Subject: [ML:06750] Re:ご無沙汰してます。
Date: Sun, 2 Jul 2000 01:28:44 +0900
From:リワキーノ

海彦様
大阪は今日、凄い蒸し暑さでした。
シンガポールはもっと凄かったのではないでしょうか。
今日の虫本祝賀会は、豊下さんの絶妙なコーディネートのおかげで、実に実りある素
晴らしい集まりとなりました。懐かしい福井の銘酒・黒龍を味わえたのは最高でした。5
時間はアッという間に過ぎ去ったという感じでした。
次回は、後藤伸さんのお話をうかがうため、田辺まで押しかけようという話になってお
開きとなりました。

> ないように思われますので、あまり進化心理学のことで論争する必要はないように思
> います。むしろ私はタクラマカンさんの意見に共感する点が多いことをご理解ください。

海彦さんの伝えたかったことはよく解りました。
早速のレスを有り難うございます。

> にはいささか懐疑的なようです。私は読みかけのまま本を柏堂の家に置いてきてし
> まったので、次に帰国した際には是非続きを読みたいと思っています。

読みかけのまま、シンガポールに行ってしまったというところの海彦さんの距離感覚は
関西からちょっと出かけて新宮あたりに行ったという感じですね。
リワキーノ

Subject: [ML:06783] 進化心理学、FGMなど
Date: Sat, 8 Jul 2000 03:10:03 +0900
From:タクラマカン

リワキーノ様、海彦様、奥深志様、いおり爺様、皆様
返事を書くのを先延ばしにしていたら、何について議論がされていたのかわからなくな
りそうなのでとりあえずコメントします。皆様のメールの引用部分が長くなりますが、ご
了承ください。

リワキーノさん:
> 疑問を投げかけられると誠実にすぐさま、対応しようとされるそのご姿勢に感じ入り、
>以後もこのスタイルで対応されていたら大変だろうな、と思って、「以下できる限りのお>答えします」なんて返事メールを書かれることを恐れて、という言い方をしました。

お気遣いいただいたようでありがとうございます。しかし、決して誠実なわけではないし
、すぐさま返事を書いているわけでもないのに、「誠実にすぐさま対応」なんてキャッチ
コピーを書かれるとプレッシャーを感じます。
リワキーノさんも絶賛されていた「生命の意味論」、今日本屋で見つけ、おもしろそうな
ので買いました。感想などあれば、また書くかもしれません。

海彦さん:
> 進化心理学という学問は人間行動生態学とほとんど同じものなのではないのかな
> と解しています。

私も昨年始めて進化心理学の話を聞いたときに全く同じようにように感じました。いま
だに違いはよくわかりませんが、私の印象では、人間行動生態学は自然科学からの
アプローチのみであるのに対し、進化心理学は自然科学はもちろん人文社会科学か
らのアプローチも含んだものであるという点で違っているように思います。前に引用し
た「進化と人間行動」のまえがきでも境界領域の学問であるということが強調されてい
ます。進化心理学のなかに人間行動生態学も含まれる、という感じでしょうか。

> 私が読んだ進化心理学関連の本の中で、非常に危うさを感じたのは竹内久美子
> 氏の幾つかの著作ですが、これなどはドーキンスの「利己的遺伝子」理論をご都
> 合主義的に使って彼女が作り上げた物語ばかりのような気がします。
> 勿論、私は竹内氏の著作だけを取り上げて進化心理学全体を否定しようなどとい
> う無茶な考えは持っておらず(進化心理学の専門家の中にも竹内氏の著作を厳し
> く非難する人は多いようですし)、

全くその通りだと思います。本屋では竹内久美子の本が生物学のコーナーに並べられ
ているので、この人の著作は学術的な内容だと一般に考えられているようですが、トン
デモ本の一種だと思います。学会のエラい先生のなかにも竹内久美子批判をする人
がいます。それが全て本人が出てこない場でされており、ちょっとそれは欠席裁判じゃ
ないかと思ったりもしますが、やはり彼女の著作を進化心理学の一部として読むのは
妥当ではないでしょう。

> ただ、私たちの心の中に「環境への適応の跡」
> を見出し、そこから「道徳の起源」や「文化の起源」を推し量ることが出来たとして
> も、それを実証することも反証することも出来ないので、それは結局のところ物語
> を紡ぐだけになってしまうのではないかという懸念も抱いているのですが、どう思わ
> れますでしょうか?

