[ML:06310] Re:割礼
Date: Thu, 27 Apr 2000 18:54:42 +0900
From:リワキーノ
奥深志様
レスを有り難うございます。
奥深志さんまで加わってこられるとは、私のミスリードも相変わらずML活性化に貢献して
いるようです。←自画自賛
> 割礼に関しての僕の意見は、こちらの側(2000年代の日本)にいて、
> こちらの側の言葉で評価するのは自然な反応ですが、やめなさいという
> のはただのお節介にすぎないと、言うことだけです。
そうですか。奥深志さんの見解として承っておきます。
> むしろ、興味深いのは、私たちのついこのあいだまでの祖先も似たよ
> うなことをやっていたのに、なぜやめてしまったのか、と言う点です。
最初、祖先も似たようなことをやっていた、というところをもっと具体的に説明をお願いしよ
うと思ったのですが、後述するようにその後おのずと判明いたしました。
> 身体変工が「ひと」にとって普遍的な行為であるなら、それをやめて
> しまうことのほうが、ずっと不自然なように思えるのですが。
いおり爺さんも奥深志さんも「バンド」や「身体変工」などの通常聞き慣れない言葉を使用さ
れますが、もう少し誰もが一目見て意味が解る語彙を使用いただけたら有り難いのですが
。
私は最初、上記から以下の段落の意味が解りませんでした。
「変工」を「へんく」と読むのかと思って大辞林で調べても無く、身体の項目で「しんたいへん
こう」と読むことを初めて知りました。
身体変工→身体の一部に手を加えて、形を変えたり傷をつけたりすること。割礼・てん足・
入れ墨・ピアスなど。
大辞林の説明を引用すれば確かに長ったらしくなりますが、これを知れば奥深志さんの文
章はたちどころに理解できるのでした。祖先も似たようなことをやっていた、というくだりも
です。
> 身体変工の慣習がなんらかの圧力ですたれてしまっても、「ひと」が
> 「ひと」であるかぎり、体は欲求するはずで、その表れが、近代の圧力
> から比較的自由な渋谷あたりで蔓延しているのは、とてもうなづける現
> 象だと思います。
何らかの圧力というのは、野蛮である、非合理であるという現代人的センスからという意味
なのでしょうか。
なんだかいおり爺さんの言わんとされていることがうすらぼんやりと理解できるような気が
してきました。本当に薄ぼんやりとね。
> > 言いたい事は自分のバンドを基準にして安易に批判する傲慢さがキライなのです。
> 同感です。
> > 逆説になりますが、利口ぶって「なんで?」[どうして?」と聞くのがいけない。
> > 私達は質問するほど知ってはいないのです。
> 至言ですね。
いおり爺さんと奥深志さんの間ではツーカーのような意志疎通があるようです。それを理解
できない私がなんだか愚鈍に見えてきましたよ。しかしねえ・・・・
> いおり爺さんの書き込みは、噛みしめて味のある内容にあふれていますね。
> ML的じゃないどころか、もっともML的なキャラクターだと思います。
いおり爺さんも奥深志さんも奥行きの深い底知れぬものを持っておられる方たちだという
ことは私の愚鈍さでも推察できます。
ただ、お二人の文章は私には難解なのです。
海彦さん、岡本さん、宮本さんのような人達でしたらそんな思いをしないのでしょうが、私に
は噛みしめたくても歯が丈夫じゃないので(理解力が無いので)、長いこと噛みしめること
ができないのです。
私のような思いをするMLメンバーは他にもいらっしゃると思いますよ。いくらML的であっ
てもそれが多くの人に伝わらなかったら勿体ないと思いますし、中にはその高尚さ、難解さ
に怖れをなしてMLには絶対に発言しない人まで出てくるかも知れません。
と言いつつも、奥深志さんのこのメール、じっくりと噛みしめたら(辞書のページをめくりな
がら読んだら)いおり爺さんの伝えたかったことも少し解るような気がしました。
有り難うございます。
リワキーノ
[ML:06313] Re:女性の割礼
Date: Fri, 28 Apr 2000 00:33:24 +0900
From: 海彦
リワキーノ様
割礼が一種のイニシエーション(通過儀礼)として行われてきた社会は少なくなく、私はそ
れを頭ごなしに残虐なことと決めつけることはできないと思います。ただ、最近のアフリカ
社会では一部の部族においてかなり強力に女子割礼に対して宗教的な意味づけを行い、
女性が命を失ったり重傷を負うことを全く省みることなく、かなり乱暴な割礼が行われてい
るケースもあるという話を聞いたことがあります。リワさんのお姉さんたちが問題視してい
るのは多分そのことについてであり、割礼一般についてではないように思うのですが、如
何でしょうか?
