我が家は空中都市!? 21階の部屋で感じたこと by ルーメイ
関西の高層マンションに引っ越して来て4ヶ月が過ぎた。その間、わたしが住む21階に
は新入りさんが2軒。我が家は早くもセンパイだ。管理人さんとも「行ってきます」「お帰り
なさい」とあいさつを交わせるようになり、だいぶ馴染んできた。
それにしても今年は台風が多く、関東と違って、台風さんの通
り道になりやすい。中学生の息子は「こっちに来てから台風で、もう3回も学校が休みに
なったよ!」と、メチャうれしそう。最初は6月、2回目が8月、3回目が9月。台風接近前
、エレベーターホールに「ベランダに置いた物は片付けるように」と張り出され、各戸のポ
ストにも同様のお知らせが配られた。
9月7日夜半、大型の台風18号が上空近くを通過していったとき、突風で部屋が小刻
みに揺れた。突然カーン!と強い音がベランダのほうから聞こえ、何かが飛んできたの
だろうか?と思った。翌朝ベランダに出ると、厚さ8ミリくらいのガラスの破片がころがって
いたので、窓ガラスが割れたのかも…と驚き、窓を調べてみたけれど異常なし。これは
何のガラスだろう?と気になっていた。
後日、一枚のお知らせが配られた。ベランダの柵をとめるネジをいっせい点検するとい
う。台風の強風に煽られて、16階角部屋のベランダの柵(角部屋はガラス板)が割れた
とのこと。ネジがゆるんでいたらしい。16階のガラスが21階に飛んでくるものかどうかわ
からないが、そのお部屋の住人さん、さぞかし怖かったことだろう。
☆☆☆
実はその台風騒ぎの前々日の5日、紀伊半島沖を震源とする地震があった。1回目は
夜7時ごろ。「アッ 地震!」って叫んだわたしはしゃがんで、ダイニングテーブルの下に
頭だけ突っ込むのがせいいっぱい。しけた海で船に乗ってるみたいに、ユラユラ揺れた。
コワイながらも、遊園地のアトラクションみたい!って思った。日曜日で、夫がいてくれた
からまだよかった。
テレビをつけると、兵庫は震度4だった。震度5の奈良の知り合いにメールを送る。すぐ
に「奈良は地震慣れしていないからびっくり。そういえば金曜日から、水槽のタニシがガラ
ス面にびっしりはりついて、もしかしたら地震があるかもしれないと思っていました→タニ
シ警報?」と返事をいただく。やがて「タニシ警報も解除のようです。おやすみなさい」と続
報。ともかく停電したときのことを考えてお風呂に水を溜め、ろうそくと懐中電灯を用意し
た。
ふとんに入って寝ようとした12時近く、2回目の地震。さっきより大きい。揺れ方はガタ
ガタ…でなくユラユラ…。このマンションができたのは2000年だから、阪神大震災から5
年後。耐震構造はしっかりしているはず、と自分に言い聞かせた。1回目も2回目もけっ
こう長く揺れたように感じたが、実際のところはわからない。高層ビルだから、そう感じた
のかも。耐震構造の場合、揺れを逃がすため、余計に揺れを感じたりするものらしい。
幸い、物が落ちたりするところまではいかなかった。今回の地震で感じたこと。地震のと
き、結局人は、何もできないっていうこと。終わるのをひたすら待つことしか!
奈良の知り合いからメール。「タニシの役立たず」という言葉に笑ってしまった。翌日、
大阪の知り合いからのメールには「二度目はパソコンをやっていた最中でして、かなり長
い間揺れたのには少し緊張しました。しかし、阪神大震災のときに比べたら比較にもなら
ないくらいの緩やかな揺れで恐怖心は感じませんでした」とあった。震度4であんなに揺
れたのに、震度7なんて、考えたくない! その大阪の方がおっしゃるには「阪神大震災
が起きたとき、地震と思わず、ロケットか何かが落ちたと思った人が多かった」そう。戦慄
を覚えてしまう。
息子は急に「低いマンションに引っ越そうか」なんて言い出す。さきほどの奈良の知り合
いからは「今年の関西は異常! 悪い年に来ちゃったね」と言われる。阪神大震災があ
ったから、当分、関西で地震はないだろうという考えは甘かったみたい。でも関西に限ら
ず、日本に限らず、近ごろ地球の自然や気候がおかしい。どこにいても絶対安全ってい
うことはないだろう。台風発生が多いのは海水の温度が上昇したからで、あれは人災と
いう話も聞いた。自然が本気出せば、人間なんてかないっこない。地球のバイオリズムを
変えるわけにいかないが、人間が物質的豊かさや便利さばかりを追い求める暮らし方が
、自分で自分の首をしめていると気づくのはいつのことなのだろう。
☆☆☆
今夏、わたしは屋久島へ旅してきた。そこで出会った陶芸家さんの暮らしぶりはすごか
った。道から見えるのは、背の高い草むら。その奥に家があるとは到底思えない。草む
らの奥にたたずむ手作りの家(小屋?)の屋根にはシダなどの雑草が生い茂り、小さな
山と化している。裏口からつながる自然のままの庭や畑は、エデンの園のようだった。と
きおり野生の鹿が訪れるそう。床にころがっていた動物の骨は、そんな鹿の一頭をワナ
でしとめたものとか。焼き物を焼くのは年1回。あとは畑仕事。台所はなく、囲炉裏で起こ
した火でお茶を淹れてくださった。カップラーメンなどの器は、花の苗を植えて人にあげて
しまうし、ゴミは大きな台風が飛ばしてくれるんだそう。台風で屋根が飛ばされたこともあ
る、と笑っていた。失うものが何もない人は、何があっても楽しんでいられるんだなぁ。悟
りに到ったお坊様のような風貌で、淡々と自然と共に暮らす様子を見ていると、エコ生活
なんていう表現が恥ずかしくなってくる。カギが手放せない、コンクリートの建物。大好き
な大地は何メートルも下。そんな自分の暮らしと比べて、タメイキが出た。このお家に泊
めていただいたら、わたし、帰りたくなくなっちゃうだろうな。