6月21日に私は初めて関西空港に行ってきました。
関空は、できてからもう10年にもなるのに飛行機嫌いの私にとっては縁の無い場所で
した。
でも、乗るのは嫌いだが飛行機を見るのは大好きな私は鉄道や道路が海を渡って行く
という関空には一度行ってみたいなという思いは関空ができたときからありましたが、用
事も無いのに往復2時間以上もかけて行くのもためらわれ、いつも空想の世界に関空
は存在したのでした。
その憧れの関空行きが今回実現したのです。

アルバトロスクラブメーリングリストで知り合った沖縄の知己が北海道に行く便を待つ時
間が2時間ほどあるので会えないだろうか、と言ってきてくれたからでした。
彼は最初、天王寺まで出向くから10分間だけ一緒にけつねうどんをすすりませんか、と
メールしてきました。
アルバトロスクラブMLからもう3年以上も前に去り、その後、音信が無かった彼の突然
のこのメールに、まだ一度も会ったことのない彼に会えることと、関空行きが正当化され
ることに(何に対して正当化しなければならないのか私も判らないのですが・・・)大喜び
した私はこちらから関空に出向くことにしたのです。

大阪から乗車して1時間ほどして大阪湾の関空に通じる連絡橋を関空快速が渡るとき
は胸が高鳴りましたね。

嗚呼、これは河の上ではないのだ、海の上を列車が走っているのだ
関門海峡も津軽海峡も鉄道はトンネルをくぐり抜けるのにここは鉄橋の上を行くのだ
(もっとも海峡を渡るのではないが・・・)
海の色が美しい!
高度感が素晴らしい!
列車の鉄橋を渡る響きが何と心地よいのだ!
ヴェネチアもこんな感じで鉄路は行くようだがこちらの方が迫力があるのでは
嗚呼、なんて素敵なんだ、
それにくらべて関空連絡橋なんて名前、何と味気ないんだ
紀淡大橋とか関空大鉄橋と命名して欲しかったなぁ

と私は表面は落ち着いた紳士然を装ってましたが、心の中は子供のようにはしゃぎまく
っておりました。

関西空港は予想していたよりもはるかに美しく、鉄道駅からの連絡も近くて判りやすく、
到着ゲートも国内線はどの会社も同じゲートであり、利便性の高い空港なのではと思い
ました。

そして沖縄の友、ロンサム・カヌーボーイこと吉岡彰太さんは定刻きっちりに到着した便
から降りて15分後に到着ゲートに姿を現したのでした。


彼の著作の口絵写真の小さな姿でしか彼の風貌を知りませんでしたが、彼はホームペ
ージで私の風貌を知悉していたので彼の方からさっと寄って来てくれました。
私と同じ干支で丁度12歳年下の45歳。
アルバトロスクラブML時代には歯に衣を着せぬ物言いで他人の反感を買ったこともあ
り、私も何度か厳しい言葉のやりとりをしたことのあるロンカボさん(以後、彼の事務所
名を彼の略称代わりにします)ですが、私が失言めいたことをしたときや、間違った事実
誤認のようなことがらを述べたときは、こっそりとDMで忠告をしてくれた彼に私は根は
誠実で義理人情に厚い人なんだという信頼感をずっと抱いておりました。

「あいつはいい奴だよ」
これは沖縄に出張すると必ず有無を言わさずにロンカボさんを呼び出して酒につき合わ
せる海洋民俗学の第一人者、秋道教授の言。
「誤解されやすい人ですが、僕は大好きですね」
これは私の信頼する神奈川のシバタ君の言。

実際に会って1時間食事を共にしたロンカボさんの印象はまさに私の予測を裏切らない
人柄であり、話しも面白い人でした。

これはロンカボさんが17年前に著した著作です。

沖縄をカヌーで一周したときの紀行文です。
好意を持つ友人のものだから言うのではなく、お世辞抜きに面白く、興味深い内容であ
り、作家の椎名誠氏も絶賛しています。
椎名氏は著作『続・岳物語』で彼のことを吉岡青年と言う呼び方で紹介しているそうです
が、私がその本を読んだ時はロンカボさんとまだ会うずっと前だったので記憶にありま
せん。
口絵写真です。この二人乗りのカヌーにテントやシュラーフを格納して彼は沖縄を一週し
たのです。



川崎のカズオさんが日本列島をカヌーで一周したことを知ったとき、陸に近いところを行
くのだからそんなに困難なことでもあるまい、と思っていた私はロンカボさんのこの本を
読んで、如何に陸近くを漕いで行くのが困難であり、危険であるかを実感しました。
皆さんにお勧めしたい本なのですが、残念なことに品切れとなっておりますので私が入
手したようにAmazon.co.jpで定期的に探せば手に入るかも知れません。

ビールを2杯重ねたらもう飛行機搭乗の時間が迫ってきました。

搭乗ゲートの前で椅子にカメラを置いて自動シャッターで撮った写真です。


厳しい身体検査のチェックを受けて彼がゲートの中に入ってから、私は彼が見えるように
と立っている位置を搭乗客の列の反対の側に移したら荷物を受け取るロンカボさんの
姿が見えたのですが、彼はこちらをもう一度振り向いたとき、元いた場所の方に視線を
向けてたので私の姿が見えなかったのでしょう、そのまま歩み去って行きました。
彼は北海道で室蘭だったと思うのですが(私の思い違いかも知れませんが)、水平線が
湾曲して見える地点があり、それを実際に見るためにわざわざ沖縄から北海道まで行く
のです。
如何にロマンチストであり、好奇心旺盛な万年青年ぶりが推察されるような話しではあり
ませんか。

初めて会ってわずか1時間の出会いでしたが、ロンカボさんは私にとって本当に親愛感を
感じる存在となりました。
彼とはまたどこかできっと会うことができるだろうと思ってます。