海彦
[ML:06314] Re:割礼
Date: Fri, 28 Apr 2000 00:33:26 +0900
From: 海彦
奥深志様
> 身体変工の慣習がなんらかの圧力ですたれてしまっても、「ひと」が
> 「ひと」であるかぎり、体は欲求するはずで、その表れが、近代の圧力
> から比較的自由な渋谷あたりで蔓延しているのは、とてもうなづける現
> 象だと思います。
ヒトは自らの身体(=自然)に対して何らかの違和を感じるようになった時からヒトになった
というのが私の持論ですが、身体に何らかの加工を施そうという欲求はそうした心と身体
の違和を解消するためなのか、あるいはより違和を大きくすることによって心を飛翔させる
ためなのか.....。入れ墨、ボディビル、派手な化粧やピアス・ファッション、さらにはSMの緊
縛に至るまで、ヒトは常に身体に加工を施し続ける生き物であることは間違いありません。
しかし、身体というやつは別にわざわざ手を加えなくとも、どんどん変化していくものでもあ
ります。最近読んだ本の中に筑摩書房が出している短編小説選集で「からだの発見」とい
うものがあるのですが、これは実に面白いですよ。何だか身体に対する違和の表明こそが
文学だということを再認識させられるような作品ばかりが掲載されていますので、奥深志さ
んにも是非読んでいただきたいです。
> いおり爺さんの書き込みは、噛みしめて味のある内容にあふれていますね。
> ML的じゃないどころか、もっともML的なキャラクターだと思います。
同感です。いおり爺さんに去られると困ります。
海彦
[ML:06316] 女性の割礼
Date: Fri, 28 Apr 2000 04:27:52 +0900
From: エミータ
エミータ@ニューデリーです。
しばらくメールのチェックをさぼっていたら、女性の割礼に関するメールが大量に入ってい
てびっくりしました。
私は以前女性センターに勤めていた時、この問題を扱ったドキュメンタリーの日本語版制
作の仕事をしたことがあります。
アメリカの黒人女性作家、アリス・ウォーカーの製作総指揮で撮られたもので、タイトルは『
戦士の刻印?女性性器切除の真実』といいます。翻訳家のヤンソン柳沢由実子さんがこ
の問題に熱心に取り組んでおられ、日本語版はヤンソンさんに監修していただきました。
作った当時(もう4?5年前です)、各地の女性センターなどで、上映会をしましたので、菜
穂子さんもどこかでそれをご覧になったのではないかと思います。
山の神さんがおっしゃっていたFGMというのはFemale Genital Mutilationの略です。日本で
は「女性性器切除」という訳が使われています。
このFGMは、海彦さんがおっしゃっていたように、主に中近東からアフリカ諸国で今も行な
われており、現在でも地球上で約1億人の女性がこれを受けていると言われています。マ
リ、スーダンなど、女性の9割近くが受けているという国もあります。イスラム圏の国が多い
ため、「イスラムの教えだ」といってこれを強制されることも多々あるようですが、もともとイ
スラム教とは直接関係ない習慣です。
FGMにはいくつか種類があり、いおり爺さんがおっしゃっていたような、性器に少し傷をつ
ける程度のものから、外性器全体をえぐり取り、それを縫合する、という非常に危険なもの
まであります。アフリカ諸国ではこの後者が行なわれているところも多く、そのために命を
落とす女性もいます。FGMから逃れるため、海外へ亡命する女性も少なくありません。
私は残念ながら読んでいませんが、去年かおととし出版された『ファウジアの叫び』という
本は、FGMを逃れてアメリカに亡命した女性のノンフィクションらしいです。
FGMはたいがい初潮前の少女に行なわれますが、大人になってから嫁入り前にさせられ
ることも多いようです。
これをしていないとふしだらな女だということで、結婚を断られることもあるといいます。
