01082 “Come on a my house ” 投稿者:怪盗ルパンX・P  投稿日: 8月 9日(月)12時42分49秒

 岸壁では軍艦マーチの流れる中、艦長が最後に乗艦します。艦の玄関である舷門で“ホヒーホ〜〜”と
当直海士の吹く甲高いサイドパイプに迎えられ艦旗に挙手の敬礼をし悠然とブリッジへ向かいます。艦長
、最高の快感を覚える時なのでございます。
 ブリッジでは出航に備え各部との情報をサウンドパワーなるヘッドセットをかぶった乗員が航海長に報
告し騒然と整然を保っております。ブリッジには司令と艦長用にしかない唯2の椅子に艦長が腰掛けます
。『艦長 ! 出航用意よし マイク入れます。』 “うん”艦長はめいっぱい威厳のある落ち着いた風体で
うなずきます。『マイク・ラッパ出航用意』航海長の指示で当直海曹が「しゅっこーよーーい」と元気よく抑揚
をつけてマイクを入れます。と、同時“パカパパ パカパパ パカパパッパパパッパー”とこれまた威勢の
良いラッパが横須賀港に響き渡ります。最後の舫(もやい)が岸壁を離れると登舷礼でデッキに居並ぶフ
レッシュエンスン始め乗員はマイク「帽振れ」の号令で帽子を高々と掲げ2,3回振り回し、家族や見送り
の人たちに別れを惜しむのです。6月も半ば蒸し暑い中艦が岸壁を離れてもしばらく登舷礼は続くのであ
ります。艦橋(ブリッジ)では、これまた航海長があっち行ったりこっち行ったりちょろちょろ忙しげに動き回
って艦位の確認や機関の状況を艦長に逐次報告しながら『艦長!自衛艦隊司令官に敬礼します。』と、
進言します。艦内マイクの“自衛艦隊司令官に敬礼する右(舷)気をつけ”に登舷礼中のフレッシュエンス
ン始め乗員は誰も見えない司令部の建家に正対し不動の姿勢をとるのであります。艦長は身なり整えブ
リッジの張り出しにでて、“パッパ パッパカパーーー”のラッパとともに自衛艦隊司令部の方を向き挙手
の敬礼をするのであります。ブリッジでは当直海曹が双眼鏡で建家を覗いております。「自衛艦隊司令官
答礼されました。」『直れ、やすめ』すれ違う商船やヨットからの敬礼も受けます。東京湾を出るまで敬礼・
答礼の繰り返しです。

 講釈が長くなりましたが、7日ほどの航海で最初の寄港地ミッドウエーに接岸します。リーフに囲まれた
小島は、アホウドリの繁殖地です。柔らかなうす灰色の羽毛に包まれたでかい図体した幼鳥がくちばしを
カパカパと音をたて親鳥の帰りを待ってます。その数たるやごまんと居るのです。他にもくちばしのとがっ
た小さないろいろな鳥が巣作りをしているのです。
 中学生と小学生らしき女の子が近づいてきたので「沢山鳥が居て天国みたいな島だね」と、流暢な英語
で話しかけると、“最初はね。でも1週間もいると退屈で退屈でイャになっちゃうよ。だから1か月に1回ハ
ワイに行くんだよ”これまた流暢な日本語で年長の女の子が話してくれたのです。小さい子が負けじと、”
ねえねえあたいんち来ない ネエ Come on a my house !巣から落ちた小鳥育ててんだよ”「ママお
家居るの?」“居ないよ”「じゃあ行けないな」“何で、ママも誰も居ないから大丈夫だよ”年長の子が云いま
した。“居ないから行けないのよ”ちっちゃな女の子は、合点が行かない風でした。

 コバルトブルーの海と紺碧の空、白砂の海岸 リーフに囲まれたこの楽園で海戦などとは無縁に 思わ
れる平和がありました。