この話を早速、私はウエブ検索で調べたのですが、この実話を元にした映画の話題しか出てきませんでしたので、私が記憶している範囲でこのラジオの伝える刑務所実験の話をここに記したいと思います。
今から30年ほど前に、アメリカのスタッフォード大学のジンバルト教授率いるスタッフが刑務所における囚人と看守の人間関係の変化を調べる実験をやったそうです。
その実験とは、ごく普通の若者たち18人を集め、9人づつ囚人役と看守役に分けるのです。囚人となる役の若者は自宅にいるところを警官がパトカーで乗り付けて実際に逮捕し、収監すると素っ裸にさせてケープのような囚人が着る服を着させ、頭は坊主刈りにする代わりにナイロン生地のキャップで覆わせ、名前も番号でしか呼ばないようにするのです。
一方、看守役の若者には看守用の制服、制帽をつけさせ、サングラスをかけさせます。
看守役は9人を3人づつに分けて交代制で任務に当たらせます。
実験室になる建物も刑務所とそっくりなものを造ったそうです。
実験を主催する側は、囚人役の者には囚人らしく振る舞うように、そして看守役には看守として仕事に熱心になることだけを指示するだけで他のことについては干渉せず、監視カメラで一部始終を観察するのです。
すぐに大きな変化が現れました。原因は一人の囚人役がちょっとした反抗的態度に出たのがきっかけでした。看守役たちは互いに相談してこの囚人に制裁を加えることにしました。
この実験は一週間続ける予定だったのですが、6日目で中止となりました。
看守役たちの制裁の度がエスカレートしていき、これ以上の実験の継続は危険と判断されたからです。
看守役たちの制裁は他の囚人役たちにも及び、トイレに溜めた汚物の中に囚人の顔を浸からせたり、素っ裸にして性的虐待を加えたりするようにまでなったとのこと。
解説者は、普通の若者が条件がそろうとわずかな間にモンスターと化す、恐ろしさを言い、刑務所における看守の教育の大切さ、刑務所の外部からの透明性を確保する必要を言っておりました。

バグダッド近郊の刑務所の虐待事件はアメリカ軍部上層部の指示があった、という情報もありますが、”節度ある厳しい取り調べ”の指示が刑務所の特殊性によって度を超えた非人道的な対応になった可能性もあるのではないでしょうか。
もちろん、そうだったとしてもアメリカの責任は免れませんが。
この実験の話を元に作られたのはドイツ映画「ES(エス)」です。
http://mbs.jp/announcer/eiga/20020819.html