東宝ミュージカル『モーツアルト』観劇&懇親会
6月24日、ミュージカル『モーツアルト』を観てきました。
2002年の初演をシアター・ドラマシティで観た私は衝撃的な感動を受け、12月の東京
帝劇公演をわざわざ観にいくほど、このミュージカルに魅了されたのでした。
観劇ツアーに集まったのはEguchi君と私以外に女性が13人。
(梅田コマから梅田芸術劇場と名前を変えた劇場玄関前での撮影)
モーツアルト役の井上芳雄さんの根っからのファンであるユリナさんとそのお母さんのM
先生、ミュージカルオタクのU姉妹、そしてミュージカルダンサーを目指すアヤメさんとそ
のお母さん、それにEguchi君の6人で行くつもりだったのが、私の話を聞いた顧客や単
なる飲み会の仲間たちが次々と行きたがり、この人数となりました。
右端の萬凛さん、とっても素敵な装いでして、駄才さんや怪盗ルパンさんだったら花に
喩えた素敵な表現をしたことでしょう。
チケットはEguchi君が手配してくれたのですが、S席でも前から10列、11列の真ん中か
らやや下手よりの席で、出演者の表情が目の動きまではっきりと見えながら、全体をも
しっかりと見渡せるという遠すぎも近すぎもしない最良の席でした。
キャストは3年前の初演のときとほぼ一緒ですが、久世星佳さんが演じたヴァルトシュテ
ッテン男爵夫人役を今回は香寿たつきさんが久世さんとダブルキャストで出演。
今まで男役の香寿さんしか知らなかったので最初、男が女性をやっているような錯覚を
起こすのではないかと思っていたのですが、声も立ち居振る舞いも立派な気品高い女
性のものでした。
元々女性なんだからそんなの当たり前だろう、と思うでしょうが、それは宝塚歌劇を知ら
ない人の考えです。
宝塚歌劇の男役は音楽学校のときから退団するその日まで常に男で有り続けることを
自分に課せていくのです。身のこなし、声のトーンを舞台ではもちろんのこと、日常生活
でも男役タカラジェンヌは女でありながら男を演じ続けるのです。
長い年月、そのようにして生きてきたのですから、そう簡単に声や身のこなしが変えられ
るものではありません。男役たちが退団後女優として生きていく場合、女に戻る、つまり
女を演じるのにかけた努力は大変なものがあったと思います。
香寿さんは退団して3年目ですが、演技、声とも立派な女優そのものでした。
ヅカファン(宝塚歌劇ファンの略称)の間では定評があった、香寿さんの歌唱力は素晴
らしく、人気の高いナンバー「星から降る金」を歌うときの存在感は際だったものがあり、
ヅカファンの一人でもある私は鼻が高かったですね。
ただ、今回私は初めて気付いたのですが、元宝塚男役が女性らしい声質で歌を歌うと
微妙に音程が揺らぐようです。
前回、ヴァルトシュテッテン男爵夫人役は久世星佳さんでしたが、声はとても良いのにそ
の音程の不安定なのに私は辟易して、よい印象を持てなかったのです。
これは久世さんの音感のせいのように思い、香寿さんだったら完璧な音程の正確さを披
露してくれるに違いないと期待していたのですが、香寿さんの男爵夫人役での歌唱を実
際に聴いたとき、宝塚歌劇時代の男役としての声で歌っていたときに比べて微妙に音程
が揺れ動くのを発見したのです。
これは音程がよいと私が記憶していた元宝塚男役トップスターの一路真輝さんも
東宝ミュージカルの「エリザベート」にエリザベート役として出演したときに音程が不安定さ
を(特に少女時代のエリザベートを演じるときに顕著だった)を示したことを思い起こし、男
役が女役の声で歌うときにみんなが示す傾向なのかな、と感じたのでした。
前回に比べて振付も出演者の技量も素晴らしく良くなってましたが、その中でも井上君
と、モーツアルトの妻、コンスタンツェ役の西田光さんの演技と歌が格段に上手くなって
いました。
特に前回、ダブルキャストだった松たか子さんに比べて見劣りすると感じた西田光さん
の成長ぶりは目を見張るものがあり、絶唱調のナンバー「ダンスをやめられない」を歌う
ときのコンスタンツェの哀しみを表す演技と歌は鳥肌が立つようなインパクトがありまし
た。
午後1時に始まった公演は4時半に修了しました。
4回続いたカーテンコールは3回目からスタンディングオベーションとなりましたが、これ
は前回のドラマシティの時と同じでした。
