紅茶、チーズ、ヨーグルト、蜂蜜などです。

朝食の後、皆でホールに向かいました。
初めて歩く、ブルガリアの道!でこぼこしていて、少しヒールのある私の靴では、歩きに
くかったです。
また、大きな道路なのに信号がなく、車がビュンビュン走る中を、私達、歩行者は突っ切
って渡ります・・・。(こんな道路、一人で渡れるだろうかと不安・・・。)
ホールへは10分程で着きました。ホールへの道の途中、こんな綺麗な建物が。


ホールに着くと、リハーサルが始まりました。
リハーサルは、本番と同じ順で進みます。私は、二番目の出番。
一番の人のリハーサルを聴きながら、「私、すごい所に来てしまった・・・」と、思いました。
格好いいサウンドがホールいっぱいに響いているんです。これが、ソフィアフィルか〜と
感動しながら、出番を待ちます。

いよいよ自分の番がやってきました。
守山先生が、私のことをオーケストラのメンバーに紹介してくださって、
リハーサルの始まりです。

緊張しながらも指揮台に上り、振りはじめました。
初めての指揮で、どうなることか・・と思いましたが、後ろで守山先生がサポートしてくだ
さりなんとか、最後まで通りました。

「あ〜、思っていたより、指揮って難しい!!」というのが最初の感想です。
どうやって、オーケストラのメンバーにエネルギーを伝えるか・・音を引き出すか・・本当
に難しいのです。

一回目のリハーサルは、オーケストラの人達は、初見での演奏という事もあって
音が違っていたり、入る場所が違っていたりと、あちこちで不協和音が鳴り響いていま
したが本番までには、うまく合わせられることを信じて、この日のリハーサルは終了しま
した。

写真 6(ゆみちゃんにもらう)
リハーサル終了後、皆で昼食に中華料理を食べに出かけました。

中華料理は、おいしかったですよ!
ちょっと量が多かったですが(笑)

その後、市内観光へ。
ご自身もピアニストで、何度もブルガリアを訪れたことのある、村上祥子さんが案内して
くださいました。
ソフィアの町は、車の交通量も多く、人も多く、ゴチャゴチャした印象です。
日本に比べると、だいぶ田舎なのですが、活気がある感じがします。

まず、はじめに訪れたのが、「セントラル・ハリ」という、ブルガリアのショッピングセンター。
地上二階、地下一階の建物です。
食料品や飲食関係が中心になっていました。

フルーツ、蜂蜜、チーズ、ケーキ、ワイン、ハムのお店など、そして、みやげ物屋。
私はここで、いい香りのする石鹸を買いました。

そして、次に訪れたのが、「ツム・デパート」
こちらは、デパートです。
一階には化粧品、上の階には、洋服のお店、アロマのお店、お土産屋。
日本でもおなじみの「NIKE」や「LAURA ASHLEY」もありました。
お値段は、日本で買うより安いと思います。

ホテルに戻ったら、夕食を皆でいただきました。
夕食は、毎回コースになっていて、オードブルからデザートまであります。
これも、量が多いですが、野菜がしっかりあるので、ヘルシーです。

4月4日
リハーサル2日目。

1日目と同様、皆で朝食を食べ、コンサートホールに向かいました。

この日のリハーサルは、1日目のリハーサルに比べ、格段に良くなっていました。
プロのオーケストラとは、こういう物ですね!
逆に、自分の指揮がうまく行かずに、音がずれてしまう箇所が出てきて、課題が残りま
した。
明日は、うまく行きますように・・・

リハーサルの後は、皆で昼食を食べにイタリアンのお店に行きました。
1日目の中華料理で食べ物を注文しすぎてしまった私達は、とても慎重に、少しすくな
め?と思う程度に注文をしました。
何度もウエイトレスに首を傾げられましたが、失敗を繰り返さないためにも、「これでい
い!」ときっぱり言いました。
隣のテーブルを見ると、明らかに、日本では3人分くらいの量を一人で食べています・・・。