性器をえぐりとり、縫合したあとはケロイドのような状態になって盛り上がってしまいます。
そのため普通に歩けなくなってしまう人もいますし、もちろん出血多量で死んでしまう人もい
ます。縫合する時は、尿と経血を出すためのほんの小さな穴だけを残して縫い、結婚する
と初夜の時、夫がナイフでそこを切り開き、また閉じてしまわないように、毎日繰り返し性
交するのだそうです。
施術はたいてい、そのコミュニティの産婆さんや床屋の女性が行ないます。消毒されてい
ないカミソリを何人もの手術に使いまわしたりするので、これがエイズ感染が広まる大きな
原因の一つになっています。
FGMを受けた女性が出産する時ももちろん大変なことになります。大変な難産になるので
、死産も起こり、母体も危険です。膣と直腸の間に穴が開き、便が垂れ流しの状態になっ
てしまい、「臭い女」と呼ばれて家族からも疎んじられ、放置される人もいるといいます。
なぜこんなことが行なわれるのか?ごくおおざっぱに言ってしまえば、FGMの目的は女性
の性欲を奪い、思い通りの従順な女にするためでしょう。
自分の文化のものさしで他の文化を野蛮だとか残酷だと決めつけるのは傲慢だ、野蛮だ
からやめなさいというのはおせっかいだ、といういおり爺さんや奥深志さんのご意見はもっ
ともですが、ことFGMに関しては、男性の割礼とは比べ物にならないほど危険なことが行な
われており、これはとても「文化」というものではないと思います。
日本でもFGMに反対して活動しているグループがありますが、私の知っているグループの
人たちは非常に慎重に、FGMに反対して立ち上がったアフリカの女性たちのグループを支
援する、という形で活動していました。
『戦士の刻印』のビデオは横浜の「横浜女性フォーラム」、「フォーラムよこはま」、東京の「
東京ウイメンズ・プラザ」、大阪の「ドーン・センター」などの主な女性センターのライブラリで
見られます。横浜市女性協会情報グループ(TEL045?224?2002)に連絡していただけ
れば、購入も可能です。
このビデオの他の資料としては、海彦さんがあげられていた『女子割礼』や、アリス・ウォー
カーが映像製作と同時に書き上げた小説『喜びの秘密』柳沢由実子訳(集英社)、『ファウ
ジアの叫び』(出版社はわかりません。読んでいないのでおすすめできるものかどうかもわ
かりません。)、それにユニセフなどの国際機関が出している女性とリプロダクティブ・ライ
ツに関する報告書などもあるはずです。これも女性センターのライブラリで聞いてみて下さ
い。関連のウェブサイトもいくつもあるはずです。
すっかり長くなってしまいました。私が書いたことの中にも間違いがあるかもしれません。
関心をお持ちの方はぜひ他の資料でも調べてみて下さい。
深入りしない方が身のため、というのはその通りかもしれません。
思い出すだけで胸が痛くなるようなしんどい話ですので...。
でも、これは日本の私たちに全く関係ない話ではなく、同じ根を持つ問題は他の国にも
、日本にも、たくさんあると思っています。
疑問に感じたことを納得がいくまで調べようとされるリワさんの姿勢は本当に大事なことだ
と思います。事実誤認からくる新たな偏見を生まないためにも...。
とてもセンシティブな問題ですが、国際機関も腰を上げ、次第に人権問題としてとりあげら
れるようになってきています。
一日も早く、FGMが地球上から無くなる日がくればいいと思います。
『戦士の刻印』の映像の中に、切除前の儀式で不安に怯えている幼い少女たちが出てき
ます。まだ5才ぐらいのあどけない子です。あの目は忘れられません。
ちなみにこの映像の中に直接手術場面を写すようなえげつないシーンはありませんので
安心して見て下さい。
コンテンポラリイ・レディ?のエミータより
[ML:06317] Re: 割礼
Date: Fri, 28 Apr 2000 09:53:59 +0900
