天皇家の執事  by リワキーノ

年のせいか、最近大変涙もろくなった私はこの本を読んでいて、しばしば目頭が熱くなり、時には落
涙しそうになりました。
深い感動ゆえの涙です。
そして私がいかに今上陛下のお人柄を知らなかったかということを本を読んで痛感しました。皇后陛
下についてはよく存じ上げているのに。

大変恐れ多い物言いになりますが、今上陛下が即位されたとき、先帝の昭和天皇が偉大過ぎたので
地味な目立たない天皇、と言う認識でした。
ところが本を一読して、世界中のどこの王家にもそうはいないだろうと思われる君主の器であり、高潔
なお人柄であることを実感し、さすが昭和帝のお子様と思いました。
律儀、生真面目なご性格とはうかがってましたが、天皇というご自分の立場を強烈に自覚された日常
のお振る舞い、生き様においてご自分を律される厳しさは半端なものではなく、はがねのような精神
の強さを感じさせられます。

特に先の大戦で戦没していった人達への陛下の鎮魂の思いの深さには強く胸を打たれました。
唯一日本国内で地上戦が戦われた沖縄に陛下が深い想いを抱かれていることは存じておりましたが、
硫黄島、サイパンにも慰霊に赴かれており、ペリュリュー島へ行くことも望まれたけれども受け入れ体制
が十分でないことから断念されたことを知り、サイパン、硫黄島にくらべ世間から忘れられているペリュ
リュー島のことを陛下は深く心に掛けておられたのか、と私は胸の中が熱くなるような思いになりました。
※ペリュリュー島玉砕のことをご存じない方は私の下記の手記を御参照ください。
http://hmpiano.net/subsab100periryu.html

陛下のお言葉の中の「今日我が国が享受している平和と繁栄が、多くの人々の犠牲の上に築かれて
いることを深く心に刻み」は私が日頃常に意識していることで、深い共感を抱きます。

著者の渡邊允氏は文章からもその人柄が察せられ、信頼できる方という印象ですが、その元侍従長が
「天皇制の女系問題は国論が二分しているので秋篠宮悠仁様が現在おられる今、先の人達の判断に
まかせることにしたらよいが、近い将来確実に皇族は悠仁様お一人になるという現実をみれば女性宮家
の創設だけは急を要する問題である」と述べているのを見ると女系天皇制反対論者である私も将来の
選択肢の一つとして残しておくためにも女性宮家の創設はよいのではないかと思いました。