昼食の後は、自由行動になりました。
私は、同じコンサートに出演する渡辺結実さんと一緒に、市内観光をしました。

まず初めに訪れたのは、アレクサンダル・ネフスキー寺院。


横から見ると、こんな感じ


この寺院は、町のど真ん中にあり、また、とても大きいので、この寺院を目印にして歩け
ば迷わないと思います。
少しこの寺院の説明をしますと、
「5000人を収容するバルカン半島最大にして、最も美しいといわれる寺院。高さ60mの
金色のドームをはじめ12のドームからなる建物。この寺院はブルガリア独立のきっかけ
となった露土戦争で戦死した20万の兵士を慰霊する目的で建立され、1882年に着工
してから40年の歳月を経て完成した。(地球の歩き方より)」

中は、煌びやかで豪華でしたが、落ち着いた荘厳な感じが漂っていました。
壁はメノウや大理石をふんだんに使った壁画で覆われています。
また、巨大なシャンデリアもありました。

この建物の地下には、イコン画を展示する博物館がありました。
イコン画とは、東方正教会の伝統で大切にされてきた板絵の聖画像を指すのだそうです。

次に訪れたのは、聖ソフィア教会の周辺。


首都ソフィアの名はここに由来しています。
6世紀にユスティ二アヌス帝が建てた教会で、外では、ずっと炎が燃えています。
(後ろの赤い建物が教会)


そして、少し歩いて国立美術館へ。(インターネットから画像借用)


ここでは、ブルガリアの芸術家の作品を展示していました。(以下、同美術館パンフレットから)



この建物は、かつては王宮として使われていた建物で、館内は、歩くたびにキュッキュッ
と音のする木の床でした。
順路も少し入り組んでいて、中で迷ってしまいました。
  

こんな、作品が展示されていましたよ。
 



次は、セルディカの遺跡へ。
セルディカ遺跡に着く前、共産党本部があったので、写真を


そしてこちらが地下にあったセルディカ遺跡


ここは、古代の城塞都市で、
2〜14世紀の城壁や門の一部が残り、ローマ時代の壷なども展示されています。

ここで、初めて日本人の他の観光客に出会いました。
日本からソフィアに観光に来る人はとても少なく、私のこの旅行の中では、この一回だ
けでした。

そして、少し歩き疲れてきたところで、村上祥子さんも合流してお茶タイム!
ブルガリアにもマクドナルドがありました。


今、世界で日本ブームになっているという話を聞きますが
このマクドナルドでも、「味」や「風味」といった漢字を発見しました。
写真にも「味」の提灯が!!

喉も潤ったところで、次はお土産物屋さんへ。
ブルガリアでは、バラの製品がとても有名で、私はバラの香水とエッセンシャルオイルを
購入しました。


少し歩いていると、シェラトンホテルが


また、少し歩いて、聖ネデリャ教会へ。



教会の壁には、写真入のプロフィールのような紙が貼られており
なんだろう?と思って聞いてみると、
その日亡くなった人のお知らせをしているとの事でした。

そろそろホテルの方に帰ろうかと、ホテルの方に歩き始め
その道中にある、ワインショップに立ち寄りました。

ブルガリアは、ワインでも有名なんです。
とても安く300円ほどでも、おいしいワインが飲めるんですよ!
また、珍しい赤色のシャンパンもあります。

このワインショップで偶然守山先生に出会いました。

そして、帰り道










国立のオペラ座もありました。


4月5日
コンサート当日。

午前中には「ゲネプロ」と呼ばれる、本番前の最後の通しリハーサルがありました。
昨日までのリハーサルでうまく合わせられなかったところを練習できる最後のチャンス
です。
緊張と不安の中で、何とか自分を奮い立たせていました・・・。

指揮台に立ち、ゆっくり振り始めます。
「なんとかうまく行ってる??」と感じながら曲が過ぎていきます。
昨日まで合わなかったところも合ってきてる・・・いい感じ・・・
そして、エンディング。

曲が終わった瞬間、オーケストラのメンバーからは「ブラボー」の声が!!