うーん。これは非常に痛いところです。進化というものは観察も実験もできないことな
ので、所詮は物語だ、と言われるとなんとも言い返す言葉がありません。私が興味を
持っている動物の行動生態学についてもよくできたお話に過ぎないという批判はありま
す。私自身はむしろその「よくできている」部分がおもしろいと感じるのですが。意識は
していませんが、「こう解釈するのが妥当だ」と考えることで、自分のなかで折り合いを
つけているのかもしれません。
ともあれ、海彦さんのご質問に対しては今の時点ではお答えすることはできません。
今度進化心理学者と話をする機会があれば聞いておきます。

> ちょっと誤解のないようにしておきたいのですが、私は進化心理学そのものに対して
> はこれからの学問であり、とても面白いと思っています。ただ、その名のもとに飛びか
>っている諸説の中に「解釈」という名の「物語」に過ぎないものもあるようなので、あ
>えて懐疑的な書き方をしたのですが、タクラマカンさんが書かれた文章では冒頭部において進化
>心理の説を紹介されているものの、そこで展開されている内容は必ずしもそれに依拠し
>たものでないように思われますので、あまり進化心理学のことで論争する必要はないよ
>うに思ます。

この部分、私の拙い文章を意図した通り読み取っていただいてうれしいです。進化心
理学から見たFGM(性器切除はどぎついといおり爺さんのご指摘があったので)の意
義についてお話しましたが、私が書いたことは進化心理学的な見方ではなく、単に私
自身が思ったことです。紛らわしい書き方でした。

奥深志さん:
> ならないでしょうし、その名目が失われたとしても、合理性に逆らうなんらかの力学は
> 継続するんだろうなと思いました。男女平等の原理を掲げる人が、土俵に女性も上が
> らせろなどと、的はづれな要求をやってますが、それこそ、土俵が違うんじゃない?っ
> て思ったりします。

「女性であるというだけで入ってはいけない場所がある」ことに疑問を持つのはよくわ
かりますが、土俵に上がらせろと要求することは確かにどうかと思います。そもそもほ
んとに土俵に上がりたいのか?とか。そう要求している人の言い分をよく聞いていない
のでわかりませんが。以前大峰山の女人結界の山域に女性の登山グループが強引
に登ったとニュースになっていましたが、抗議するのが目的であったなら(登った人の
言い分をよく聞いていないのでわかりませんが)もっと別の方法があるのではないかと
思いました。アルバトロス・クラブには修験道について詳しい方が多いようですから、今
でも女人結界が存在する理由とかその是非についてまたお教えいただければと思い
ます。

いおり爺さん:
> 不適当と考えます。表題を見てどぎつくて、ドキッとしました。
> 日本語に適当語がないので、割礼と言わざるを得ませんから、女子割礼でしょう。
> 表題用語も不適切です。性器を切除するのではないからです。
> 日本社会に少しでも風習があれば別でしょうが、単語もない社会では。
> M/L上では微妙複雑過ぎます。群盲象を撫でる以下と私考しますが。
> 女権擁護ならまだいくらも外の論題があるはずです。 失礼。 いはら

私はとくにどぎついとは感じなかったのですが、そう感じる方がおられるならそれを無
視してまで性器切除という言葉を使おうとは思いません。しかしいおり爺さんが「性器を
切除するのではない」と断言される根拠についてはよくわからないので、以前エミータ
さんが書かれていた英語のFGM(Female Genital Mutilation)でどうでしょうか。意味が
過不足なく伝わるのならFGMであろうが女子割礼であろうがかまわないのですが。
確かにこの慣習に関しては私たち日本人は盲人であるに等しいと思います。しかし盲
人も多くの人の情報(アリス・ウォーカーとかワリス・ディリーとか、MLでの議論とか)が
あれば、より正確に近い象のイメージが思い描けるのではないかと思います。そして、
私自身は議論することの意義が、みんなでひとつの象のイメージを共有することにあ
るとは考えていません。自分がイメージした象と他の人がイメージした象では同じ動物
でもこんなに違うのか、と実感できるだけでもいいと思っています。女権擁護と考えて
いるわけでもなく、単に気になる問題だからです。無責任な言い方ですが。
しかしMLで議論することが不適当だと考える方がおられるのであれば、これ以上ここ
でFGMについて書くべきではないですね。
以上です。進化心理学についてはともかく、FGMに関してはこれくらいで私の方からな
にか書くのはひかえようかと思います。ただしこの問題に対する私の捉え方が大きく変
わったわけではありません。
それでは。
みずた

