10月20日の台風23号が近畿に接近する中を西宮市で3件仕事を済ませ、最後の顧客宅
へ向かうため、私が地下鉄谷町線の大日駅に降りたのは午後2時50分でした。
昼食をとる暇が無かったので、どこかで軽く食事はできないものか、と駅から顧客のマンシ
ョンへ通じる通りを雨に濡れながら店を探していたら、瀟洒な喫茶店が見つかりました。
中に入ってみると、とても趣味の良い内装のお店であり、他には誰も客はいません。
「この雨では傘も役に立たなかったことでしょう」と、ズボンから上着の袖まで濡れている私
に、注文を取りに来た感じの良いご婦人が言います。
コーヒーとバタートーストを注文し、注文の品を待っている間に、店内に供えてある本箱にあ
る本らに興味を惹かれ、立ち上がって中身を物色していたら、おーなり由子さんの本が何
冊かあるではありませんか。
おーなり由子さんは今でこそ、随筆作家、絵本作家としての方が有名のようですが、我が娘
が小学生高学年だったころ、クラスメートから借りてきた「グリーン・ブックス」というおーなり
由子さんが初期に書いた漫画を読んでそのメルヘン的で宮澤賢治の世界を彷彿とさせる
作風に魅了され、以来、私は彼女のファンとなったのでした。
コーヒーとバタートーストを持ってきたくだんの女性に「おーなり由子さんのファンなのですか
?」と尋ねると、彼女は厨房に居る若い女性を指して、あの人がファンなのです、と答えます。
その女性は話しを聞きつけたのかすぐさま、厨房から出てこられました。
「おーなり由子さんのファンなのです」
その可愛らしい女性は嬉しそうに言われます。本棚にはブラジル音楽の分厚いディスコグラ
フィーなどもあり、内装の趣味も若い女性の感性を感じさせるものがあり、このお店は彼女が
オーナーなのだろうと推察しました。
偶然の話しから私の娘と同じ年ということが判明。
私もおーなり由子さんのファンなのです、と言い、私の場合、彼女の随筆は読んだことが無く、
十数年前のコミック作品がその対象だと伝えました。
「グリーン・ブックス」を読んだかどうかを尋ねたら、彼女は知らず、私はやっぱり、と思いました。
「グリーン・ブックス」は私が出会った十数年前の時点ですでに絶版となっており、カナダの
撫子・ミホさんも大のおーなり由子さんのファンなのですが、この本は知らなかったのです。
如何に私がこの「グリーン・ブックス」に耽溺したか、そしてカナダに発つ若い女性にプレゼン
トしたことを話すと、その女性は、是非読みたいです、インターネットで探してみます、と答え
ました。
私は、このおーなり由子さんのファンが経営する喫茶店を宣伝したくなり、私のホームページ
で紹介することを伝えたところ、開店時の案内葉書を下さいました。
皆さん、地下鉄大日駅、もしくは大阪モノレール大日駅に来られる機会がありましたら、是非、
この「杢キリン」を訪れてみてください。
私が賞味したコーヒーは美味しく、バターはよくあるようなパックされたバター片ではなく、陶器
の器に入れて添えられており、万事にオーナーのきめの細かい心づくしが感じられるものでした。
私の近所にある店だったらしょっちゅう訪れたくなるような、そんな雰囲気のお店です。
詳細は同店のホームページを参照のこと。