安心しました。これで、ひとつ超えられたかな・・・。

昼食は、皆でブルガリア料理を食べに行きました。
私は、「ムサカ」というシチューのようなものをいただきました。
(トマトベースのスープに肉団子が入っています。)

昼食後は、いったんホテルに帰りそれぞれの自由時間。
練習する人もいましたが、私は、ピアニストの渡辺結実さんと、村上祥子さんとおしゃべ
りしながら
リラックスした時間を過ごしました。

夕方になり、コンサートに出演するためにホールに向かいます。
これから、コンサートに出演するなんて信じられない気持ちだけど・・・

ホールに着くと、しばらくしてお客さんが入ってきました。

緊張は高まります。
そして、本番




この音楽を、観客の人達と一緒に感じたい・・・。そんな思いで振っていました。

リハーサルより上手くいったんではないかな??という感触でした。
小さなミスはあったものの、大成功です。
観客の皆さんからは、大きな拍手。




休憩の時間に観客席に行くと、たくさんの方から、握手を求められ、このコンサートがう
まく行ったのだと
本当に嬉しかったです。

他の出演者達も、皆、コンサートを大成功させ、大きな拍手に包まれていました。
コンサート終了後、オーケストラのメンバー15人くらいと出演者、そのご家族の大人数
で打ち上げに行きました。

そして、その日の夜は・・・嬉しさのあまり、なかなか寝付けませんでした。

4月6日
コンサート翌日。

フライトが夕方だったので、渡辺結実さんと一緒に過ごしました。
まず、イタリアンレストランで食事をし、(そのあたりでは珍しく、ユーロやドルも使えるお
店でした。)
それから、場所を変えて、お茶を。

このケーキはとってもボリュームがあり、甘党の私でも、食べきることが出来ず、少し残
してしまいました。
でも、味はすごく良かったです!

ケーキ屋に向かう途中、こんなお店も発見。
やはり、日本のお寿司は、有名ですね。


また、ソフィアの町を散策しているとこんな光景にも!

見えにくいですが
警察らしき人が、信号機の代わりに交通整理をしていました。

そして、大きなモニュメントが。

これは解放者記念像といって、ロシア皇帝アレクサンダル2世(1818〜1881)の騎士
像です。
アレクサンダル2世は、露土戦争の勝利によってブルガリアをオスマン朝支配から開放
した英雄。

だんだん、フライトの時間も近づいてきて、ソフィアともお別れです。
この5日間、私は、夢のような時間を過ごしました。
大学を卒業して、一時は、音楽以外の事をしていましたが、音楽の夢を諦められられず、
音楽の道に戻った私。不安も多かったけれど、音楽に対してのピュアな気持ちを忘れず
にいられたから、こうして幸運にも巡り会えたように思います。

このコンサートのために、様々なサポートをしてくださった、守山俊吾先生、村上祥子さん、
そして、いつも応援してくれている家族、友達に、心から、感謝したいです。

そして、ブルガリアを後にして・・・・
イタリアへ。


ここからは、イタリア編です。(おまけ)

4月6日午後8時

イタリアに到着しました。
イタリアのローマに住む友達の家に10日ほど泊めてもらう予定です。
コンサート後のお楽しみです!!といっても、コンサートでかなりの体力と気力を消耗し
てしまったので、イタリアでのんびりさせてもらいました。

これは、友達の住んでいる近くにあるアパートメントの写真です。
少し高級な部類に入るアパートメントで、有名なサッカー選手も住んでいたんだとか。


ローマでは、フォロロマーノという古代の遺跡に行ったり


トレビの泉


真実の口
(時間外だったので、中までは入れませんでした。)


スペイン広場


バチカン市国


など
日本でも有名なスポットに立ち寄りました。

また、イタリアではイタリアンのお店が本当にたくさんあって
それ以外のお店を探すのが難しかったほどです。

イタリアに滞在中、2泊でフィレンツェにもプチ旅行しました。

後ろに見えるのが、フィレンツェの町並み


これは、ミケランジェロ広場

(二人とも、ちょっと笑っているのは、写真を撮ってくださったお兄さんが面白かったから!)

ガイドには大きく載っていなかったけれど
ガリレオが住んでいたという家にも行ってみました。


そして、チャイコフスキーの別荘にも。
(ここは、地元のタクシー運転手でも知らない、穴場スポットでしたよ。)
フィレンツェの中心地から少し離れた小高い丘にあり、高級な住宅地という感じの場所
でした。




チャイコフスキーもここに来ていたんだな〜と思うと、
すごく感慨深かったです。
ここで、どんな音楽がうまれたんでしょうか・・・。

遠くからの写真


これで、旅のレポートは終わりです。
ありがとうございました。