Subject: [ML:06789] RE:進化心理学、FGMなど
Date: Mon, 10 Jul 2000 15:05:24 +0900
From: 海彦

タクラマカン様
>私も昨年始めて進化心理学の話を聞いたときに全く同じようにように感じました。い
>まだに違いはよくわかりませんが、私の印象では、人間行動生態学は自然科学からの
>アプローチのみであるのに対し、進化心理学は自然科学はもちろん人文社会科学から
>のアプローチも含んだものであるという点で違っているように思います。前に引用し
>た「進化と人間行動」のまえがきでも境界領域の学問であるということが強調されて
>います。進化心理学のなかに人間行動生態学も含まれる、という感じでしょうか。

なるほど、そうですね。ただ、進化心理学は人間行動生態学の達成を前提として成り
立つ学問のような気もしますが、いずれにせよこの二つの学問がかなり重なり合って
いることは間違いなさそうですね。

>全くその通りだと思います。本屋では竹内久美子の本が生物学のコーナーに並べられ
>ているので、この人の著作は学術的な内容だと一般に考えられているようですが、ト
>ンデモ本の一種だと思います。学会のエラい先生のなかにも竹内久美子批判をする人
>がいます。それが全て本人が出てこない場でされており、ちょっとそれは欠席裁判
>じゃないかと思ったりもしますが、やはり彼女の著作を進化心理学の一部として読む
>は妥当ではないでしょう。

なるほど、やはりそうですか。ただ、初期の竹内氏の著作には日高敏隆氏が対談相
手として登場していたものがあったように記憶していますが、そうなるとやはりそれなり
の権威付けがされてしまって、一般人は惑わされてしまうのかも知れませんね。

>で折り合いをつけているのかもしれません。
>ともあれ、海彦さんのご質問に対しては今の時点ではお答えすることはできません。今
>進化心理学者と話をする機会があれば聞いておきます。

実は私は「物語」が大好きな人間なのですが、物語というものは壮大な嘘であってほし
いと思っていますし、壮大な嘘の中には必ず真実が隠されているとも思っています。こ
こで物語論を展開していってもきりがないので、機会を改めてまた語り合いましょう。進
化心理学者の方のコメントを楽しみにお待ちします。

>この部分、私の拙い文章を意図した通り読み取っていただいてうれしいです。進化

>理学から見たFGM(性器切除はどぎついといおり爺さんのご指摘があったので)の意義に
>ついてお話しましたが、私が書いたことは進化心理学的な見方ではなく、単に私自身が
>ったことです。紛らわしい書き方でした。

了解しました。進化心理学の話は少し脇に置いておいて、本題の議論を続けましょう。
海彦

Subject: [ML:06790] Re:進化心理学、FGMなど
Date: Mon, 10 Jul 2000 16:39:29 +0900
From: リワキーノ

タクラマカンさま
お返事が遅くなりました。

> お気遣いいただいたようでありがとうございます。しかし、決して誠実なわけではな
> いし、すぐさま返事を書いているわけでもないのに、「誠実にすぐさま対応」なんて
> キャッチコピーを書かれるとプレッシャーを感じます。

とかく表現がオーバー過ぎる、と私の親しいMLメンバーが何かと言えば忠告してくれ
ます。
私としてはタクラマカンさんの対応を「誠実にすぐさま」と思ったのですが、それがタクラ
マカンさんに余計なプレッシャーをかけたのなら申し訳なかったです。
ま、表現がオーバーな感激屋おじさん、と思って下されば有り難いです。
しかし、私の表現をキャッチコピーと言われたのはちょっと応えましたね。

> リワキーノさんも絶賛されていた「生命の意味論」、今日本屋で見つけ、おもしろそうなの
> で買いました。感想などあれば、また書くかもしれません。

学生時代、元素記号、分子式を見ると重苦しい気分になり、滑車問題とか梃子運動の
問題を見ると吐き気をもよおす化学・物理音痴が興奮して読みふけった本であります。
DNAの仕組みを初めて素人にも解りやすく説明をしてくれた本として私は著者の多田
富雄氏に深い感謝を捧げます。←やはりオーバーな表現か。

> 奥深志さん:
> > ならないでしょうし、その名目が失われたとしても、合理性に逆らうなんらかの力学は
> > 継続するんだろうなと思いました。男女平等の原理を掲げる人が、土俵に女性も上が
> > らせろなどと、的はづれな要求をやってますが、それこそ、土俵が違うんじゃない?っ
> > て思ったりします。
>
> 「女性であるというだけで入ってはいけない場所がある」ことに疑問を持つのはよく
> わかりますが、土俵に上がらせろと要求することは確かにどうかと思います。そもそ
> もほんとに土俵に上がりたいのか?とか。そう要求している人の言い分をよく聞いて
> いないのでわかりませんが。

