優子&楓花朗読ライブ 2005.09.12

私の顧客で友人でもあるピアノ教師の楓花さんがライブをしました。
場所は豊中市のお好み焼きの店「ほわっと」
http://www.nodus.ne.jp/okonomi-what/

お好み焼きの店でライブとは奇妙な取り合わせと思われるかも知れませんが、このお好み
焼きのお店は洒落た内装の店でして音楽のライブが行われても少しも不思議な感じがしな
い雰囲気です。

マスターも相当に音楽に造詣の深い人のようであり、定期的に開かれるライブも型にはまっ
たものばかりではないのです。
下記のサイトは当店における過去のライブの記録ですが、誰もが目を剥いて驚くのがモーツ
アルトの歌劇「フィガロの結婚」の上演ではないでしょうか。
http://www.nodus.ne.jp/okonomi-what/live/history.html

有名なアリアを集めたダイジェスト版が上演されたのだろうと思っていたら、日本語訳ではあ
るけれど全4幕セリフもすべて入った全曲を演奏するのです。
歌手は二期会や関西歌劇のソリストたちですが、オーケストラはピアノ、バイオリン、ビオラ、
クラリネットのわずか4人とか。
テーブルは全部片づけて椅子を部屋の片隅に集め、観客席より舞台の方が広いという状況
での上演だそうですが、4ヶ月の間に3度も上演されていることから察せられるようにたいへ
ん好評だったようでして、日本人による「フィガロの結婚」を何度か観てきている楓花さんに
言わせればナレーションもとてもわかりやすく、一番面白く、楽しめた「フィガロ」だったそうです。

この「フィガロの結婚」で監督をしたバイオリニストで作曲家でもある田淵宏幸氏が正岡子規
の短歌に作曲するコンクールに出場した際、楓花さんと知り合い、それがきっかけでこのファ
ットライブにも誘われ、楓花さんのここでのライブが実現することとなったのでした。
田淵氏と楓花さんはコンクールでは共に銀賞に輝かれました。
そして楓花さんのライブ日の9月12日は昨年亡くなられたお母様の一周忌の日でした。
本当に何事もご縁あってのことだという思いを強くします。

下記のサイトを参照下さい。楓花さんのライブの案内も出ております。
http://www.nodus.ne.jp/okonomi-what/live/index.html

楓花さんは詩の朗読の伴奏を受け持つことの多い朗読家の矢部優子さんにも賛助出演を
お願いしました。
プログラムは下記のようなものです。
「千の風」を除けば曲はすべて楓花さんが作曲したものです。


ライブは午後8時からですが、私たち家族が到着した6時半ころには7割方の客が入っていまし
た。28席すべて一月前から売り切れでした。
近畿修猷会の仲間達がやってきております。楓花さんは修猷館高校の同窓生ではないのです
が、同会の音楽を楽しむ会でしょっちゅう歌の伴奏をしてくださっている関係からこのように仲間
達が駆けつけました。
右端ははなパパ&はなママさん。左端は「音楽を楽しむ会」の世話役の平岡さんです。
真ん中は永野さんご夫妻。ご主人の方は、楓花さんにフルートの伴奏をしてもらったことがあるそ
うで、そのとき大変感激されたとか。
若い女性は楓花さんをたいへん可愛がってくれるピアノ教師のお嬢様で、偶然にも私の娘の知
り合いでした。

娘と私。家内は写真の人相がひどく悪かったのでボツ。(素敵な服を着てきていたのに残念!)

ファットのオーナーさんの挨拶と演奏家の紹介です。
熱烈なオペラファンとか。
ホームページに載っている店長さんはこの方の息子さんです。

楓花さんのピアノ伴奏と矢部さんの朗読で「葉っぱのフレディ」が始まります。
「葉っぱのフレディ」は可愛らしい少年の声が主体となるのですが、矢野さんの「花咲き山」や「平
家物語先帝身投げのこと」の朗読の迫力を知っている者にはいささか物足りなさを感じる朗読で
はありました。

矢野さんによる楓花さんの紹介がすんだあと、楓花さんのエンジェルハープの演奏が始まります。
日本の唱歌だけで組まれた秋のメドレー。
「里の秋」「旅愁」「故郷の空」「赤とんぼ」等々。
年輩の人には懐かしい旋律ばかりです。

そして楓花さんは加古隆さんのピアノ演奏会を聞いたときに受けた深い印象のことを語り始め、その
ときの演奏曲目の変奏曲をなるべく覚えている範囲で再現させてもらいます、と言って弾かれたのが
「グリースリーブス」でした。
それは楓花さんが演奏されるエンジェルハープの曲の中で私がもっとも好きな曲でして、彼女の家で
ピアノの調律を終えたあとに初めて彼女のエンジェルハープの演奏をこの曲で聴いたときは感動のあ
まり、涙がにじみ出てきたものでした。

そして有名な斉藤隆介作「花咲き山」の朗読です。

ここでの矢部さんの発する山姥の声はそれはそれは老獪そのものでいながらもその声の奥底に純真で
心の優しい少女あやに示される慈愛の満ちたものが感じ取られるというたぐいのものなのです。私はCD
でも矢部さんの「花咲き山」に馴染んでいるのですが、何度聴いてもその迫力は褪せることがありません。

プログラムは楓花さんが正岡子規のコンクールで銀賞を得た「藤の花」の演奏となりました。
この曲は楽譜を客にもあらかじめ手渡されており、途中から観客も一緒に歌うのですが、私の家内がか
細い声で一生懸命歌っていたのが印象的でした。
たいへんいい曲だと思います。

最後は「千の風」の朗読。
「私のお墓の前で、涙を流さないでください・・・・」で始まるこの詩は、あのニューヨーク同時多発テロで崩壊
したツインビルのグランドゼロ地点で誰ともなく呟かれて全世界に広まったそうです。
私も初めて聞いたときは深い感銘を受けましたが、息子を亡くしたことのある親しい女性が「息子が死んだば
かりのところにこの詩を聞いたら私は腹を立てたでしょうね」と言うのを聞いてからは私も複雑な思いでこの
詩を聞くようになりました。
言葉による表現の難しさ、詩の表現の難しさを感じます。

すべてのプログラムが終わり、盛大な拍手のもとライブは終わりました。

このライブの行われた9月12日は最初の方でも述べたように楓花さんのお母様の一周忌の日でしたが、その
前日の11日はあのニューヨーク同時多発テロの日であり、そして今日の朗読者である矢部優子さんの誕生日
でもありました。
そして談話室のお仲間、ハミングバードJ.S. さんも9月11日が誕生日とのこと。
何の関連性も無いのでしょうが、私はなぜか不思議な気持ちになります。
いったい、追悼コンサートなのか、バースデーライブなのか・・・

楓花さん、矢部さん、素晴らしいコンサートをありがとうございます。