(東京の帝劇公演のときは無かった)
終演後、Eguchi君に先導されて楽屋に香寿たつきさんを訪ねて行きましたが、香寿たつ
きさんと言えばヅカファンの中でも大変人気のあるスターなのに、素顔の香寿さんはび
っくりするほど普通の女性という感じでした。
それはアヤメさんのお母さんが
「香寿たつきさんも・・・やはりとっても素敵な方ですね。Eguchiさまがいっしょだと、とても
リラックスしたお顔で出てきてくださって、声までかけていただいて」
とメールに記されていたような状況だったから特にそう感じられたのかも知れません。
舞台では凄く背が高く見えるのに、ごく普通の日本人女性の平均的身長の高さであり、
声も予想していたよりもか細く、え?これがあの「プラハの春」で無茶苦茶カッコよかった
男役トップ?あの朗々と響き渡った「星から降る金」を歌った男爵夫人?と私はたいへ
ん意外な思いに打たれました。
そう言えば、Eguchi君が妹のように可愛がっている吉岡小鼓音さんも舞台を観たあとに
楽屋で会ったとき、予想していたよりも小柄だったことを思い出しました。
優れた役者というのは舞台の演技でこういった錯覚を多く起こさせる人たちなのでしょう
ね。
「お待たせしてすみませんでした」
「きれいなお花を有り難うございます」
と丁重にお礼を言われ、Eguchi君が「もういいからどうぞ奥へ」と言うまで、私たちがエレ
ベーターに乗るまでじっと見送ろうとされた律儀そうな姿に感銘を受けました。
俳優としてだけでなく、社会人としてもどこに出しても恥ずかしくない礼儀作法を身につ
けさせられているというタカラジェンヌに対する定評を証明するような香寿たつきさんの
お姿でした。
初舞台のときからずっとファンであったというU姉妹は、香寿さんのそばに行くなんて恐
れ多くてとてもできない、と最初楽屋に行くのを拒否していたのですが、Eguchi君と私
の説得にやっと応じてくれて、いざ、会ってみると「お会いして本当に良かった!」と喜ん
でました。
一般の人たちにはこのヅカファンの微妙な心理は解りにくいところでしょうね。
ただ、ひどく残念だったのが、梅田コマが梅田芸術劇場と名称が変わってから規制が厳
しくなり、楽屋裏での写真撮影は一切禁止となったために香寿さんとの記念写真が撮れ
なかったことでした。
画像は宝塚歌劇「プラハの春」のときのものです。
左は当時星組女役トップの渚あきさん。
この二人が共演した宝塚歌劇「プラハの春」については下記の私のレポートを参照して
下さい。
koharu/shuyu/moriwaki/myself/image/year2002/may2002/newpage3.htm
帰路のエレベーターの中でまだ若手のタカラジェンヌ3人と一緒になりました。
薄めの茶髪に独特の雰囲気はすぐにそれと判ります。香寿さんに会いにきたのでしょう。
「タカラジェンヌと一緒のエレベータに乗れて光栄です。月組ですか?」と尋ねると
「宙(そら)組です」と彼女らは答えてくれました。
楽屋を出た私たちは梅田芸術劇場すぐ近くの懇親会場に行きました。
顧客女性二人と萬凛さんは参加せずに帰りましたので、総勢12名。
萬凛さんは図書館の本の整理があってこのところ疲れ気味なので用心するそうです。
左側は佳墨さん、ユリナさんと母親のM先生。右端はU姉妹の大学時代の後輩のM.Mさん
手前からルーメイさん、アヤメさん母、アヤメさん、U姉妹
囲む女性はいずれもミュージカルファンばかり。Eguchi君の話にみんな熱心に聴き入り
ます。
右側後ろ姿のU姉妹の妹さんは筋金入りの宝塚歌劇ファンです。
お姉さんが帰宅して妹の姿が見えないときに「イーちゃんは?」と尋ねると母親は「さあ、
宝塚じゃない?」と答えるとか。
姉妹は翌日もこのモーツアルトを観に行くのです。
来春、芸大のミュージカル科を受験する高校生のアヤメさん。
楽しい懇親会は午後8時にお開きになりました。
Eguchi君はこの後、8時23分の新幹線で東京へ帰って行きました。
その後、”単なる飲み会”の常連は二次会をやりました。
マリさんには、宴会後半になるとほとんど覚えていない世話役の私に代わっていつも
会計係をやってもらっているのですが、今日の大切な懇親会も彼女のおかげで予算内
で終えることができました。感謝。