これについては今のところノーコメントです。
いえ、私の意見もあるのですが、長くなるのでここでは述べません。

> 以前大峰山の女人結界の山域に女性の登山グループが強
> 引に登ったとニュースになっていましたが、抗議するのが目的であったなら(登った
> 人の言い分をよく聞いていないのでわかりませんが)もっと別の方法があるのではな
> いかと思いました。

まさに同感です。

> アルバトロス・クラブには修験道について詳しい方が多いようで
> すから、今でも女人結界が存在する理由とかその是非についてまたお教えいただけれ
> ばと思います。

私も大峯修験道に深く関わる者、自信はありませんが、後日、何とかお答えしたいと
思います。土俵にしろ大峯山にしろ女人結界の是非については別にサブジェクトを作
って論じられたら良いなと思ってます。

> いおり爺さん:
> > 不適当と考えます。表題を見てどぎつくて、ドキッとしました。
> >
> > 日本語に適当語がないので、割礼と言わざるを得ませんから、女子割礼でしょ
> > う。
> > 表題用語も不適切です。性器を切除するのではないからです。
> > 日本社会に少しでも風習があれば別でしょうが、単語もない社会では。
> > M/L上では微妙複雑過ぎます。群盲象を撫でる以下と私考しますが。
> > 女権擁護ならまだいくらも外の論題があるはずです。 失礼。 いはら
>
> 私はとくにどぎついとは感じなかったのですが、そう感じる方がおられるならそれを
> 無視してまで性器切除という言葉を使おうとは思いません。

私は、性器切除の語はどぎついかな、と危惧しましたが、女子割礼が正しく理解される
ためには仕方ない使用だと思っておりました。しかし、いおり爺さんだけではなく、他の
人達からもあんまりな語彙では、という疑問が寄せられましたので、あえて使用するつ
もりは無いことを表明したのです。

> しかしいおり爺さんが「性器
> を切除するのではない」と断言される根拠についてはよくわからないので、以前エミータ
> さんが書かれていた英語のFGM(Female Genital Mutilation)でどうでしょうか。意
> 味が過不足なく伝わるのならFGMであろうが女子割礼であろうがかまわないのですが
> 。

FGMでは初めてこの標題に接する人には何のことか意味不明でしょう。
私は女子割礼、もしくは女性の割礼でいったほうが良いように思えます。

> 確かにこの慣習に関しては私たち日本人は盲人であるに等しいと思います。しかし盲
> 人も多くの人の情報(アリス・ウォーカーとかワリス・ディリーとか、MLでの議論と
> か)があれば、より正確に近い象のイメージが思い描けるのではないかと思います。

まさに同感です。

> そして、私自身は議論することの意義が、みんなでひとつの象のイメージを共有する
> ことにあるとは考えていません。自分がイメージした象と他の人がイメージした象で
> は同じ動物でもこんなに違うのか、と実感できるだけでもいいと思っています。女権
> 擁護と考えているわけでもなく、単に気になる問題だからです。無責任な言い方です
> が。

決して無責任な言い方とは思いません。
私も端的に言えば、単に気になる問題だから追求するのです。
イメージを共有する、しないのいずれにしてもまず、女子割礼の実態を知る作業をしな
いことには明確なものにはならないでしょうし、異文化介入、男のエゴの存在の有無の
論議にしても、意味のある論議はできないのではないでしょうか。実態を知って、なお
かつそこから各自解釈の違いが出てくるのでしたらそれはそれで意味のあることでは
ないか、と思います。

> しかしMLで議論することが不適当だと考える方がおられるのであれば、これ以上ここ
> でFGMについて書くべきではないですね。

確かにそういう方はいます。私個人としてもそういう声を聞いております。
しかし、そういう人がいるから書くべきではないと言うのはどうでしょうか。
この問題について判断を決めかねている人(かく言う私)だっているはずですし、もっと
論議を聞いてもう少し物事を極めたいという思いを持つ人もいるのではないでしょうか。
もし、不適当というのが、内容が痛々しくて、あるいは重苦しくて論議を読むに耐えない
ということなら、アルバトロス・クラブML上で論じられる論点はひどく狭まれた範囲に
拘束されてしまうのではないかと思います。
リワキーノ

(ここでもって女子割礼論議のやりとりは途絶える)