5/8 2006掲載

イタリア旅行 フィレンツェ・レポート

v.K.

  
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ミラノからフィレンツェにはトレニタリア(TRENITALIA イタリア国鉄が民営化)が誇る特急列車ユーロスターで2時間40分の旅です。ユーロスターというと英仏海峡トンネルを通る列車が有名ですが、イタリアの特急は大半がユーロスターという愛称です。日本で「のぞみ」ドイツで「インターシティ」というように。これは一等車。最近はコンパートメント式は減って、開放型キャビンが主流になっています。
 

席の前に小さなテーブルをセットすると、パソコンでインターネットも使えます。
ルネサンスって何だったっけと、予習をするセイラさん。
 
ユーロスターの名前で思い出しました。ヨーロッパ諸国には共通するヨーロッパ意識があり、建築物や地名にヨーロッパの名称を与えています。オーストリアのインスブルックから、イタリアへ向かうアウトバーンにかかる大きな橋がヨーロッパ橋。南ドイツ・テュービンゲンという小さな大学町の駅前広場がヨーロッパ広場。ベルリンが東西に別れていた頃、西ベルリンの一大ショッピングセンターがヨーロッパセンター。「ヨーロッパ有数の繁華街」「ヨーロッパ有数の景勝地」といった謳い文句は至る所に見られます。
ヨーロッパ諸国はお互いいがみ合いながらも共に発展してきました。キリスト教の連帯感ももちろんあります。旧ソ連邦から独立した国々は、自分たちもヨーロッパの一員だと主張しています。「モーツァルトが奏でられるところ、全てヨーロッパ」という傲慢不遜な言葉もどこかで聞きました。
アジアには悲しいかな、このような連帯意識はありません。
 
さて列車は窓外に広大なロンバルディア平原を見ながら、南東へ走ります。
 

ボローニャで列車は進路をほぼ90度変え南西に進みます。するとまもなくトスカナ州に入り、車窓には比較的なだらかな山岳地帯が広がります。雪が残っています。アペニン山脈を越えるのです。
 

列車はフィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェラ駅に着きました。ユーロスターの外観です。イタリア国旗の赤・白・緑がセンス良くデザインされています。この列車はローマを経てナポリへ向かいます。
 

フィレンツェ中央駅がサンタ・マリア・ノヴェラと呼ばれるのは、駅を出ると目の前に由緒あるサンタ・マリア・ノヴェラ教会が立っているからです。ホテルの窓から見えているのがそうです。つまりこのホテルには駅から歩いていきました。偶然ですが、25年前泊まったホテルでした。
 
フィレンツェは小さな町です。人口は44万人。だから鉄道の駅を思いっきり旧市街直近まで引くことが出来ました。これはフィレンツェの観光に役立っています。ミラノ中央駅はかなり都心から離れたところにありました。
 

これがサンタ・マリア・ノヴェラ教会。ファサードはイタリア特有、緑と白と赤の大理石で装飾されています。見事なものです。中には有名な画家の宗教画が並んでいます。
 

正面入り口上部のこのフレスコ画もたいそう立派な絵だそうです。
 

駅前からドゥオモへ向かいます。
「ひゃーっ、本当にフィレンツェに来たんだ!」
後方にサンタ・マリア・ノヴェラ教会が見えます。駅前から延びる道はこんな狭い道。フィレンツェには地下鉄はおろか、トラムもありません。バスはマイクロバスのような小さなバスも走っています。なにせ道が狭い。イタリアの町は一方通行が多いので大変です。以前ラヴェンナという小さな観光地で、すぐそこに見えている中央広場にどうしても到達出来なかった思い出があります。
 

前方にドゥオモが見えてきました。ゾクゾクします。
 

またやって来た! ドゥオモ;サンタ・マリア・デル・フィオーレ(花の聖母マリア)
緑・白・赤、イタリア国旗と同じ色の大理石で装飾された見事なファサードです。
 

中央扉上部バラ窓あたりの装飾。
 
観光ガイドブックを見るとドゥオモのことを、フィレンツェ・ゴシック様式なんて、サラリと流していますが、これは主に装飾様式のことを言っているものでありましょう。ゴシックというのは建築に関する用語です。バロックにはバロック建築と共にバロック音楽、バロック絵画というのがありますが、ゴシック音楽、ゴシック絵画というのは聞いたことがありません。(フォントのゴシックはこの際無視します) ゴシックは建築技術としてのゴシック建築と、建物の装飾様式としてのゴシック様式というのがあります。
 
ゴシック建築とは、(1)尖型アーチを採用することによって壁に掛かっていた加重を柱に集中させ、(2)その結果壁に窓を開けて採光を可能にしたことと、(3)やはりその結果柱から上の天井部分を尖った高いものにして、屋内空間を広々としたことなどであると、独断的に細部をばっさり簡略化してわかったつもりでいる v.K.です。
 
これに対しゴシック様式とは天に向かって尖る装飾様式です。ミラノ・レポートで一例示しました、煉瓦壁に設けられた尖型アーチの窓もその一つです。教会の壁にガラス窓を広く取ることが出来るようになり芸術としてのステンドグラスが発達しました。
 

もう一度ミラノのドゥオモを見てみましょう。上に述べた特徴が見られます。
 

フィレンツェのドゥオモ内部、ここは内陣の祭壇です。窓は小さく、暗い。
 

床のモザイク
 

そして巨大な丸天井の内側に描かれた、聖書の物語。この丸天井はどう見てもゴシック的ではありません。ルネサンス的というのかな? この丸天井(大円蓋)が出来たのは15世紀。ゴシックは下火となっていた時期です。
 

下火となっていたゴシックが後世見直されました。実はドゥオモのファサードは19世紀に作られたものでして、何となく先の尖った装飾が多い、これをネオゴシック様式といいます。右隣に立つのはジョットの鐘楼
 

ずっと以前紹介したドイツ・ミュンヘンの市庁舎も、実は20世紀初頭に出来たネオゴシック様式です。このほか、ロンドンの国会議事堂、ブダペストの国会議事堂もネオゴシック様式だそうです。
 

話をフィレンツェに戻して、これはドゥオモに向かい合って立つサン・ジョヴァンニ(聖ヨハネ)洗礼堂。今は少しくすんでいるが、磨き直せば緑、白、赤の美しい大理石が再現することでしょう。12世紀頃の建立で尖型アーチは無く、ローマ人が多大に活用した円形アーチで修飾した、典型的なロマネスク様式です。
 

これはミケランジェロが「天国の門」と絶賛した、黄金レリーフ細工の門。
「ルネサンスって、すごーい!」
 

聖書の逸話が描かれています。
 

洗礼堂内部
 

洗礼堂は正八角形なので、天井も八角蓋。やはりキリストを中心に使徒や天使や聖書の中野逸話がモザイクで描かれています。
 
フィレンツェ 2 に続きます。
 

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