(18のリワキーノの発言の続き)

 私の息子、教雄の一人の友人の話をご紹介したいと思います。その子(仮にK君とします)は教雄の小学校時代の同級生であり、担任が問題児扱いするグループの一人でした。そのグループのリーダー格の子は後に本当のワルになってしまいましたが、何故か教雄はこのグループの連中と親しく、担任から「あんな連中とつき合っていたらお前まで駄目になるぞ」としばし忠告を受けておりました。(自分が担任を受け持つ生徒にこのような言動をするこの教師についてはまた別のところで触れることがあると思います)
 担任教師の助言に従ったわけではないのですが、教雄は6年生になったころから急に進学勉強熱に取りつかれ、K君らとのつきあいは疎遠になりました。
 そして大学に入ってから間もないころ、教雄はK君と路上で再会したのです。当時、K君は高校を卒業した後、社会人となって働いておりましたが、ロックに熱中してバンドを結成しておりました。再会したときエレキギターを持っていた教雄にK君は大変興味を抱き、音楽の話で意気投合し、招かれてその後すぐに教雄はK君の家に遊びに行きました。
 かつてつき合っていたK君らのグループから離脱していったことにリーダーの子が教雄を恨み、リンチを加えようとしている情報を中学時代に聞いたことがありましたので、家内は大変心配してK君の家に行くことに難色を示したのですが、私は音楽で意気投合した間柄にそんな心配は無用と思って何も反対しませんでした。
 そしてK君の家から帰ってきた教雄は非常に暗い顔していたのです。気になった私はK君宅での様子を尋ねたところ、お互いにギターの腕前を披露したり、K君らロックバンドのオリジナル作品を聴かせてもらったり、K君がこの道で将来進みたい希望などを聞いたりなどしてK君との旧交は充実したもので大変楽しかったらしいのですが、K君のマンションの狭い住宅の別室から男性の時折あげる怒鳴り声に教雄が驚いたところ、それがアル中の父親の声であり、自分が大学にも行けず、このような境遇になっているのもあの親父のせいなんだ、というK君の辛そうな話に教雄はショックを受けたのです。自分が如何に恵まれているか、また、人生の不公平さを痛感したために暗い思いでK君宅を辞去したようなのでした。教雄は久しぶりに会ったK君の人柄に改めて惹かれたそうで、また、例のK君が属した不良グループが中学時代、自分にリンチを加えようとした噂も本当であり、それをK君がかばって防いでくれたこともK君の話から知ったそうで、K君への深い感謝の思いが一層、彼の悲しい境遇に心を痛めたのだろうと思います。K君が恵まれた家庭環境に育ったなら、今とは違った姿を見たのだろうなと思ったのでしょう。
 私はこの話を聞いたとき非常に胸が痛みましたが、どうすることもできず、天から与えられる人生は決して平等なものではないことを率直に言い、教雄が今でも惹かれるK君はきっとそれなりの大人に育っていくと思うよ、と慰めるしかできませんでした。
(このリワキーノの発言は次回に続く)