「伝統芸能見て出合った誇り」 By 萬凛
2003年1月9日(木)朝日新聞「声」の欄

 家から20分ほどの所にある能楽堂で、能・狂言を見てきました。野村萬斎さんのテレビ
番組を見て興味を持ち、本を読んでいるうちに、能楽堂を発見しました。しゃれた建物で、
電車からいつも見えていた建物でした。
 能・狂言を見るのは2度目ですが、能楽堂で見るのは初めてでした。最初は狂言だけを
見るつもりでしたが、能も楽しんで見られました。あまりにも静かな舞では、居眠りをしそう
になりましたが、「項羽」は物語も分かりやすく、霊が薙刀を振り回すところでは、立ち振る
舞いの迫力に驚き、すっかり世界に引き込まれました。
 これまで、オペラなどには関心を持っていましたが、「伝統芸能は難しい」という先入観か
ら、見てこなかったことを後悔しました。それと同時に、日本人としての誇りを感じました。
これからは、出来るだけ機会を作り、伝統芸能に触れたいと思っています。

(萬凛さんオリジナル)
先日、家から20分程のところにある能楽堂で、能・狂言を観て来ました。
 能や狂言に興味を持ち始めたのは、野村萬斎さんの特集番組を見てからです。そして、
萬斎さんの本や、狂言の本を読んでいるうちに、家の近くに、能楽堂があることを発見しま
した。線路沿いに建つ、しゃれたモザイクのある建物です。電車に乗って、外の風景を見て
いるとき、いつも見えていた建物でした。
 能・狂言を観るのは二度目ですが、能楽堂に足を運ぶのは初めてのことです。日本に生
まれ育ってきて、初めてとは我ながら不思議な気がします。この日、能・狂言を観て、伝統
芸能は素晴らしい、と思いました。意外だったのは、狂言だけでなく、能も楽しんで観ること
ができた事です。あまりに静かな舞では、少し居眠りをしてしまったのですが、「項羽」とい
う演目は、ストーリーもわかりやすく、項羽の霊が薙刀を振りまわす部分では、あまりの迫
力に驚き、すっかり世界に引き込まれてしまいました。能舞台は、観客席にせり出した形
になっています。その舞台前方で、演者が舞うことにより客席は見下ろされる形になり、余
計に身のすくむ程の迫力を感じたのだと思います。
 狂言で、特に興味深かったのは、能の演目の中に組み込まれている、あいきょうげん間
狂言です。狂言には、能のストーリーの説明役という“おもしろい”以外の側面があることを
知りました。狂言ブームといわれる中、能と狂言は二つで一つの芸能である事を強く感じま
した。本当に狂言を楽しむのなら、狂言だけの公演もいいけれど、能と共に演じられる狂
言を観るのも楽しいと思いました。
 「伝統芸能は難しい」という先入観から、今まで、これらを観てこなかった事を後悔しまし
た。と同時に、日本人としての誇りを感じました。これからは、できるだけ機会をつくり、伝
統芸能を観に行きたいと思っています。