From: いおり爺
Riwakino wrote:
> この点についてはもっと詳しい話を伺いたいのですが、控えておきましょう。
> また言葉尻を捉えての質問責めになってはいおり爺さんも迷惑でしょうから。
有り難き幸せ。
反省するわが欠陥は、論争が出来ないんだ。すぐ手がでるとこなど、時代が異なれば金鵄
勲章もんだ。(倫理とは実に面白い。人殺しでも鬼になったり英雄になったりして。一体何
が正邪を決めるのか? それは「愛」か。糟糠の妻、山内一臣の妻の美談もいまじゃあ単
なる忍従と虐待だしナ)
上意下達ってゆー社会はつい昨日のことだった。ホーケンと言われると困っちゃうが。ノー
ガキだけで身体が動かないノッポ→体育会系部員。
> バンドとは「集団」という意味ですね。
申し訳なし。尊敬するデズモントの邦訳に使われていたのでうつった。コンテンポラリイレデ
イは語感を薄める為に舌を噛む横文字を使った。ホントは今時のオンナは、と蔑視語を使
いたいのだが再起不能になるのでナ。参政権取って、時代は変わったのだ。
> いや、いおり爺さんの文章は私には難解でして、このようにスッと判る段があると無性に
嬉> しいですね。
みんなに言われる。ボケてると言いたいのは分かってる(とすぐひがむ!)会えば虫も殺さ
ぬいい男(20年前)でエタニに次ぐ美男子なんだがなあ。儂の見解ではなくて、ムハンマド
の言行碌にしといて(といって逃げる)
だがね、信憑性がないのは聖書の方が上だと「学者」が言った。
学者(頭脳明晰な専門家)の言で、私ひとり信じられんと言ったところで、千年余同じ指数
の億万の人々が信じているんだからやっぱ不遜だよ。宗教は「信」で理解ではない。
イスラムかキリストかといった論争は馬鹿げている以上に不逞だ。よくもまあ、ころころ宗
旨を替えられるよなあ、どっかの理知派は!生れた時に決まってるのに。怖いほどだ定見
のない「バンド」は。
ホーケンとかホーケイはこの位で割礼いや割愛としましょう。
最後にひと言、いい?
ぼんやりと観る事。 ボールを凝視してはいけない。ゴルフ・アドレスの極意でR。見詰める
と心で姦淫したと言われる(儂はいつもそーだが)だけじゃなく、リキんでミスショットに繋が
る。人生も同じ。あいまいさ、ファジイさがどっからでもこいの視界になろう。バカにされてる
吾がインドネシアのいい加減さ、実は懐ろ深し!さて、今日はなにしようかなっと。敬して遠
され遊ぶ相手がいない。打ちっぱなしで調整しよっと! いやバイクで遠出もいい。
一臣の妻に「年甲斐もなく」。オンナは微視的だなあ。だが正論。70ずらさげて7半でもな
いだろナ。彼女は正しい。いつも!だから、
[ML:06321] Re:女性の割礼
Fri, 28 Apr 2000 13:41:27 +0900
From: リワキーノ
エミータ様
詳細な情報を寄せて下さり有り難うございます。もう、強力な助っ人出現という感じです。ま
さに、オルレアンのジャンヌ・ダルク登場!(すんまへん、いおり爺さん、奥深志さん。ワシ
ら悪逆非道なイギリス軍かと言いたまうなかれ)
ところが私は奥駈のためにこれから熊野に向けて出発しなければならず、ゆっくり感想を
書く暇がありませんので、帰ってきてからまた書きます。有り難うございました。
リワキーノ
[ML:06322] Re:割礼
Date: Fri, 28 Apr 2000 13:41:54 +0900
From: リワキーノ
いおり爺様
またもやおつきあいいただき感激しております。
今回のはもの凄く解りやすく、うん、ワシだって、いおり爺さんの話は理解できるんだ、と妙
な自信さえつけました。
ところが私はこれから奥駈修行に参加のために熊野に向かわなければならず、感想は帰
ってきてから記させてもらいます。
ただ一言、奥深志さんへのメールの最後、「さらばじゃ。牢名主」は良かった!カッコイイ
爽快な気分で出発できます。
深謝。
リワキーノ